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中国が突然「ガソリン車禁止」を打ち出した本当の狙い
http://diamond.jp/articles/-/142717
2017.9.20 井元康一郎 ダイヤモンド・オンライン
フランスやイギリスなど欧州主要国による将来的なガソリン車やディーゼル車の販売禁止宣言は、自動車業界では最もホットな話題となっている。これに便乗するかのように、中国政府関係者も将来的なガソリン車の販売禁止をコメントした。なぜ、中国は突然、このような発言をしたのか。(ジャーナリスト 井元康一郎)
“脱・内燃機関”の話題に
中国も参加
フランスのニコラ・ユロ環境相が「内燃機関で走る自動車の販売を2040年に終了させる」と発言したのに端を発し、世界の自動車業界では今、“脱・内燃機関”がホットな話題となっている。
そこに割って入ってきたのが中国だ。政府関係者が「伝統的なガソリン車の販売を終了させるプログラムを我が国も作る」と、EV転換を加速させる旨のコメントを発したのだ。
中国がEVに傾倒する発言を行ったのは、実はこれが初めてではない。2009年には全人代(全国人民代表大会。政策の基本方針を発表する場)で電力利用技術の国産化を大々的にブチ上げ、EVをその中核に据えた。
だが、EVは電力を蓄えるバッテリーのコストがきわめて高かったため、EV価格も高止まりし、政府のかけ声も空しく、ほとんど普及しなかった。業を煮やした政府は、EVの販売に手厚い補助金を出したり、都市圏では高倍率の抽選でしか手に入らないナンバープレートを簡単に入手できるようにしたりといった支援策を打った。それらの策は一時的には効果を示したものの、補助金を減額した途端に販売台数が急落するなど、根本的な普及策にはならなかった。
その中国が脱・内燃機関を大々的にうたった理由について、日系自動車メーカーの関係者は、「今回の中国高官の発言は、欧州で最近急激に高まったEVブームに乗ろうとしたものと思われます」と推測する。
中国にとって突然吹いた追い風が
欧州発のEVムーブメント
「中国はEVの普及に躍起になってきましたが、なかなかうまくいかない。2016年は補助金政策でEVが激増したことになっていますが、それは超小型車なども含んだ数字であるうえ、実数も疑わしい。そこに突然吹いた追い風が、欧州発のEVムーブメントです。販売台数2000万台をゆうに超える世界最大市場を抱える中国が、それと歩調を合わせることで、欧州のEVシフトのモチベーションを下げないようにするというのが狙いでしょう」
欧州は今や、フランスだけでなく多くの国がEVへの転換を続々と表明している。しかし、エネルギー供給のバランスやバッテリー、充電機器をはじめ、EVに関する技術革新のロードマップが明確になったからEVシフトを進めると決めたというわけではない。アメリカのトランプ大統領がCO2削減の取り決めであるパリ条約からの離脱を宣言していることへの牽制や、ここ10年ほどの間にヨーロッパで政治的な力を急速に強めている環境NGO(非政府組織)への配慮といった、政治的な動機を多分に含んでのムーブメントなのだ。
そのような状況下でEV転換を急に進めようとしたところで、革命的な性能と低コストを両立させたバッテリーや、そのバッテリーに短時間で充電可能な技術ができなければ、そのうちバッテリーの耐久性や使い勝手の悪さに顧客が不満を抱き、EVの社会的なプレゼンスにむしろブレーキをかけかねない。
もちろん欧州各国の政府もそのリスクは重々、理解している。ゆえに、EV全面転換の年限については2040年と、かなり先に設定している。その間にいくらでも政策に修正を入れる余地を残しているのである。
中核技術を手がける企業を
多数抱える中国にはチャンス
その欧州にトーンダウンされたくないのは、電力利用技術を産業振興の柱に据えながら、EVビジネスを思うように伸ばせずにいる中国だ。欧州がEVに傾倒してくれれば、バッテリーや電子機器などEVの中核技術を手がける企業を多数抱えている中国にとっては大きなチャンスとなる。
