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ビットコインに11月再分裂の危機、前回より事態は深刻
http://diamond.jp/articles/-/146154
2017.10.19 野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 ダイヤモンド・オンライン
ビットコインの価格は著しく上昇しており、過去最高値を更新しつつある。
一方、ビットコインが11月に再び分裂する可能性が高まっている。8月の分裂のときとは違って、今回の分裂には、「リプレイアタック」という深刻な問題がある。これは、分かりにくい問題であり、かつ状況は不確実だが、軽視したり無視したりすべきではない。
「スケーリング」問題での対立
7月の決着と、分裂
8月にビットコインが分裂したが、その背後には、「スケーリング」の問題がある。
ビットコインの取引処理能力は低いので、取引処理能力をいかに拡大するかが議論されてきた。
これについては、すでにこの連載で書いてきたが、その後の経緯も含めて要約すれば、つぎのとおりだ。
解決策として、大きく分けて2つの方向が提案されていた。
第1は、取引を記録するブロックのサイズを拡大するもの。これを支持していたのは、主として大手マイナー(ビットコイン発掘者)だ。
第2は、一部のデータをブロックチェーンの外で管理するもので、具体的には「Segwit」という仕組みが提案された。これは、ビットコインのソフトウェアを開発する「コア開発者」からなされていた。
こうした中で7月23日に、「Segwit」導入を盛り込んだ「Segwit2x」という方法に、大手マイナーを含む関係者が合意し、大きな混乱なく「Segwit」導入への道筋が開けた。
ところが、大手マイニングプール(発掘グループ)の1つが「ビットコインキャッシュ」(BCCまたはBCH)という新しい通貨の立ち上げを宣言し、8月1日にマイニングを開始した。
ビットコインキャッシュはブロックサイズを拡張しようとするものであり、ブロックチェーンに永続的な分岐(ハードフォーク)が生じることになった。その結果、ビットコインは分裂した。
その後のビットコインと
ビットコインキャッシュ
「Segwit」の導入によって、ライトニングと呼ばれるサービスが可能になると言われる。
これは、一部の取引をブロックチェーンの外で行なうことによって、手数料が非常に低い高速少額取引を可能にする仕組みだ。
ビットコイン価格は、分岐前にやや下落したが、分岐後には値上がりし、9月2日に5013ドルまで上昇した。
しかし、4日に中国当局がICO(仮想通貨発行による資金調達)の全面禁止を発表したことなどを受けて、一転。9月半ばには3000ドルを割り込んだ。その後、再び上昇に転じた。冒頭で述べた高値更新は、9月以来のものだ。
ビットコイン取引所は、新しく誕生した通貨を「ビットコインキャッシュ」(BCCまたはBCH)として、ビットコイン(BTC)とは異なる通貨として扱うことにした。
現在のところ、ビットコインキャッシュは、ビットコインの10分の1程度の価格を維持している。
1月に「Segwit2x」が分岐する?
「ビットコインゴールド」も誕生する?
ところで、スケーリングの問題は、まだ決着していない。
なぜなら、「Segwit2x」は、「Segwit」を導入した後に、ビットコインのブロックサイズを1MBから2MBに拡大するという内容になっているからだ。
しかし、ビットコインのソフトウェアを開発するコアメンバーは、ブロック拡大に反対している。
このため、本当にビットコインからの分岐が生じるかどうかは、現段階では不透明だ。
ただし、それを見込んだ先物が作られている。
香港を拠点とする仮想通貨取引所Bitfinexは、11月にビットコインから分岐する予定の新たなコイン「Bitcoin Segwit2x」(BT2)を、先物として上場した。
それだけではない。
ビットコインゴールド(BTG)という仮想通貨が新たに誕生する可能性がある。
香港のマイニング企業ライトニングエーシックのCEOであるジャック・リャオ氏が、プロジェクトを10月25日にリリースし、11月1日に取引所で公開する予定だと発表している。
ビットコインゴールドは、マイニングの難度を下げ、誰でもマイニングに参加できるようにするとしている。これにより、演算能力が高い特定の企業がマイニングを独占するのを防げるという。
ただし、開発状況は不透明であり、こちらも本当に実行されるかどうか疑問視されている。
分岐によって
「リプレイアタック」の危険がある
ブロックサイズの拡張が行なわれると、ハードフォーク(永久に分かれたままの分岐)になる。
そうなると、「リプレイアタック」という問題が生じる危険がある。
これは、つぎのようなものだ。
(この説明は、「What is a Bitcoin Replay Attack?」、「Replay Attacks Explained」などを参考にしている)。
