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9月末とウワサされる、アメリカ経済破綻の「ダブルXデー」 政府機関の閉鎖、そして債務不履行へ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52714
2017.08.29 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
世界最大の経済大国アメリカで、予算不足に伴う政府機関の閉鎖(シャットダウン)や国債のデフォルト(債務不履行)といった経済的な大混乱が起きるリスクが急浮上してきた。
議会共和党の執行部がトランプ大統領に対する党内の不満を抑え切れず、混乱の回避に必要な2つの法案を可決できない恐れが強まっているからだ。
仮に、こうした混乱が現実になれば、影響は米国内にとどまらない。6月末時点で、米国債を、中国が1兆1465億ドル、日本が1兆908億ドル(120兆5445億円)それぞれ保有しており、元利払いを受けられなければ、両国は資金繰りで大きな影響を受けるだろう。
トランプ政権は、大統領選の正当性が疑われているロシアゲート問題に続き、トランプ大統領自身の人種差別的な言動に伴う米世論の批判の高まりから政治的な窮地に立ち、支持率の低下や経済界の離反に苦しんでいる。
加えて、新たに経済面で大きな混乱を招けば、政権発足から1年と経たない段階で、その存立基盤が大きく揺らぐことになるだろう。
■第一の危機は「政府機関の閉鎖」
政府機関のシャットダウン回避のタイムリミットは、現会計年度の末日である9月末。それまでに、新たな予算の立法措置を講じられなければ、シャットダウンが現実の問題となる。
米国では、オバマ政権下の2013年10月、暫定予算を9月末までに成立させられず、ほぼ18年ぶりの連邦政府機関の一部閉鎖が起こった。
当時の状況をまとめた行政管理予算局(OMB)のリポートによると、全米各地の国立公園やワシントンの博物館群が閉鎖され、観光業を中心に大きな影響が出た。また、食品安全性検査の遅滞、輸出入ライセンスの発給停止、個人・中小企業向け融資の停滞、40億ドルにのぼる税還付処理の遅れ、約85万人の職員の自宅待機と給与遅配などが生じ、消費と経済に類のない悪影響を及ぼした。
当時のOMB局長はレポートの発表に際し、「政府シャットダウンによる影響・コストは深刻で幅広い分野に及んでおり、自らの手で自国に傷を負わせるような事態は二度と起こしてはならない」とコメントしたほど、事態は深刻だった。
ところが、現在の最高責任者であるトランプ大統領は、まったく事の重大さを理解しているフシがない。8月22日の集会では、メキシコとの国境に壁を建設するという大統領選時の公約実現を、政府機関の閉鎖回避よりも重要視する姿勢を示し、多くの米国民を戸惑わせている。
■第二の危機は「米国債のデフォルト」
より深刻な問題であるデフォルト回避のタイムリミットは、ギリギリで9月中、下旬だ。
米国では、連邦政府の債務上限(約19兆8000億ドル、約2160兆円)が法律で決められているが、今年3月にこの水準に到達。ここ数カ月、米財務省は借り換えによってなんとか資金繰りを続けてきたが、それも限界に来ている。
シンクタンクの超党派政策センター(BPC)は、早くから「10月2日にも政府の支払いが滞る」と警告していた。このデフォルト回避のためには、議会が9月中、下旬までに債務の上限を引き上げる法案を可決する必要がある。
実は、こうした債務の上限問題は、これまでも共和・民主の米2大政党の対立が原因で、何度も顕在化しかけたことがある。しかし、米国債のデフォルトが引き起こす世界経済への悪影響は計り知れないため、危機のたびに両党が妥協することで、これまでは何とか回避されてきた。
ところが、今回はこれまで以上に深刻な事態とみられる。というのは、共和党指導部が先のオバマケア廃止法案の成立に失敗したことから、トランプ大統領との対立が激化しているからだ。
「自由議員連盟」を率いるマーク・メドウズ下院議員 photo by gettyimages
上下両院とも共和党が過半数の議席を占めているものの、共和党内で40人近い議員が属する保守強硬派「自由議員連盟(フリーダム・コーカス)」が、オバマ政権時代に続いて債務上限引き上げ法案に反対する可能性もある。
自由議員連盟が反対した場合、民主党の一部議員を切り崩して支持者を得る必要があり、それはトランプ大統領にとっても、共和党指導部にとっても、ハードルの高い課題とみられている。
債務上限の引き上げ法案の可決・成立は、トランプ大統領のコアな支持層である白人貧困層だけでなく、市場関係者や経済界、富裕層の一部など幅広い層に評価されてきたトランプ大統領の選挙公約(大規模なインフラ投資と大型減税)の実施にも不可欠だ。債務の上限を大幅に引き上げなければ、公約は絵に描いた餅になる。
政権発足から1年持たずに、トランプ政権は早くもレームダック化するのか。世界経済のかく乱要因にもなりかねないだけに、向こう約1カ月は、米政府の来年度予算措置と、債務上限の引き上げをめぐる2つの法案審議の行方から目が離せない。
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