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「エアバッグ問題」国交省と経産省の見て見ぬふりこそ大問題だ 遅すぎる対応、日本車いじめ…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52786
2017.09.05 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■国交省も経産省も「見て見ぬふり」
製造業として戦後最大の負債を抱えて破たんしたタカタの欠陥エアバッグ問題で、国土交通省は8月30日、リコール(回収・無償修理)対象にもかかわらず、いまだに未改修で異常破裂するリスクが残るエアバッグの搭載車(約170万台)について、来年5月以降、車検の有効期間を更新しない方針を決めた。
タカタの欠陥エアバック問題では、世界各地で少なくとも18名の死者が出たとされる。今回、国交省がリコールの徹底策を打ち出したのは当然のことだろう。むしろ、遅きに失した感さえある。
しかし、果たして欠陥製品のリコール徹底だけで対応は十分なのか、首を傾げざるを得ない。というのも、すべてのエアバッグは、いざというときクッションのように膨ますために(種類は違えど)火薬を使っているからだ。
ご存じのように、火薬は水分、湿気に弱く、経年劣化が避けられない。つまり、火薬の種類によって程度の差はあるものの、製造から時間が経ったエアバッグには異常破裂や不作動といったリスクが付きまとうのだ。このリスクを軽減するためには、主要部品の定期交換の必要性を周知徹底することや、関連するルール作りが不可欠だ。
ところが、この火薬の経年劣化問題については、国交省はもちろん、火薬類取締法を所管する経済産業省も素知らぬ顔を決め込んでいる。
しかし、この問題が大きな政治、社会問題となっていた米国において、自動車メーカーと自動車オーナーの間の集団訴訟でようやく和解が成立するなど、日本が対策を先行させることのデメリットも乏しくなりつつある。
いまこそ、これまでより踏み込んだ抜本的事故防止策の構築が両省の責務であると言えよう。
■「リコールしても未改修」が8割
エアバッグは、センサーが衝突を感知すると、車載コンピュータがインフレータ(ガス発生装置)の着火指示を出して大きく膨らみ、搭乗者を守る仕組みになっている。
ガス発生に使われる火薬の主流は、以前はアジ化ナトリウム系のものだった。が、2000年以降、毒性の強さを理由に使用が禁止され、タカタが硝酸アンモニウムを、ダイセルやスウェーデンのオートリブが硝酸グアニジンを主成分に使い始めた経緯がある。
リコールの対象となったホンダ・アコード(2015年に廃車となった車両) photo by gettyimages
ところが、タカタ製のものについては、異常破裂が起きて破損した金属片が飛び散る事故が続出した。国交省によると、2004年以降、日本国内の事故は8件(うち負傷者2名)、全世界での事故は約200件(うち死傷者が少なくとも18名)に達している。
この結果、2008年以降、全世界で累計8100万台以上、米国で累計4200台以上がリコールの対象になった。日本国内では、今年7月までに自動車メーカー24社が、延べ134件のリコールを実施。累計1883万台がリコール対象になっている。
その内訳は、製造管理の不備が判明したものが254万台で、不備の有無は不明ながら事故リスクを低減するため予防的に行われたものが1628万台に及ぶ。
ところが、リコールによる改修率は7月末時点で78.1%にとどまっており、未改修車がまだ412万台も残っている。これらを放置できないというのが、今回、国交省が車検による有効期限の延長停止措置に踏み切る理由だ。
措置の対象車数は412万台すべてではなく、「2016年4月以前に自動車メーカーによるリコールの届け出がされており、異常破裂する危険性が高いインフレーターを使用したエアバッグを搭載する未改修車(約170万台)」に限定するという。
国交省ではその車種別リストを公開したうえで、詳細は自動車メーカー各社に問い合わせるよう呼びかけている。
■対策強化が“日本車いじめ”を助長する?
今回の措置は、当然必要な対応だろう。
衝突事故の際に搭乗者を守るためのエアバッグが、その目的とは逆に多くの人を傷つけるリスクが大きい現状は決して放置できない。むしろ、自動車メーカーによるリコールの届け出は10年前からあったのだから、もっと早くに今回のような措置を打ち出し、改修を徹底しておくべきだった。
ただ、取材をしていると、アメリカでは国内自動車メーカーの政治力が強く、何かにつけて“日本車いじめ”が横行しかねない空気を感じることが多い。そのためか、取材先には「米国に先駆けて日本が対策を強化することは、日本車いじめに手を貸す結果を招きかねない」と神経を尖らせる関係者が意外なほど多かった。
だが、タカタ製エアバッグのリコールをめぐって、ホンダが米国の同社製品オーナーから提起されていた集団訴訟に関して、日本円換算で約670億円を支払うことで和解できたと発表(9月1日)するなど、この問題は米国で大きなヤマを越えつつある。
それだけに、すでに米国で行われた措置で、日本でも必要と思われる措置を躊躇することや、米国で行われていなくとも実施の必要があると思われる措置を怠ることは、もはや許されない。
■責任を押しつけあっている場合ではない
その第一は、タカタが異常破裂を防止する狙いで生産した「乾燥剤」入りのエアバッグの扱いだ。同社はこれまで、リコールは不要と主張、国交省もこの主張を入れてリコール対象から外してきた。
しかし、米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は今年7月半ば、乾燥剤入りエアバッグのうち初期のタイプにあたる270万個を新たにリコール対象に加えると発表した。このタイプのエアバッグを搭載する車種を販売しているのは、米フォード・モーター、日産自動車、マツダの3社という。
当然ながら、日本でもこれ以上この問題をうやむやにして先送りすることをやめ、リコールの必要性の有無をすみやかに判断する必要がある。
リコール対象となり米国の販売店から回収された車両(写真はトヨタ製) photo by gettyimages
第二は、2015年5月12日付の本コラム『タカタ製だけじゃない。経年劣化ですべてのエアバッグが危ない!?』で指摘した問題だ。タカタ製以外の、つまり硝酸アンモニウム以外の火薬を使用したエアバッグの、安全性の問題である。
一般に、エアバッグで使う火薬でもう一つの主流となっている硝酸グアニジンは、硝酸アンモニウムと比べて安定しているとされているが、その一方で、まったく経年劣化しない火薬は存在しないとする専門家が少なくないことも事実なのだ。
国交省と経産省はこれまでのように、お互いに相手の所管の問題だとして責任を回避するのではなく、双方が協力して踏み込んだ調査を行い、必要ならばエアバッグの火薬に係る部品の定期交換制度を設けるべきではないだろうか。
コストの押し上げ要因になると自動車メーカーの懐事情を慮るばかりではなく、利用者・消費者に寄り添った施策もバランスよく行うことが、政府の使命のはずである。
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