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自民党の安倍晋三首相は、消費増税分を一部歳出に回すことを掲げて大勝した。 Photo:つのだよしお/アフロ
消費増税分を歳出に回しても日本の財政が破綻しない理由
http://diamond.jp/articles/-/147206
2017.10.27 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
消費増税分の一部を歳出に回すとした、安倍晋三首相率いる自民党が選挙で大勝した。また、それに先立つG20財務相・中央銀行総裁会議で、日本は財政健全化目標を達成できないと表明した。それでも財政は破綻しないのか。久留米大学の塚崎公義教授が破綻しないと“楽観論”を展開する。
10月22日に投開票が行われた衆議院選挙では、与党が圧勝した。これにより、争点の一つだった「消費税増税の可否」については、増税派が勝利したことになる。ただ、安倍晋三首相は、「増税分を借金返済ばかりではなく、少子化対策などの歳出により多く回す」としており、決して緊縮財政というわけではない。
しかも、安倍首相は消費増税を延期した「前科」があり、増税の再延期の可能性も皆無とは言えないだろう。
「政府の財政赤字も借金も巨額なのだから、一刻も早く財政を再建しないと財政が破綻してしまう」と心配している読者も多いに違いない。しかし、筆者は心配無用だと考えている。
以前、「総選挙の争点『消費増税』を焦ってやるべきではない理由」の中で、「財政再建は、長期的には望ましいが、急ぐ話ではない。別の機会に詳述するが、国内投資家は日本国債を購入するインセンティブを持っており、彼らが日本国債を買っている限り財政は破綻しないからである。したがって、予見可能な期間内に財政破綻が現実味を帯びたり日本国債が暴落したりするとは考えにくい」と記したが、その理由を説明しよう。
皆が貸してくれるなら
財政は破綻しない
財政でも、企業でも、家計でも、破綻するか否かは資金繰りの問題に尽きる。いかに借金が多くても、債務超過でも、皆が喜んで融資してくれるなら、既存の借金の返済に困ることはなく破綻することはない。問題は、赤字や債務超過になると、銀行などが融資を渋るため、破綻する確率が高まることだ。しかし、日本政府の場合には、「債務超過状態」であっても投資家が喜んで日本国債を買ってくれるので、財政は破綻しないのである。
では、投資家たちは、なぜ喜んで日本国債を買うのであろうか。それは、財政が破綻しないと思っているからであり、その理由は、(1)最後は日銀が紙幣を印刷して国債を償還するから、そして(2)実際にはその前に他の投資家が喜んで国債を買うから、である。
そもそも、財政が破綻することはあり得ない。最後の手段として、日銀が紙幣を印刷して国債を償還するからである。そんなことをすれば超インフレになってしまうので、禁じ手ではあるが、最後の手段としては確かに存在している。
投資家は、国債の満期時に「超インフレで紙くず同然になった日銀券」を受け取ってうれしいだろうか。個人投資家はともかくとして、機関投資家はうれしくはないが、悲しくもない。
例えば銀行は、預金を預かって国債を購入している。国債が償還されたら受け取った日銀券を預金者に渡せばいいのだから、日銀券が紙くずになっても銀行は損しないのである。したがって、銀行は日銀券が紙くず同然になるリスクを恐れず、国債を購入することができるわけだ。
しかし、実際には他の投資家が買うので、日銀券の増発は不要だ。投資家Aは考える。「投資家Bは国債を買うだろう。なぜなら、最後は日銀が紙幣を印刷して償還することを知っているから。それならば、国債は順調に消化されるだろう。だったら自分も買おう」と。投資家Bも同じように考えるので、国債は実際には順調に消化される。そうなれば、日銀が紙幣を増発する必要はなく、平和な日々が続くことになるのである。
外貨を持つリスクより
国債を買っている方が安心
投資家たちが合理的に考えれば、これで話は終わるのだが、実際には「遠い将来には日本の財政は破綻するだろう」と考えている投資家も多いようだ。だが、多くは「破綻するだろうが、当分は大丈夫だろう」と考えており、「とりあえず資金を当分の間だけ政府に貸して、その後のことは後日考えればいい」となる。
財政が近々破綻する確率はゼロではないだろうが、極めて低い。その一方で、破綻に備えるためには外貨を持たなければならないとなると、外貨の値下がりリスクを抱えることになる。ならば、日本政府に貸しておく方が安心だ。
ここで重要なことは、企業や個人と、政府の違いである。例えば銀行は、企業や個人が赤字や債務超過で貸したくないと思えば、別の企業や個人、もしくは政府に貸せばよい。しかし、政府が破産する可能性を考えた場合には、為替リスクを覚悟して外貨を持つしかない。政府が破産する時は、銀行預金も日銀券も紙くずになってしまうからである。
「日本の財政は、いつかは破綻するから、長期国債が満期に償還されることはないだろう。しかし、満期前に誰かに売り抜ければ大丈夫だ」といった考え方もあるだろう。多くの投資家がそう考えているとすれば、それは不健全で危険な状態であると言えるかもしれないが、筆者は楽観的に考えている。
投資家たちは、「当分の間保有していたが、状況に変化がないので、さらに当分の間国債を保有し続ける」という行為を、永遠に繰り返すことになるからだ。そうなれば、結局は投資家たちの予想は良い方に外れて、長期国債は無事に償還されるのである。
「財政赤字が巨額で財政が破綻しかねない時に、皆が国債を買っているのは不健全で危険」と思われるかもしれないが、投資家たちが「当分の間」を繰り返している間に事態が好転していくかもしれない。
例えば、いつの日か大増税が行われて事態が改善する可能性も決して小さくない。租税負担と社会保障負担の合計額が国民所得に占める比率を示す「国民負担率」は、欧州諸国を大幅に下回っており、いつか欧州諸国並みになる可能性は決して小さくない。今後、少子高齢化による労働力不足が深刻化して行けば、「増税をして景気が悪化しても失業が増えない」経済となり、「労働力不足を緩和するため、増税により少し景気を悪化させる必要がある」といった状況が出現することも十分想定されるからだ。
投資家が買わなくなっても
実は大丈夫な理由
数年以内に国内投資家が日本国債を買わなくなることは考えにくいが、例えば30年後といった遠い将来であれば、可能性は皆無ではない。「ドルを買ってドルが値下がりするリスクよりも、日本国債が暴落するリスクの方が大きい」と国内投資家が考え始めれば、そうなる可能性がある。そうなっても財政は破綻しないのだろうか。実は、大丈夫なのである。紙幅の関係で詳述は避けるが、そうなった時には、ドルが高騰して国債が暴落しているので、政府が外貨準備を売って国債を買い戻せばよいのである。
本題とはそれるが、国債市場が不健全で危険だとすれば、それはインフレになって金利が上がる可能性を織り込んでいないことだろう。40年国債の利回りが1%前後であるのは、どう考えても危険ではなかろうか。さすがに40年以内には、必ずインフレがきて金利が上昇し、国債価格が下落するであろう。それなのに、長期国債を現在のような高値で買っている(=現在のような低利回りの長期国債を買っている)のは、いかにも不健全だ。
とはいえ、20年前に20年国債の金利を見て、「どう考えても不健全だ」と思ってしまった(結果としては、インフレにはならず、長期金利はさらに低下した)筆者としては、今後40年間インフレがこないという可能性も完全には否定できないが…。
(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
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