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健康寿命が長くなれば年金を支給しなくて済む?(写真:時事通信フォト)
年金75歳繰り下げ受給で“夫婦年額489万円”に騙されるな
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170825-00000002-moneypost-bus_all
週刊ポスト2017年9月1日号
アベノミクスの成長戦略の中核に位置づけられているのが「健康長寿社会」という言葉だ。
「日本は世界に冠たる平均寿命の長い国になったものの、『健康寿命』は平均寿命より6〜8歳低いと言われている。私が目指すのは、同じ長寿でも病気の予防などに力を入れることで、健康な体の維持を重視する社会だ」(2013年4月19日安倍晋三・首相の「成長戦略スピーチ」)
「健康寿命」は自立して健康に生活できる年齢のことで、日本は男性71.19歳、女性74.21歳(内閣府の平成28年版高齢社会白書)で世界トップレベルだ。この健康寿命をもっと長くするから、75歳まで年金を我慢して働き、“夢の割り増し年金”をもらいましょうと言いたいのだ。
年金繰り下げ制度が改定され、75歳受給が選択できるようになれば(現行では70歳まで)、夫婦2人の標準世帯で年間約266万円(65歳受給の場合)の年金額が489万円まで大幅に割り増しされる計算だ。年金ざっと500万円なら夢のような老後に思える。頑張って75歳まで働こうと考える人が増えるだろう。
しかし、それこそ政府の思う壺なのだ。年金制度に詳しい「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。
「75歳受給を選んでも、男性の平均寿命(約81歳)から見ると年金を6年しかもらえない。額面は多いが、受け取る年金総額は自分が払い込んだ保険料より少ない払い損になる可能性が高いのです。それに世帯収入が増えると医療費の窓口負担や高額医療費の自己負担の上限もハネ上がって出費が非常に増えてしまう」
それだけではない。たとえ健康を維持してフルタイムで75歳まで働いても、再雇用では給料が現役時代の半分以下に減るケースがほとんどだ。
74歳までは年金を我慢して退職金など貯金を取り崩しながら生活することになる。仮に、夫婦の一方でも介護や入院が必要になれば即、老前破産の危機に直面してしまう。75歳でようやく割り増し年金をもらっても、年金総額は支払った保険料より低い。
日本の個人金融資産1800兆円の6割は高齢者世帯が持っている。受給額割り増しをちらつかせて“高齢者が資産を使い果たすまでは年金を払わない”というのが「健康長寿社会」の正体なのだ。
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