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日本、もはや外国人労働者にとってメリットない国に…見放されて産業が維持困難の危惧
http://biz-journal.jp/2017/09/post_20460.html
2017.09.05 文=鉾木雄哉/清談社 Business Journal
都心部のコンビニエンスストアや外食産業では、もはや当たり前となっている外国人の店員。サービス業に限らず、農業や漁業などの一次産業、建設業や製造業などの二次産業の現場でも、外国人労働者の存在が欠かせなくなっている。
しかし近年、この外国人労働者たちが失踪するケースが相次いでいる。法務省によると、外国人技能実習生の失踪者数は2011年で1534人だったが、15年には過去最多の5803人と4倍弱に増加している。
なぜ、外国人労働者たちは失踪するのか。その原因は、「外国人技能実習制度」にあるという。
■外国人技能実習制度の仕組みは“裸の王様”
外国人労働者は、日本の技術を学ぶことができる「外国人技能実習制度」を利用している人が多い。同制度は、「国際貢献」や「人材育成」が本来の趣旨だ。
しかし、実態はまったく違うという。そもそも、日本は外国人の単純労働者の受け入れを認めていない。一方で、農漁業や建設業など日本人が敬遠しがちな75職種では、人手が圧倒的に不足している。
そこで、深刻化する人手不足を解消するために国と経済界が手を組んでつくり上げたのが外国人技能実習制度という仕組みだが、実際には出稼ぎ目的で利用する外国人が多いという。
日本における外国人労働者の悲惨な労働環境を赤裸々に明かした『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社)の著者でジャーナリストの出井康博氏は、外国人技能実習制度について「まるで“裸の王様”のような制度。現状のままでは、失踪する外国人が減ることはないでしょう」と指摘する。
失踪した外国人労働者は不法滞在者として日本のどこかに潜伏し、なかには犯罪行為に走る者も少なくない。この場合、「不良化する外国人」として語られがちだが、本当の問題は外国人技能実習制度の欠陥にあるという。
■給料は最低賃金、裏にピンハネ同然の構造
外国人技能実習生の失踪の原因として、よく「受け入れ先企業の人権侵害」という問題が報じられる。労働現場では、外国人労働者への残業代の未払いやパスポートの取り上げなどの違法行為が蔓延しており、それに耐えかねた外国人たちが失踪しているというのだ。
しかし、出井氏はこうした報道に対して懐疑的だという。
「確かに、一部の企業による外国人技能実習生の人権侵害は否定できません。しかし、私が外国人労働者の現場を取材した印象では、10年前と比べて、パスポートを取り上げるようなブラック企業はかなり減ってきています」(出井氏)
では、なぜ彼らは失踪するのか。一番の原因は賃金の問題だ。
「外国人技能実習生の賃金は『日本人と同等以上』と定められていますが、実際には最低賃金レベルの報酬しか支払われていないのです。東京都の最低賃金であれば、1日8時間、1カ月22日間働いたとしても約16万円。そこから社会保険料やアパートなどの寮費を引くと、実習生の手元に残るのは10万円程度です。
一方、人手不足の日本では不法就労の外国人であっても就ける仕事がたくさんある。逃げ出してほかの仕事をすれば、技能実習生時代の2倍は稼げるのです」(同)
深刻なのは、これが最低賃金しか支払わない企業側だけの問題ではないことだ。
企業は技能実習生を受け入れるにあたって、現地の外国人を送り出す斡旋機関や日本に来た実習生を監理する団体に、紹介手数料や管理費などの名目で多額のお金を支払っている。そのため、この制度を利用することによる金銭的負担が重くなり、実習生に対しては最低賃金しか支払えない事情があるという。
「外国人技能実習生の監理団体は、特に彼らを監理するわけでもなく、実質的には実習生を斡旋するだけ。失踪したとしても受け入れた企業側の問題にされますし、団体からお金が返ってくることもありません」(同)
外国人技能実習生については、監理団体の上に制度を統括している「国際研修協力機構(JITCO)」という公益財団法人があり、監理団体や受け入れ企業から会費を徴収している。
企業側とすれば、外国人技能実習生を受け入れる費用は日本人を雇うのと大差ない上に、実習生に支払う賃金はピンハネされているも同然なのだ。
■外国人労働者に見放されれば崩壊する日本
このような外国人技能実習制度について、いまだ改善の議論すらされていないのが現状だ。それどころか、昨年11月には実習生が受け入れ可能な職種に「介護」が追加されることが決まった。
また、外国人技能実習生に対する人権侵害の監視を強めるという名目で「外国人技能実習機構」という機関が新たに設立されるが、出井氏が言うように、外国人技能実習生の失踪と人権侵害には明確な因果関係があるわけではない。
「厚生労働省が今年8月に発表した『外国人技能実習生の実習実施機関に対する平成28年の監督指導、送検の状況』では、70.6%の受け入れ先企業で労働基準関係の法令違反があったと報告されています。
ところが、この法令違反には安全衛生関係や健康診断の実施など、人権侵害とは直接関係ないものが多く含まれている。法律を厳密に適用すれば、日本人だけの企業であっても、かなりの割合で何かしらの法律違反は見つかりますから、このデータは失踪問題に対してはあまり意味がないといえます」(同)
さらに深刻なのは、問題だらけであるにもかかわらず、もはや外国人技能実習制度なしには日本の各産業がサービスの質を担保できなくなっていることだ。
「日本のように、至るところに24時間営業のコンビニや飲食店がある先進国は、ほかにありません。農業も漁業も、日本人以外の安価な労働力に頼らざるを得ない。こうした現状を日本人がもっと意識して、社会のシステム自体を変えていかないと、この問題は解決しないでしょう」(同)
もっとも、その前に「日本が終わる」可能性も否定できない。出井氏によれば、「各国の経済成長に伴い、外国人が日本に出稼ぎに来るメリットが薄まっている」という。
日本で就労している中国人は12年末に11万1000人だったが、15年には8万9000人に減少している。外国人技能実習制度に支えられている日本は、外国人労働者に見放されてしまえば崩壊の道をたどるかもしれないのだ。
(文=鉾木雄哉/清談社)
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