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選挙戦で自民「北朝鮮の脅威」強調に電力業界が肝を冷やす理由
http://diamond.jp/articles/-/145946
2017.10.17 週刊ダイヤモンド編集部
公示日が過ぎ過熱を見せる選挙戦とは裏腹に、電力業界は冷や汗が止まらない。
電力業界は今、悪夢再来の引き金となる新たな火種を抱えている。それは、7月5日に大阪地方裁判所で申し立てられた、関西電力高浜原子力発電所3、4号機に対する運転差し止め仮処分申請だ。
高浜原発に対しては、これまで何度も住民側から仮処分を申請されてきた。実際、2016年3月には仮処分が認められ、関電は稼働中だった3号機を停止させられた。高裁でこの仮処分はひっくり返されたものの、関電にとっては“思い出したくない悪夢”である。
今回、住民側は北朝鮮のミサイル攻撃の危険性が高まっていることを理由に仮処分を申請。住民側弁護団の1人である海渡雄一弁護士は「手を変え品を変え、さまざまな戦法で運転停止を目指す。今回はミサイル一点勝負」と話す。
一方、関電は北朝鮮のミサイルで高浜原発が攻撃される危険は切迫しておらず、運転を止める必要はないと主張。全面的に争っている。
そんな状況で、選挙戦がスタート。すると自民党は「北朝鮮の脅威」を前面に打ち出し、その脅威から日本を守れる政党は自民党であると、有権者に声高に訴え始めたのだ。安倍晋三・自民党総裁の選挙戦第一声でも、北朝鮮の話題に多くの時間が費やされた。
青ざめたのは関電。関電はミサイル攻撃の危険が高まっていないと主張している。そこへ、首相でもある安倍総裁本人の口から、北朝鮮の危機が高まっていると訴えられると、自らの主張と矛盾が生まれてしまうのだ。
頭もたげる心配の種
北朝鮮の脅威について、選挙戦を通して世間の危機感が高まれば、必然的に原発は大丈夫かという心配も広がる。実際、その萌芽は見え始めている。
高浜原発の他にも多くの原子力関連施設が立地する福井県の西川一誠知事は9月21日、小野寺五典防衛相と面談。原発の防衛について緊急要請した。
しかし、国と行政の反応は鈍く、迎撃ミサイルPAC3(地対空誘導弾パトリオット)の原発への配備など、具体的な対策には結びついていない。
他にも、心配の種は尽きない。例えば、原発は新規制基準で、故意の大型航空機の衝突にも対応できる体制を整備しているが、その体制だけで北朝鮮のミサイル攻撃にも対応できるのかどうか。
また、実際にミサイル攻撃された場合、電力会社は直ちに稼働停止させることになっているが、発射から飛来までの約10分で停止できるのかどうか。挙げれば切りがない。
裁判所は、世間との認識のズレがないように、報道等を参考にしながら個々の案件を判断していくという。もし世間で原発に対するミサイル攻撃の危機感が高まると、裁判所の判断を左右する可能性もある。そうなれば、関電にとっては悪夢の再来となり、電力業界全体にも影響が及ぶ。
選挙選が終わる22日まで、電力業界関係者の不安な日々は続く。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
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