また、中国国内においてもEV普及策を進めることの正当性を主張しやすくなる。中国の“エンジン車フェードアウト宣言”は、「EVをやれば中国でのビジネスという点でも有利になりますよという、欧州に対するリップサービスのようなもの」(前出の日系メーカー関係者)であると見ていいだろう。
もちろん中国高官のコメントは、単なるブラフというわけではない。中国は今日すでに、補助金政策以外の部分でもEV転換の姿勢を強めている。自動車メーカーは各社とも、2018年に販売台数の8%、2020年には12%をEVもしくはPHEV(外部電源からの充電が可能なプラグインハイブリッドカー)にすることが義務付けられている。2025年の政府目標は、2割をEVにすることだ。
なぜ中国はこれほどまでにEVを推進しているのか。欧州と歩調を合わせながら、背景となる事情は欧州とかなり異なる。
中国がEVを推す表向きの理由は大気汚染防止とCO2排出量の抑制だ。なかでも大気汚染防止は動機として至極もっともに見える。北京、上海などの大都市圏では市民が日々、健康被害におびえるほどに深刻な大気汚染に見舞われており、その解決が急務であることは事実だ。
ところが、EVが唯一の解決策であるかというと、まったくそうではないと、中国駐在経験のあるホンダ関係者は言う。
「中国の大都市の大気汚染がひどいのは、近年まで排出ガス規制が緩かったからです。他の先進国並みの排出ガス規制を実施すると決めたのはつい最近のこと。排出ガスのコントロールをきちんとやれば、自動車由来の大気汚染はそれだけで十分に解消できるんですよ」
CO2排出量抑制は、大気汚染防止に比べるといくらかしっかりした根拠を持っている。中国の発電における化石エネルギー比率は65%前後。排出ガス、CO2排出量とも多い石炭火力が主力であったが、中国はその増設をやめ、原子力に鞍替えしようとしている。再生可能エネルギーを含めた非石油系電力の割合が増えれば、エネルギーとなる資源の採掘からクルマを走らせるまでのトータルでのCO2排出量は多少抑制されるであろう。
中国政府は
自動車を輸出産業化したい
だが、前出のホンダ関係者は、中国政府がEVを推す本当の動機は、それら環境問題の解決ではなく、自動車を輸出産業化することにあるのではないかという見方を示す。
「中国政府は自動車分野を輸出産業にしたいという思いをずっと持っていました。これまでいろいろトライアンドエラーを繰り返し、低価格車についてはコストも含めると先進国メーカーが脅威に感じるような力をつけてきています。しかし、中国はそれでは満足しておらず、もっと主導的な地位を得たいと思っている。その格好の材料がEVなんですね。これを低価格、高性能で作れるようになれば、経済成長にともなって環境汚染やCO2対策への悩みも深まる他の新興国に、エコソリューションとしてポンと輸出できる。場合によっては発電プラントや変電、送電などのインフラもセットになりますから」
中国は欧州の自動車メーカーに中国でのEV販売台数の積み増しを打診。それに呼応して、フォルクスワーゲンをはじめ複数のメーカーが中国でのEV販売の大幅増強プランを続々と発表している。欧州メーカーとの合弁を通じてバッテリーや電子部品などのサプライチェーンを確立しながら技術を吸収し、中国メーカーのEV開発能力を高めようとしているのは明白だ。
「もっとも、中国の思惑どおりに事が運ぶかどうかはまだわかりません。欧州勢は本当にしたたかですからね。エンジン車でも、日本勢は合弁相手や部品メーカーに技術を気前良く見せてしまったきらいがありますが、欧州勢は中国メーカーとがっちりタッグを組んでいるように見せておいて、その実、本当に大事なところは見せていないということが多い。EVをネタに中国が欧州を取り込むという策が実を結ぶかどうか、化かし合いが見られるかもしれない」(冒頭の日系自動車メーカー関係者)
エンジン車を終わらせ、EVやPHEVに一層舵を切る姿勢を見せた中国だが、いつそうするか時期を明言したわけではない。技術のバックボーン不足のままEV推進を過度に進めた場合、途中で大問題を起こしてコケる可能性もある。ある意味、博打とも言えるEVをネタに、中国が世界の自動車産業の主役になれるかどうか。これからの動向が興味深い。
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