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日産自動車の西川廣人CEO
不正の日産、破綻したゴーン流収益至上主義の内実…疲弊する現場、超高額報酬幹部へ不満爆発
http://biz-journal.jp/2017/10/post_21080.html
2017.10.25 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
品質確認の最後の砦である「完成検査」を無資格の作業員が行っていた問題が発覚した日産自動車で、発覚後も国内4工場で違法行為を続けていたことが明らかになった。日産は事態を重視し、再発防止を徹底するまで国内市場向けモデルの生産と出荷を停止するという異例の措置に踏み切った。大きな問題となりながらも、違法行為を続けていた背景には、現場の苦労には見向きもせず、億単位の高額報酬を手に世界トップの自動車メーカーとなるためひた走る、カルロス・ゴーン会長をはじめとする日産上層部の驕りがあるとの見方が広がっている。
「日産の再発防止策を信頼して頂いた方に大変申し訳ないことをした。深くお詫びしたい」
日産の西川廣人社長兼最高経営責任者(CEO)は10月19日、横浜市にある本社での緊急記者会見で陳謝した。
国土交通省の担当者が9月18日、日産子会社で完成車を生産している日産車体の湘南工場に立ち入り検査に入り、日産は資格を持たない作業員が完成検査を行っていると指摘を受けた。その後の調査で、国内で完成車を生産している6工場すべてで、組織的に無資格者が完成検査を行っている事実が発覚した。10月2日の記者会見で西川社長は「(再発防止策を実施した)9月20日以降、資格を持った検査員が100%(完成検査を)行っている」とはっきりと述べていた。
ところがその後の一部報道で、日産車体の湘南工場で無資格者による完成検査を継続していると報じられた。これについて日産は当初、正式な公表を行わず、第三者を中心とするチームの調査結果を報告するとしていた。しかし、その後の調査で日産車体の湘南工場以外にも、日産の追浜工場、栃木工場、日産自動車九州でも同様に、無資格者による完成検査を継続していたことが判明、度重なる不祥事に追い詰められた日産は10月19日に、この事実を記者発表した。
また、日産では無資格者による完成検査だけでなく、本来とは違う場所で完成検査を行っていたことも明らかになった。完成検査を行う場所は国土交通省に届け出が義務付けられており、変更する場合は30日以内に届け出る必要がある。日産は完成検査が繁忙な場合など、商品性検査やオフライン検査などの工程、国土交通省に届けている以外の場所で完成検査の一部を行っていた。もともと商品性検査工程においては、配置された担当者が完成検査を行う資格を持っていることを前提としていない。追浜工場の商品性検査工程には配置されている16人のうち、完成検査の資格を持つ作業員は3人で、こうした場所で完成検査を行うこと自体、不正は「確信犯」といっても過言ではない。
■しわ寄せは生産の現場に集中
無資格者による完成検査が大々的に報じられながら不正を続けていたことについて西川社長は、「過去からずっとやってきたことを今日から駄目と言われても(理解)できなかった」と、20年以上にわたって続けてきた行為が半ば慣習化していたと見る。さらに西川社長は「(原因について)明らかなのは組織運営の要が、現場のトップである工場長、部課長、係長へと続く指揮命令系統の過程で、課長と係長とのコミュニケーションのギャップに落とし穴があった」と、係長の責任と言わんばかりだった。
日産に部品を納入しているサプライヤーは「(日産の工場は)生産を増やしている一方で、現場の人数をなるべく抑えようとするので過度の負担がかかっているのでは」と見る。日産、ルノー、三菱自動車の会長を務めるゴーン氏は、3社のアライアンスが自動車メーカー世界トップになることを目指している。しかも、ゴーン氏は徹底した収益至上主義を掲げる。それだけに生産・販売をどんどん増やす一方で、人員増は必要最低限に抑える政策がとられ、これによるしわ寄せは生産の現場に集中するという構図だ。
■超高額な役員報酬に対する不満
さらに現場には、超高額な日産の役員報酬に対する不満もあるという。ルノーや三菱自動車分を除く、日産だけで報酬が年間10億円を超えるゴーン氏を筆頭に、日産の役員報酬は総じて他の国内自動車メーカーと比べても高額だ。株主総会の時期に役員の高額報酬のニュースを聞くたびに「いやになる」と愚痴をこぼす日産の社員は少なくない。ゴーン氏は「優秀な人材を引き止めるためには必要」と言い切るが、日々作業に追われる現場の作業員としては到底、納得できるものではない。
あるジャーナリストはこう指摘する。
「管理職が資格を持つ作業員だけが完成検査しろと言いながらも、生産ペースが遅れると怒る。現場が『うまくバレないように(不正行為を)やれ』ということだと理解しても仕方がないのではないか」
実際、西川社長も「下(係長や作業員)から上(管理職)に意見をフィードバックしにくいことは、あるのであろうと認識している」と話す。
日産は相次ぐ不祥事の発覚に危機感を強めており、工場ごとに完成検査を集約するための設備を整備するとともに、完成検査の場所に有資格者しか入れない仕組みにするなど、再発防止策を徹底する方針。それまでの期間、最低でも2週間、国内向けモデルの生産と出荷を停止する。
ただ、いくら不正防止の制度をつくろうと、超高額な報酬を手に世界トップの自動車メーカーになることだけに向けてひた走る日産の上層部が、負担を強いられる生産現場のことを理解しなければ、不正の芽を完全に摘むことはできない。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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