★阿修羅♪ > 経世済民124 > 239.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
日産「無資格検査」を誘発した、時代遅れの国交省の認証制度 問題の本質は、実はここにあるのでは(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/17/hasan124/msg/239.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 10 月 23 日 17:05:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


日産「無資格検査」を誘発した、時代遅れの国交省の認証制度 問題の本質は、実はここにあるのでは
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53265
2017.10.23 井上 久男 ジャーナリスト 現代ビジネス


■「国内向け」だけが出荷停止の理由

日産自動車の西川廣人社長が10月19日に記者会見し、9月に無資格者が車両の最終検査をしていたことが発覚した後も無資格検査が継続して行われていたとして、お詫びした。日産は2週間近く「国内出荷」を停止する。

19日の記者会見などによると、子会社の日産車体湘南工場では発覚後も無資格者の検査が続き、国内最大の日産九州工場、栃木工場、追浜工場では、国交省に届けていた場所とは違う場所に検査行程を移して最終検査をしていたという。九州、栃木、追浜の3工場については、不祥事発覚後の初期の調査では、違う場所に移していたことに気付かず、後の社内調査で判明したため、19日に公表した。

道路車両運送法に基づいて国道交通省が定めた「通達」を日産は無視し、それが発覚した後もその通達を破っていたことになる。現行のルールでは日産の行為は到底許されるものではない。

ただ、日産の肩を持つわけではないが、こうした不祥事がなぜ起こるのか、という本質的な問題を筆者は考えたいと思う。

日産の出荷停止が「国内向け」であることに気付いている方はいるだろうか。不祥事が発覚した工場では輸出用の自動車も一緒に生産して、一緒に検査しているのに、無資格者が検査していても、輸出はOKなのである。その理由は単純。海外では有資格者による最終検査を求めていないからである。

そして、「通達」で定められた有資格者による検査については、有資格者に、どのような技能が求められるかは明確に定義されていない。資格は国などの公的機関が認めたものでもないし、高度なテクニックを有しているわけでもない。「能力をもった人を会社が指名する」といった程度である。

だから極論すれば、自動車の運転免許の切り替えの際に、無事故無違反の「ゴールド免許」の人が短時間の安全啓蒙映画を見て更新が済むイメージで、「資格」を与えようと思えば、短時間適当にビデオでも見せて勉強させ、「講習済」のお墨付きを企業が与えれば、それで「有資格者」になってしまうのである。

そんなにお金がかかるわけでもないのに、日産はなぜ、こんな簡単なことをやっていなかったのか不思議でならない。

日産にはコストカットのイメージが強烈に付いているので、経費削減で手抜きしたのではないかと見る読者もいるだろうが、世界の消費者に最終製品として送り出すクルマで、品質管理で手を抜いて不具合を起こせば、訴訟ラッシュでどんなしっぺ返しが来るかくらいは、グローバルで商売している日産ならよく分かっているはずだ。

それなのに、日産では無資格者が検査を続けたのはなぜか。答えは単純である。無資格者が検査しても、有資格者が検査しても、実態的には何も変わらないからである。

筆者は20年以上、自動車産業を取材、観察してきて、多くの自動車工場に訪れている。自動車工場の写真撮影はアングルなど制限があるが、この最終検査工程だけは、何の制約もなく写真OKのことが多い。「儀式」の工程であり、何のノウハウもないといっても過言ではない場所だからだ。

■「品質」とは何か?という問い

そもそも日本の自動車メーカーは「自工程完結」などと言って、品質は一つの工程内で完結させ、下流工程に不良品を流して迷惑をかけないとの発想があり、それを徹底している。この最終検査の段階で、もし不具合が発生したら、工場全体の品質管理が問われるほどの深刻な大問題になる。だから、最終検査で不具合が見つかることは、ほぼゼロに近い。

企業で不祥事が起こる要因の一つに、法規やルールが実態に即していないため、ついついそれを破ってしまうケースがある。日産の今回の不祥事は、これに該当する。ただし、これは「ルール違反」なので、絶対に許されることではない。無免許でも運転がうまくて事故を起こさないから、運転してもいいでしょ、といった屁理屈と同じ類になってしまうからだ。

今回のような日産の不祥事を起こさないようにするためには、「ルール」を変える必要があるのではないかと筆者は感じる。日本の自動車産業に関わっている人の中には、そう感じている方もいるのではないか。ただ、この局面でそれを言うと、「ルール破り」をさも肯定するかのように聞こえてしまうので、それは口が裂けても言えないだろう。

率直に言うが、こうした最終検査のことも含めて国土交通省が主管の「型式認証制度」は一部が時代遅れになりつつある。各自動車メーカーの工場の最終検査で、統計学などを駆使して不具合がどれくらい出ているのか、あるいは出る確率があるのかを確認し、問題がないのであれば、有資格者による検査制度は廃止にすればいいし、逆に問題があるのならば、有資格者を厳密に定義していくことが求められる。

