http://www.asyura2.com/17/hasan123/msg/682.html
Tweet |
金融弱者を狙う「強欲の銀行カードローン」その実態 自己破産者まで生まれたその背景
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52911
2017.09.19 藤田 知也 現代ビジネス
金融庁がようやく重い腰を上げた。急増する「銀行カードローン」に的を絞り、大手行を中心に9月から立ち入り調査に入ることにしたのだ。
消費者金融では禁じられていたはずの多額の融資が、なぜ銀行ではなりふり構わずに拡大するのが許されてきたのか。『強欲の銀行カードローン』を上梓した朝日新聞記者・藤田知也氏が、弱者を狙い撃ちにするカードローンの強欲な実態を暴く。
■50万円の融資から、自己破産へ
母を亡くし、都内で独り身の実家暮らしだった50代の男性。眺めていたスマホ画面に浮かび上がるのは「スマホでかんたん申し込み」「最短30分審査回答」「総量規制適用外」といったカードローンの広告だ。目にとまったネット銀行の一つに、おそるおそる10万円の借り入れを申し込んでみた。それが転落へと続く道とは気づかずに――。
男性は当時、複数の消費者金融で計100万円超の借り入れを抱え、月末の返済に追われていた。仕事中に痛めた足の治療費や生前の母親の介護費がかさみ、母親の死後は自暴自棄にもなって飲み食いや競馬でカネを費消した。ビルメンテナンスの仕事で年収は約400万円。消費者金融からの借り入れは総額で年収の3分の1以下に規制されているため、男性はもうお金を借りられない「天井」にぶつかっていた。
そんな時に見つけたのが、銀行カードローンだった。
銀行には社会的な信用があり、同時に借金の審査には厳しい印象もあった。消費者金融で借りられなくなった自分では、どうせ無理だろう。そう考えながらも、試しに個人情報をスマホに入力し、かかってきた電話で簡単な質問に答えた。間もなく返ってきた審査回答に目が釘付けになった。画面には「融資枠50万円」と書かれてあったのだ。
「助かった、ありがたいな、と心の底から思いました。金利は12%くらい。それまで借りていた消費者金融よりも安いから『お得だ』とも感じました。いま思えば、本当にバカでしたけどね」
借金返済をしのぐつかの間のつもりが、現実はそこで収まらない。決められた融資枠の範囲なら、いつでも好きなだけ借りられる、その代わり金利が高くつく、というのがカードローンの特徴だ。しかも、銀行は毎月少しずつ返せばいいかのように誘導してくるが、それでは完済までにかなりの時間を要し、その間に利息もたっぷりと搾り取られる仕掛けになっている。
借りるカネは銀行のATMを操作して引き出すせいか、一部の利用者には、まるで自分の貯金が増えたかのような錯覚を与えるようだ。男性もそうだった。50万円の融資枠ができて気が大きくなり、カネづかいの荒さに拍車がかかった。数カ月たつと頼んでもいないのに、ネット銀行は「キャンペーン」という名目などで融資枠を100万円まで広げてくれた。
だが、月々の支払いは必ずやってくる。消費者金融も含めて計6万円程度だった返済額は十数万円まで膨らみ、振り込まれる給料の半分は借金の返済に回さざるを得ない。さすがにネット銀行でも借りられない2度目の「天井」にぶつかると、そこからは食事を削り、必要な病院代さえ払えない生活が始まる。
健康を保てれば完済にたどり着く可能性もあるが、少しでも融資枠が空くとその分だけ借りたくなるのが人間の性だ。男性はお金のやりくりに心をすり減らし、うつ病となって会社を休職。復帰のめどがつかず、収入も見込めなくなって、ついに今年1月に自己破産を申し立てることになった。
■総額5.6兆円
男性は「借りるのはすごく簡単で、返すのはすごく難しかった」と振り返りながらも、銀行の不満は一切口にしない。ただ「悪いのは自分です」と繰り返す。
しかし、彼の債務整理に携わった弁護士の森川清さんの見方は違う。「銀行がお金を貸さなければ、彼は破産せずに後戻りできた可能性が高い」と言うのだ。
この男性の場合、ネット銀行でカネを借りる段階で、手続きをすればケガの治療を理由に障害年金を受け取れたほか、親の介護費や自分の治療費のためなら社会福祉協議会が提供する無利子・低金利の貸付制度を利用することもできた。
安易に高金利のカードローンや消費者金融を頼らず、公的な支援制度を活用していれば、借金を返して再建できた可能性がある。せめて年収の3分の1以内の借り入れで立ち止まればいいものを、消費者金融ではお金を借りられない人の傷口を広げるように銀行がお金を貸しこみ、破綻へと転落していくケースが少なくないのだという。
銀行の罠にはまりやすいのは、ギャンブルや買い物の依存症になったり、心や体の不調で急に収入を失ったりする弱い立場の人間が多い。
そこで本当なら、ちょっと待って、と冷静に対応する余裕を与えるべきなのだが、そんな親切心を今の銀行は持ち合わせていない。
自己破産申立件数は2016年の1年間で6万4637件に上り、13年ぶりに増加に転じた。1.2%増とわずかだが、今年1〜6月のデータでは約5%増と伸び率を高めている。多くの経済指標が改善するなか、自己破産が増える理由として浮かんできたのが、銀行カードローンによる行き過ぎた貸し付けだ。
銀行カードローンの残高は今年3月末時点で5.6兆円、この4年間で1.6倍にもなった。1998年3月末以来19年ぶりの高水準だ。一方で、消費者金融による貸出額は2000年代前半から減少を続け、ここ数年は2兆円台で横ばい傾向に。伸び悩む消費者金融を横目に銀行カードローンの急伸を支えたのは、消費者金融に課せられる厳しい規制が銀行には適用されないことだ。
■総じて「後ろ向き」
