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小樽運河
小樽、中国人殺到で「原宿化」、パンフも5カ国語…沸騰する北海道観光に「深刻な問題」露呈
http://biz-journal.jp/2017/09/post_20568.html
2017.09.13 文=山田稔/ジャーナリスト Business Journal
8月中旬、お盆の期間中に小樽を訪れた。道内でも屈指の人気観光スポットだ。昼時を外してレンタカーで訪れたのだが、あいにく駐車場はどこもいっぱい。工場見学ができる有名な蒲鉾店の前には、駐車場待ちの自動車が列をなしている。その近くには、相場の倍の値を掲げた駐車場もある。そんな駐車場でも、空きが出るとすぐに埋まってしまう。幸い、穴場らしき駐車場(30分200円)にタイミング良く空きが出たので、大して待つこともなく駐車することができた。
特に小樽運河から土産物店、寿司店などが立ち並ぶ堺町通りにかけての人混みがすごい。休日の原宿を思わせるほどだ。国内の観光客はもちろん、アジアからの旅行者の姿が多い。運河近くの観光案内所に立ち寄りパンフレットを手に取ると、日本語版に加え英語、中国語、韓国語、タイ語版が揃っている。スタッフの方に「最近の訪問客はどの国が多いですか」と尋ねると、韓国だとの答えが返ってきた。
堺町通りにある老舗の寿司店に入る。午後3時近いというのに、満席で順番待ちしなければならないほどの盛況ぶりだ。しばらく待って案内された2階のテーブル席は、蔵の中にいるかのようにシックな雰囲気で、壁には洗練された絵がかかっている。メニューは日本語と英語表記だ。周りのテーブルは、ほとんどがアジアからの客のようだ。小樽の新鮮な海の幸に満足げな様子を見せている。街を歩く人々は大きな土産袋を持ち、飲食店では数人のグループが軒並み1万円以上使っていく。
このような光景を見ると、アジアマネーが小樽の観光を支えていることを実感する。
羊ヶ丘展望台(札幌)
■北海道を訪れたインバウンドは223万人
2016年、北海道を訪れたインバウンド(訪日外国人客)は222万9900人で、前年同期比17.2%増となった。11年度は57万人にすぎなかったので、わずか5年で約4倍に膨れ上がったことになる。
インバウンドは観光消費での貢献度も高い。16年度第3四半期(10〜12月)の観光消費額をみると、道内からの宿泊客が平均2万3546円、道外宿泊客が同7万36円なのに対し、外国人は同12万6394円と飛び抜けて多い。
インバウンドの実数を国別・地域別でみると、中国53万8300人(前年同期比10.4%増)、台湾53万3500人(同0.3%増)、韓国38万9400人(同48.5%増)の順で以下、香港、タイ、マレーシアとアジア諸国が10万人台で続く。米国が5万9500人、オーストラリア5万1200人、カナダ1万9200人などとなっている。アジアの上位3エリアで65%を占めている。北海道に限った話ではないが、インバウンドの主流はまだまだアジア圏というのが実情だ。
羊蹄山
■市場別に誘致戦略を練る北海道の作戦と課題
北海道は17年2月に「北海道インバウンド加速化プロジェクト」を発表した。そのなかで、20年度をめどに外国人観光客を500万人にするという目標を掲げている。現状の2.2倍にあたる数字だ。国際的に質の高い観光地づくりに取り組むことで、インバウンド拡大を図る。それにより消費拡大、他産業への波及、新たな消費、輸出拡大につなげていく。さらに、道民の「観光で稼ぐ」意識の醸成をめざすとしている。
また、現状の基本データから、来訪客の出身国(市場)を分類して、それぞれの対策を練っている。先導的な役割を担う「成熟市場」(台湾、韓国、香港など)、新規客の拡大とともに成熟市場への移行を図る「成長市場」(中国、タイ、マレーシアなど)、そして滞在型観光の役割を担う「欧米市場」(米国、英国、フランスなど)の3つに分類している。目標とする500万人のうち、「成熟市場」から240万人、「成長市場」から220万人、「欧米市場」から27万人の来道者を見込んでいる。
目標達成のためには、克服しなくてはならない課題も多い。交通、観光インフラの整備はもちろん、人材育成、新たな滞在型メニューの策定など、ハード、ソフト含めた観光改革が必要だ。道内の事情に詳しいジャーナリストがこう指摘する。
「北海道の場合、どうしても夏と冬の観光シーズンに偏りがちです。特に夏場に占める割合が高いです。シーズン以外の誘客をどう増やしていくか。訪問先(宿泊先)も札幌や小樽などの道央圏が中心で、道南や道北はまだ少ない。外国人の宿泊先(延べ宿泊者数)で見ると、札幌が39.6%、札幌以外の道央が33%、道南は7.8%、道北は12%、オホーツクは1.9%と偏在がみられます。こうした季節・地域の偏在を解消し、道内の魅力ある観光資源をフルに活用する対策が必要でしょう」
北海道新幹線の延伸計画、道内にある空港の民営化に向けた動き、国立公園満喫プロジェクト選定(阿寒国立公園)など、北海道を取り巻く観光環境は追い風が吹いている。この風をいかに生かすか。従来の観光戦略にとらわれない斬新な発想で、道民のためにもなる観光政策を考えてもしいものである。
(文=山田稔/ジャーナリスト)
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