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ヤマダ電機本社(「Wikipedia」より)
互いに「あいさつ」しないヤマダとニトリの会長…業界王同士が「領域侵食」で予測不能
http://biz-journal.jp/2017/09/post_20615.html
2017.09.18 文=編集部 Business Journal
ヤマダ電機は6月30日、群馬県前橋市に新業態店の第1号店「インテリアリフォームYAMADA前橋店」をオープンした。
2月まで営業していたアウトレット専門店「ヤマダ・再楽館 前橋店」をリニューアルした。住環境提案店舗とし、リフォームだけでなく、家具やインテリア雑貨をトータルで提案する。カフェやキッズスペースを併設し、ファミリー層が気軽に来店できるようにした。
店舗から200メートル圏内に大型家電店「テックランドNew前橋本店」とヤマダ・ウッドハウスのモデルハウスがあり、相互に連携することで住まいに関するすべての要望に応える「新体験空間」の形成を目指す。「テックランドNew前橋本店」と相互送客することで、2店舗合計の売上高を従来の1.5倍まで伸ばす計画だ。
新業態店の特徴は2つ。ひとつはリフォームに特化したこと。これまでも店舗の一角でリフォームコーナーを展開してきたが、リフォームを前面に打ち出した店舗は初めてだ。2017年3月に大阪・豊中市にオープンした「LABI LIFE SELECT 千里」が注文住宅のヤマダ・エスバイエルホームのショールームを設け、生活提案型の売り場を構築したことが、リフォームに力を入れる先がけとなった。
「インテリアリフォームYAMADA前橋店」は3階がリフォームコーナーだ。6月には不動産事業を担当する子会社、ヤマダ不動産を設立。店舗内に不動産コーナーを設け、グループで不動産仲介にも対応していく。
新業態店のもうひとつの目玉は2階のインテリアと雑貨のコーナーだ。ベッドやソファ、キッチン用品などを販売する。ニトリホールディングス(HD)の売り場を意識した店舗構成になっている、との指摘もある。つまり、ヤマダはニトリHDの牙城である家具雑貨の分野に切り込むことになる。
反転攻勢に出る
ヤマダ電機の業績の頂点は11年3月期で、売上高は2兆1532億円、純利益は707億円だった。その後、業績は急落。創業者の山田昇会長が13年に社長に復帰すると、15年に不採算の60店を閉め、「量から質」へと転換した。16年4月、再建のメドがついたことから山田氏は会長兼取締役会議長に就き、後任の社長に非同族の桑野光正氏を起用した。後継者と目されていた子息の山田傑氏は「その任にない」として、その年の株主総会で取締役を退任した。
17年3月期の売上高は1兆5630億円と前期に比べて3.1%減ったが、純利益は345億円と14%増えた。家電・情報家電の売り上げは1兆3399億7000万円で前期比3.8%減ったが、非家電は2230億7000万円で1.2%増えた。業績が底を打ったことから、反転攻勢に出た。
業績が低迷している子会社のベスト電器を、株式交換方式により7月1日付で完全子会社とした。それに伴い、ベスト電器は6月28日付で上場廃止。
家電部門の強化策として船井電機と提携。6月2日、船井電機が製造する「FUNAI」ブランドの液晶テレビを発売した。両社は16年に10年間の独占供給の業務提携を結んでおり、FUNAIブランドはヤマダ電機の店舗のみが扱う。18年には次世代型テレビの有機ELテレビの新製品を投入する計画で、FUNAIだけで20年に台数ベースの国内市場でシェア2割を目指す。
20年の東京五輪を前に、より鮮やかな色彩を表現できる有機ELテレビの人気が高まるのは間違いない。有機EL商戦でトップシェアを確保し、船井電機の黒字転換に寄与するというシナリオだ。
提携の一方の立役者だった船井電機創業者の船井哲良・取締役相談役が7月4日、肺炎のため死去した。90歳だった。
ニトリは家電や、リフォームに進出
非家電事業の柱に据えるのが、家具やインテリア雑貨に特化した新業態店で、それはニトリHDの牙城だ。
ニトリHDの17年2月期の売上高は前期比12%増の5129億円、営業利益は17%増の857億円。30期連続の増収・営業増益という大記録を達成した。
似鳥昭雄会長兼CEO(最高経営責任者)は6月30日、ヤマダ電機が家具販売に進出することについて、「家具業界にとって、異業種の参入は好ましいことだ。それだけお客様にとって選択肢が増えることであり、お互い切磋琢磨していきたい」と語っている。
同日、東京・渋谷にオープンした「ニトリ渋谷公園通り店」の記者会見で、記者の質問に、こう答えた。同店は地上9階建てのビルを借り、売り場面積は約5000平方メートルとニトリの店舗では都心で最大だ。掃除機や炊飯器など生活家電も扱う。
ニトリはヤマダ電機が運営する商業施設のテナントとして5店を展開している。一方、ヤマダ電機はニトリHDが運営する商業施設に4店出店している。
似鳥会長は「お互い、これまで関係ある企業だったが、家具などを販売することについては、相談はなかった。ただ、うちも小物家電を扱っており、小物家電をやる時にあいさつには行っていない」と述べたという。
ニトリは17年5月、中古住宅販売のカチタス(群馬県桐生市)に出資した。カチタスは買い取った戸建ての中古住宅をリフォームし、再び販売する中古住宅の再生事業を手掛ける。
リフォーム事業で先行しているのはヤマダ電機のほうだ。注文住宅のエス・バイ・エル(現ヤマダ・エスバイエルホーム)や住宅機器のハウステックを買収するなど、住宅分野を拡大してきたが、エスバイエルホームは足踏み状態が続く。
家電の帝王・ヤマダ電機と家具の王者・ニトリHDは、業態のニアミスが目立ってきた。両社のガチンコ勝負の結果が、流通・小売り界の勢力図を大きく塗り替えるかもしれない。
(文=編集部)
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