たとえば、消費者金融は同業他社も含めて総額で年収の3分の1以下しか貸せないと貸金業法で定められているが、銀行は上限を気にせずに好きなだけ貸せる。実際に全国の銀行の大半がカードローンで年収の3分の1超を貸していたことが、朝日新聞のアンケート調査で判明している。
消費者金融は利用者の借り入れが単独で50万円、同業他社も含め100万円を超える場合は、収入証明書を提出させて確認することが義務づけられている。銀行は何の制約もないので、メガバンクも含む多くの銀行は収入を厳密に確認することもなく200万円、300万円と貸し付けていた。
さらに銀行カードローンのテレビCMが洪水のようにあふれていたのを覚えている人も多いだろう。消費者金融のテレビCMは毎月100本以下と決められているが、規制のない銀行は好きなだけ放送できる。
筆者が入手した民間調査会社のデータでは、三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行、新生銀行の3行が最近まで月150〜250本というハイペースでCMを流しまくっていた。これでは銀行カードローンが消費者金融を凌駕できるのも当然だ。
消費者金融への規制が強化されたのは2006年のこと。それまで高金利で貸しまくり、自己破産だけでなく自殺者まで増えて社会問題になったのを受け、改正貸金業法は成立したのだ。当時の銀行カードローンはもっぱら口座保有者向けの一サービスに過ぎず、今のように熱心に売り込むものでもなかったから、規制対象とはならなかった。
ところが、今は事情が変わった。日本銀行による大規模緩和で金利が歴史的な低水準となり、金利が1%にも満たない住宅ローンや法人融資で稼ぎにくくなった銀行業界は高金利が見込めるカードローンやアパートローンに活路を見いだすようになった。銀行口座のあるなしに関係なく、一見客にも積極的に売り込み、カードローンは消費者金融とほとんど変わらない業態へと変貌した。
衰退が進む消費者金融も、銀行カードローンの恩恵にあずかる。銀行には一見客を短時間で審査する能力がないため、審査ノウハウのある消費者金融などの貸金業者を保証会社として組み入れている。私たちがカードローンでお金を借りるには、保証会社の審査を通過することが条件となっている。
銀行は保証会社に保証料を払い、貸し倒れたときのリスクを丸投げ。融資拡大が見込めない消費者金融業界では、銀行などのカードローン審査や債権回収で稼ぐ「保証ビジネス」が有望な生き残り策となった。
しかし、銀行カードローンの台頭によって、消費者を守るためにつくられたはずの貸金業法は完全に「骨抜き」となっている。日本弁護士連合会は昨年秋、銀行カードローンを含む借り入れが年収の3分の1を超えて破綻していった事例を集め、銀行も原則、個人の利用者の借り入れが年収の3分の1以内に収まるようにすべきだとする意見書を政府や全国銀行協会に突きつけたが、彼らの対応は総じて「後ろ向き」に映る。
■ようやく変わりはじめたが…
筆者がこの問題に目をつけたのは、自己破産が増加に転じたことを知った今年春のことだ。マスコミの脚光を浴びるようになり、多くの銀行もこの春以降になって、消費者金融と同じように収入証明書の提出を求めて確認することを始めた。三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行はテレビCMの放送回数を消費者金融並みに減らした。「総量規制対象外!」といった過激な広告表現も銀行の自社広告からは最近は消えている。
だが、貸付額が年収の3分の1を超えることについて、全銀協の会長行を務める三菱UFJフィナンシャル・グループは並々ならぬこだわりを示している。詳しいやりとりは拙著『強欲の銀行カードローン』に記したが、カードローンでの多額の貸し付けには「利便性がある」「ニーズがある」などと主張し、さもカードローンで多額の融資を行うのは自分たちの利益よりも、それを切実に必要とする誰かのためかのように訴えてきた。
では、誰のためにどう役だっているというのか。そう尋ねても、まともな答えは返ってこない。最短30分の簡単審査で無目的のカネを貸し出しているため、カネが何に使われているかは知るよしもないのが実情だからだ。
銀行カードローンを全否定するつもりはない。簡単にすばやく借りられる借金が、高金利でも少額なら誰かのために役立つ場面があることは知っている。高額で高金利でも、ごく短い期間に限られば負担は小さくて済む。高額で長期間でも、目的に応じて低金利で貸してくれる住宅や車、教育などのローンが多くの人生に役だっていることは言うまでもない。
しかし、使い道のわからない高金利のカードローンで高額の貸し付けを長期にわたって続けることが、一部の消費者を破綻に追いやることはあっても、誰かにとって何か役立っているのかはさっぱり見えてこない。そして、貸金業法を骨抜きにする行為が漫然と今も続けられている現状にはやはり納得がいかない。
金融庁は6月までの通常国会で「銀行界の自主的な取り組みを見守る」という姿勢を貫いたが、9月に入って方針を一転。カードローンに的を絞り、大手行への立ち入り検査に乗り出すことを発表した。金融庁が検査の実施をわざわざ発表するのはめずらしいことだ。ちゃんとやります、とアピールする狙いもあったのではないか。
金融庁は立ち入り検査によってカードローンの実態を詳しく把握できるが、なにをどう改善させるのか決まった方針があるわけではなく、検査を通して検討される。そこで弱者を守る消費者保護の初心=貸金業法の精神に立ち返れるのか。
成果を上げるには私たちもただ見守るだけではなく、おかしい、という声を上げ続けないといけない。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民123掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。