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2017年衆議院選挙 安倍首相、結果を受け会見(AP/アフロ)
日本国民、アベノミクスを支持…その裏で考えられない「深刻な事態」が進行
http://biz-journal.jp/2017/10/post_21078.html
2017.10.25 文=石室喬 Business Journal
10月22日に行われた衆議院総選挙にて、自民党は単独で過半数(233議席)を上回る議席を確保した。経済の側面から選挙の結果を考えると、アベノミクスが国民から支持されたといえる。選挙後、経済界からも個人消費の喚起や生産性向上に向けた取り組みを期待する声が上がっている。選挙翌日の23日、日経平均株価は前週の終値から239円程度上昇し、2万1,696円65銭で終了した。総じて、自民党政権による政治・経済運営が続くことを多くの市場参加者は好感している。
しかし、この状況に楽観すべきではない。国内企業が直面する状況はかなり厳しいからだ。最大の問題は人手不足だ。日産自動車での完成車の無資格検査問題などは、人手不足と無関係ではないだろう。
なぜ、常識では考えられないような不正が続いてきたか、さまざまな意見が出ている。そのなかでひとつの見方を示すとすれば、わが国の多くの企業が現状維持の経営を優先してきたことがあるように思える。
人手不足が深刻化するなかで、多くの企業は限られた人員のなかで操業度を維持し、一定の品質を維持しようとしてきた。その取り組みでは需要に対応しきれなくなったとき、新しい生産方法を実現するのではなく、“その場しのぎ”の行動が現場の判断でとられはじめたのではないか。それが、本来の基準やルール、法令を無視した行動の常態化につながった一因かもしれない。
■経営責任を無視したままで進む、不正撲滅論
日産自動車と神戸製鋼所の不祥事、商工組合中央金庫(商工中金)の不正融資問題に関する報道を見ていると、常識では考えられないことが組織内部では“当たり前”になっていたことがよくわかる。国交省から指摘された後も、日産自動車は無資格での検査を続けていた。問題の根はかなり深そうだ。
こうした“ありえない”事態の発覚を受けて、多くの識者などが「企業内部で自己浄化作用が機能することを期待する」といった指摘を行っている。ここでいう自己浄化とは、不正を真摯に反省し、業務の改善を進めるということだろう。また、内部通報制度などを意識した指摘もあるようだ。わが国のモノづくりでは、現場の権限が強かったあまりに十分な経営管理が行き届かなかったといった見方もある。
しかし、自己浄化作用が機能するのであれば、より早い段階で無資格検査やデータ改ざんなどの不正が発覚してもよかったのではないか。数十年前から神戸製鋼所で改ざんが行われていた可能性があることを考えると、企業内部の自己浄化を期待するのは現実的ではない。また、内部通報制度を強化して不正をなくそうとするなら、不正を通報した従業員に対して報奨金を支払うなど、不正の発見につながるような制度の策定も求められる。そうした議論なくして、自己浄化は無理だろう。終身雇用などの雇用慣行が残るなかで、内部通報の奨励がうまくワークするとも思いづらい。
見方を変えれば、現在の企業不祥事に関する議論は、「経営の全責任は経営者にある」という基本的な考え方を軽視しているようにも映る。経営者は企業の最高意思決定者だ。経営者が、品質の管理を現場任せにしてきたのである。この基本的な認識に基づいて議論を進めない限り、不正の撲滅は進まないといっても過言ではないだろう。
■重要性高まる機関投資家の役割
このように考えると、経営者が何をしなければならないかを具体的に議論していくことは、個別企業だけでなく経済全体で取り組まなければならない課題といえる。それに向けたひとつの取り組みに、ガバナンス=企業統治の強化がある。理論上、社外取締役の導入を進めることや指名委員会等設置会社に移行することは、第3者の視点を通して企業の経営を議論し、評価することにつながるだろう。
こうした取り組みが必要と考えられる背景には、経営の“見える化”を図ることで、企業経営者が従来以上に経営のリスクに対して敏感になる(イコール、経営責任を意識づけられる)との考えがある。それによって、特定分野への過度な経営資源の配分や、不適切な経営管理が改善されるといった効果が期待される。
経営を改善するためには、経営者の取り組みに加えて機関投資家の役割も重要だ。アベノミクスが企業統治の強化を重視してきたこともあり、近年の国内株式市場では機関投資家が積極的に企業の経営に対して“物申す”ことが増えてきた。一部では、親会社である大手金融機関の意向とは異なる議決権の行使に踏み切る運用会社も出てきた。こうした取り組みを増やし、経営者は株主から企業価値の増大を負託された存在(受託者)であるとの社会的な認識を形成していくべきだ。
そのためには、中長期の目線で、さまざまな観点から経営戦略などを議論し、企業に改革を求める環境が欠かせない。状況に応じて、企業に一部事業の分離や売却を提案するなど、より能動的な経営への関与が求められる。経営の深い部分にまで踏み込み、長期の視点で資金を投じることができるか、それによって利得を獲得できるかが、機関投資家の腕の見せ所であり、ガバナンスの強化のためにも欠かせない発想だろう。
■重要なことは成長を目指すこと
ガバナンスを強化しても、不祥事は続くかもしれない。これをやれば不祥事が減少するという、特効薬のような対応策を見いだすことは困難だ。現実的な発想としては、ガバナンスの強化などを通して経営者と株主などのステークホルダーとのインタラクティブな議論を進め、成長を目指すことだろう。突き詰めていえば、国全体で企業の成長力を引き上げることが必要だ。
この問題は、バブル崩壊後のわが国の経済環境とともに考えるべきである。1990年代初頭のバブル崩壊後、わが国の企業の多くは、成長を重視することよりも守りを重視した。わかりやすく言えば、従来のビジネスを続けて現状を維持することで目先の収益を確保し、雇用を維持しようとした。それはバブルの崩壊を受けた、「羹に懲りてなますを吹く」というべきリスク回避的な心理の表れといえるだろう。
この結果、わが国の企業は環境の変化に適応する力を低下させたと考えられる。シャープなどをはじめとする電機メーカーの凋落はその一例だ。そのなかで、ときどきの生産計画などを維持するために、やむなくデータなどを改ざんし、その場をしのごうとする考えが常態化したのではないか。
今後、現状維持を重視する発想で競争に勝ち残ることは難しくなるだろう。中国を中心に自動車業界では内燃機関を搭載した車種ではなく、電気自動車の開発が重視され始めた。ネットワーク科学の進歩によって、小売店の淘汰も進んでいる。加えて、わが国では人口減少が進み、人手不足がさらに深刻化する恐れもある。
こうした環境の変化が進むなか、わが国は人工知能を用いて生産管理を行うなど、省人化を進めて生産性を高めなければならない。政府はイノベーション(創造的破壊)を生み出すと期待される理論の実用化、技術の応用を支援していかなければならないだろう。それが、今後の成長戦略の核を成すべきと考える。
(文=石室喬)
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