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神戸製鋼や日産自動車が「不正」問題で揺れている。不祥事発覚後の企業の対応に「責任感のなさ」を感じてしまうのはなぜか Photo:のだよしお/アフロ
神鋼・日産・豊洲問題に感じる「安全だけど安心できない」の罪深さ
http://diamond.jp/articles/-/146388
2017.10.20 鈴木貴博:百年コンサルティング代表 ダイヤモンド・オンライン
神戸製鋼に加えて日産自動車も
企業不正を取り巻く奇妙な空気
世の中には安全率というものがある。たとえばエレベーターの定員が10名の場合、3倍以上の安全率が見込まれていて、実際は30人乗らないとワイヤーが切れるリスクはまずない。たとえ切れたとしても安全装置が作動するので、エレベーター事故は起きない。
こうした話に関連して、今、おかしなことが起きている。神戸製鋼の品質不正と、日産自動車の検査不正。どちらも組織ぐるみの問題だ。
神戸製鋼では、40年も昔からアルミや銅の事業部門を中心に品質不正が行われていたことが発覚した。現時点の報道をまとめると、不正製品の売上は全体の4%、納入先は500社におよび、自動車や鉄道車両、航空機や発電所など様々なインフラで品質基準に満たない材料が使われていることがわかっている。
今後の焦点はリコールの規模で、アメリカでは集団訴訟の可能性が現実味を帯びている。品質基準に満たないアルミ鋼材をグローバルに補償しなければならないことになれば、タカタの倒産とは比較にならないほどの経済損失が起きる可能性がある。
ただ、国内においては不思議な現象が起きている。マスコミが神鋼の責任を声高に叫び、取引先もリコールなどの費用が発生すれば神鋼に請求すると言う一方で、なぜか強度が足りないアルミ材についてはそれ自体の安全を問題視する声が高まらないのだ。
象徴的なのは神戸製鋼のアルミ材が使われていた鉄道各社の発表だ。新幹線から私鉄在来線車両まで、神戸製鋼の不正材料(納入品質に満たないアルミ材)が使われていることがわかったのだが、鉄道各社はそれぞれ早い時期に「車両の強度には問題がない」と言う結論を発表している。
確かに、40年前から不正が繰り返し行われてきたとはいえ、現実にはアルミ材の強度が原因となった事故は起きていない。「安全率を含めて考えれば新幹線をこのまま運行し続けても大丈夫だ」という判断なのだろう。今日も鉄道は平常通り運行されている。
一方で、神戸製鋼の取引先の中で目を引いたのが日産自動車だ。神戸製鋼所でデータ改ざんが発覚した鉄鋼製品の線材をボルトやナットなどにして日産車に使っている可能性があると明らかにした上で、仮に安全基準に適合しないと判断し、リコール(回収・無償修理)した場合、費用を神鋼に請求する方針だと強調している。
なぜこの発言が目を引いたかというと、日産自動車が同時並行で、検査不正による莫大な規模のリコールを引き起こしているからだ。
日産自動車の検査不正もこれまた奇妙な事件で、最終完成車の出庫を検査する資格のない従業員に検査をさせた上で資格のある社員の印鑑を押すという行為が、組織ぐるみで行われていたものだ。
おじぎの角度からもわかる
謝罪会見での「責任感」
「奇妙な」という点で言えば、日産自動車の西川廣人社長の記者会見が奇妙な注目を浴びたのは、社長がおじぎをする角度が浅かった点にある。「西川社長は会見で頭を深々と下げることはなく、『謝罪会見』とは一線を画した」(産経新聞 10月7日)など、これは謝罪会見ではないと報道された。神鋼の川崎博也会長兼社長が90度おじぎをして陳謝したのと対照的である。
同じ産経新聞の記事では西川社長は「検査そのものは確実に行われており、安心・安全に使っていただける」とも会見で発言したと報道されている。
実際、このような社長発言を受けて、日産の一部の工場では社長会見以降も引き続き不正検査が続けられていたことが発覚し、これがまたニュースで報道された。この追加分の不正検査で出荷された4000台については「リコールは考えていない」と日産は発表したが、翌日になってさらに不正継続の範囲が3工場に広がったことで、3万4000台について「追加リコールを検討する」とトーンを修正。さらに全6工場で国内向け全車両の完成検査、出荷、車両登録の停止を決定した。
日産について私が理解できた点をまとめると、政府と約束したルールが守られていない点、組織的に私文書偽造が横行していた点は問題なのだが、品質に問題はないし、国内工場でつくった海外輸出品は日本政府の検査ルール外なので、これも問題ではないというのが、当初の日産自動車の責任スタンスだったようだ。
「安全だけど安心できない」
根は豊洲市場問題と一緒
これらの対応はいったい何なのだろうか。
神戸製鋼はコンプライアンスが確立していなかったことが問題だと言う。
鉄道各社は不正な材料を使った車両でも安全には問題はないと言う。
日産自動車はプロセスに不正はあったが安全には問題がないと言う。
経済団体は今回の事件で日本製品の品質についての海外からの風評被害が問題だと言う。
これはどうやら、東京都の豊洲市場問題と同じ構造のように思える。詳しく検討をして、最終的には安全だと結論がついた。ただ安全なのだが、安心ではないことが今でも問題だと言う。これが豊洲問題だ。
だから安全には自信のある日産も、大規模なリコールをして、消費者に安心をしてもらうと表明している。神戸製鋼の取引先は同様に、安全なのだが安心できるように、神戸製鋼の不正材料がどこに使われているのかを調査して安心を取り戻したいと主張している。こうした構図である。
神鋼も日産も、それで何人かの責任者がクビになって、問題は収束するだろう。昔から続いてきた問題であるがゆえに、本当に責任がある人たちは歳をとり、組織から離れてしまっているため、誰も処分されないだろうという点も、豊洲問題とよく似ている。
結局のところ、被害を受けるのは「それでも心配な気持ちで自動車や電車、航空機に乗っている一般大衆だ」という点でも、やはり最後まで豊洲問題とよく似た収束を迎えるのだろう。
なんとも割り切れない不祥事である。
(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
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