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「電話だと着信履歴が残ってお客様に気を使わせてしまうと心配する営業マンもいます」と語る営業担当者(撮影/工藤隆太郎
要注意! 顧客への「チャット」対応 便利の裏の落とし穴〈AERA〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171027-00000014-sasahi-sci
AERA 2017年10月30日号より抜粋
最近はビジネスの現場でも直接対話の機会は減り、LINEやチャットサービスなどのSNSを利用したサービスが主流になってきている。営業に代表される攻めの部署だけでなく、カスタマーサポートなど受けの面でも企業と顧客のコミュニケーションスタイルは変わりつつある。
いまや問い合わせのチャネルは電話だけでなく、メール、チャット、LINE、ツイッターなど複数設けるのが主流だ。多チャネルを横断的に管理できるカスタマーサポートツールZendeskは、問い合わせがきた場合、顧客の以前の問い合わせ内容などを関係部署内の誰もが一覧できるツールで、世界で10万7千社が導入する。
多くの導入企業事例を見てきたZendesk日本法人社長の藤本寛さんによれば、昨今急速に広まっているのがチャットを使ったカスタマーサポートだ。
「チャットの場合、待っている間に他のことができるので、電話ほど束縛されず、メールよりもリアルタイム性があります」
メリットの一方、チャット導入にはまだ課題が多いと見る企業もある。
ECサイトのルクサは15人体制のサポートセンターを外部に抱え、月に1万件近い問い合わせに対応する。家電からレストランチケットまで多様な商品を期間限定の特別価格で販売。毎日新たに100アイテムが追加され、常時1千アイテムほどを扱うため、問い合わせ内容は商品の交換、配送関連、店舗の予約からトラブルまで多岐にわたる。
現状では会社の電話番号は納品書のみに記載し、問い合わせの8〜9割をメールサポートでカバーしているという。
カスタマーサポート部長の芹澤有幸さんが入社したのは4年前。当時はまだ会社の規模も小さく、自ら電話応対をしていたが、会社の急成長とともに、問い合わせの数は爆発的に増えた。いかにしてその数を減らすかは同社にとっての課題だった。
顧客サポートでは速さと正確さが重要だ。素早い反応と迅速な問題解決は、タイムセールという業種の特性上、顧客からも強く求められる。結局検討の結果、チャットでのカスタマーサポートは見送られた。
「海外では成功事例も多いようですが、日本の場合、敬語や礼儀といった問題が、本質的な問題解決よりも前に立ちはだかるように感じました」(芹澤さん)
特にルクサは高級志向を売りにしているため、顧客は高所得者層で、40、50
代も多い。
「そうしたお客様に、『ありがとうございます、ぺこり』みたいなスタンプを使っていいものかどうか。礼儀を欠いてがっかりされてしまっては、ブランド価値を下げることになります」
さらにコスト面での懸念もある。芹澤さんによれば、サポートセンターでの研修期間は、電話よりもメールのほうが長くかかる。メール対応者は、より正しい敬語、正確な表現力や文章構成力が必要となるため、電話の対応者よりも一人前になるまでに2倍かかることもあるという。加えてチャットでは臨機応変な対応も要求される。コールセンターのスタッフは勤続年数が短い傾向があるため、戦力になったころには退職、ということになりかねない。
「電話は、つたなくても声で一生懸命さが伝わります。メールは管理者がいったんチェックすることもできる。チャットは瞬時にテキストを送るので、これまでと違う難しさがあります」
マルチチャネル化に追われながら、企業側は試行錯誤を繰り返しているが、Zendeskの藤本さんはこう前向きに見る。
「企業は問い合わせ対応から逃げたいと思っているわけではありません。お客様の声は会社にとって財産。開発やマーケティングにうまくつなげようとする流れも生まれています」
(編集部・高橋有紀)
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