海外では有資格者による最終検査が求められていないということは、廃止にしても大勢に影響はおそらく影響はないだろう。

この日産の不祥事をきっかけに、「品質」について国家レベルで考えていくべき局面にあるのではないだろうか。その際に考慮すべきテーマは、過剰品質対応とハイテク対応である。過剰品質対応については、型式認証制度の中でそうした点がないか、産官学で洗い直すべきだろう。

実はハイテク対応については、深刻な問題も含んでいる。日本がドイツに比べて自動運転の市場導入で出遅れている要因の一つは、日本の型式認証制度にある。ドイツでは、「新車開発の際にバーチャルシミュレーションで実験したデータを国が認めているが、日本では認められていない」(ドイツ系企業幹部)という。

ある自動車メーカーの技術者によると、現在の高速道路における自動追尾程度の「レベル2」の自動運転でも600万シーンを想定した開発が必要だという。「シーン」とは映画の場面と同じ意味で、運転の場面を機械(クルマ)に覚え込ませ対応できるようにしているそうだ。

これが自動運転のレベルがさらに進めば、億単位のシーンを覚え込ませることになるが、バーチャルな試験でないと、とても対応できない。しかし、日本の認証制度ではバーチャルな試験データを認めていない。

また、つながるクルマ(コネクテッドカー)の時代を迎えて、クルマがハッキングされるリスクも高まっている。サイバーセキュリティーを意識した型式認証も今後は求められるのではないだろうか。実際、米国では昨年ルールが変更されて、米国企業と取引がある企業に対しては、同等のセキュリティー対策をすることが求められている。

これにかこつけ、ソフトウエアなど米国製品を大量に買わせる、安全保障と通商を絡めた巧妙な手口とみる向きもあるが、世界の動きは間違いなくサイバーセキュリティーの強化に向かっているのだから、それに合わせていく姿勢が求められる。

■もう一度「TQM」を考えよう

自動車の型式認証制度だけではなく、日本の産業界は広い視野で「品質」について考えていくべき局面にもある。国土交通省が担当とか、経済産業省が担当だとか縄張りを争っている場合ではない。

特に日本企業では、TQM(トータルクオリティマネジメント)活動を推進する力が衰え始めている。この指摘は、「デミング賞」を主宰する日本科学技術連盟の中からも聞こえてくる。同連盟のトップにはかつては経団連会長経験者がポストに就くこともあったが、今はかつてほどの力を持っていない。

TQM活動が衰えている要因の一つは、大学でそれを研究する人が減ったからである。かつは経営工学の分野で研究している学者も多かったが、大学の学部再編などによって研究する母体が小さくなって、学問的体系も崩れたという。

特に時代に合わせた新しいTQMが必要になっている。これまでは、工場の出荷口までの「製造品質」を意識した活動だったが、これからは市場が求めている品質への対応の基軸を置くべきだろう。

グローバル化で市場が拡大したが、地域や国によって同じ製品でも使われ方は違う。使われ方で品質がどのように劣化していくのを意識した対応が求められるということだ。端的に言えば、日本企業は「壊れない」という単一的な価値を押し付けてきた面は否定できない。

果たして「壊れない」という発想だけでいいのか。たとえば、食品などでは「ハラル認証」といったイスラム文化圏向けの認証があるように、多様な価値観に対応した品質作りも求められている。

要は世界のお客が求める「価値」とは何かを意識した「価値品質」という概念も重要になっているのだ。そして、グローバルな市場に対応していく力が求められている今、品質は工場などの「現場」だけで造り込むものではなく、「経営」が造っていくとの考えが益々重要になっている。日産の不祥事を通じて改めて感じたことだ。


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2017年10月24日 10:49:55 : RMQSytHiQY : kE3sJIEYXcs[2]
何でも認定資格にして、講習会と認定料で荒稼ぎする天下り協会を乱立させた役人の利権が元凶、天下り利権を根絶しないと日本の産業は衰退するばかりだ。

2. 2017年10月24日 21:07:32 : KoH58Epg7c : yYIpdH3Am_4[434]
官庁は 不正助けて 見ないふり

3. 2017年10月28日 09:37:42 : 4tBUqYXtDY : Y9AGnmStsRo[156]
メーカーの官庁に阿ねる姿勢が強すぎて、自ら制度の変更手続きを図るようなことを官庁に申し入れしないからだ。何かと他のところでいじめを食らう要素があるので、メーカーなどは官庁に少しでも楯突こうとする姿勢がないのだろう。
逆に言えば、今回のことも何がきっかけでこうなったのか。

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民124掲示板 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民124掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民124掲示板  
次へ