分岐前にビットコインを1BTCだけ持っている人(「花子」と呼ぶ)を考えよう。
ビットコインが、サイズを拡張しないビットコイン(BTCと呼ぶ)と、サイズを拡張したビットコイン(BT2と呼ぶ)に分岐したとする。
この人は、分岐後、1BTCと1BT2を持つ(一見して資産が増えるようだが、必ずしもそうではない:これについては後述する)。
花子は太郎に1BTCだけ送金したいとする。1BT2は送金しないつもり。
ところが、1BTCの送金情報は世界中に公開されるので、問題が生じる。
攻撃者がその情報をコピーし、そのままBT2のネットワークに送信すると、1BT2が太郎に送金されてしまう(こうなるのは、BTCのネットワークでもBT2のネットワークでも、秘密鍵が同一だからだ。攻撃者は花子の秘密鍵を送金情報から知ることはできないのだが、BT2のネットワークでは花子の送金情報は「正しい」署名を含んだ情報とされるので、送金を認めてしまうのである)。
これがリプレイアタックだ。
送金相手も金額も正確に同じでなければならないが、これだけでも多くの問題が生じる。
BT2を送金したつもりはなかったのに、気がついたら残高が減ってしまっているというだけで問題だ(昨年6月にEtheriumがハードフォークしたときには、つぎのようなことが言われた。取引所の自分の口座から、自分が持つウォレットに送金する。そのうち、片方のコインを取引所に戻してまた引き出すという操作を繰り返せば、他のコインをいくらでも引き出せる。「How to deal with the Ethereum Replay Attack」参照)。
「完全なプロテクション」は
行なわれない見通し
こうしたことにならないよう、マイナーがBTCとBT2の取引を区別できるようにする必要がある。これを「リプレイプロテクション」という。
これには、「完全なもの」と「弱いもの」がある。
ビットコインキャッシュが分離したときには、ビットコインキャッシュは完全なプロテクションを行なった。これにより、ビットコインキャッシュとビットコインの取引は完全に分離され、「ビットコインだけを送金したつもりだったのに、ビットコインキャッシュも送られてしまった」というようなことは発生しなかった。
しかし、今回は、「弱いプロテクション」しか導入されないことになりそうだ(「How Segwit2x Replay Protection Works」参照)。
これは、「BTCの送金時には、あるアドレスへの少額の送金を含める」という方法だ。
このアドレスはBT2のチェーンで“ブラックリスト”として機能するので、BT2のチェーンでは、送金が無効とされる(普通は塩を混ぜない食べ物に塩を混ぜておけば、何か異常があることがわかる。少額の送金は この「塩」と同じような役割をするわけだ)。しかしBTCのチェーンでは有効なので、BTCだけが送金されることになる。
このプロテクションはユーザーにとって面倒なものだが、こうした方法しか導入しないのは、「Segwit2x」側が「自分のほうが正当なビットコイン」と主張していることによる。完全なバージョンはBTCの側で導入すべきだとしているのだ。
この問題がどう決着するのか、現状では見通しがつかない。
ビットコイン価格は下がるはずだが、
マーケットは強気
上記のように、分岐すると、分岐前に残高を保有していた人は、分岐後、元のコインと新しいコインを同単位保有する。
ビットコインキャッシュ(BCC)の場合、分裂前の時点では、取引所がBCCを認めるかどうかは不確実だった。しかし、結果的にはほとんどの取引所が認めた。つまり、取引所は、ビットコインBTCの保有者に、BCCを無償で付与した。
ただし、BTCを保有していた人の資産額が自動的に増えたわけではない。
なぜなら、理論的には、分裂後のBCCとBTCを合わせた価値が、分裂前のBTCの価値と同じになるはずだからだ。
つまり、他の条件が何も変わらないとすれば、BTCの時価総額は、BCCの時価総額の分だけ減るはずだ。したがって、BTCの価格は下がるはずである。
ところが、実際には両方とも値上がりした。これは、ビットコインに対する期待が高まったからなのだろう。
11月に分裂が起きた場合、これと同じことが起きるかもしれないという思惑がある。
つまり、「タダで資産を増やせる」という思惑だ。それが現在の価格上昇の背後にあると言われる。
ただし、状況は、上で述べたように不確実だ。
とくに、リプレイアタックに対して「弱いプロテクション」しか導入されないのであれば、ビットコインの利用が不便になり、価格が下落することもあり得ることに注意しなければならない。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
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