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爆買い依存がますます進行する、百貨店の「不健康な体質」 国内消費がどうしても伸びない…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52667
2017.08.23 磯山 友幸 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■単月で過去最高の外国人観光客
7月は夏休みシーズンとあって、日本を訪れる外国人が急増する月だ。最近外国人に人気の「桜」のシーズンである4月を毎年上回る。今年の7月も訪日外国人数は単月で過去最高を記録した。
JNTO(日本政府観光局)の推計によると、今年7月の訪日外客数は268万2000人と、前年同月を率にして16.8%、人数で約40万人上回った。これまで単月で最高だった今年4月の257万8970人を上回った。京都や日光といった外国人に人気のある著名な観光地ばかりでなく、日本の田舎でも外国人の姿を見かけるようになった。
そんな中でも中国人観光客が再び目立つようになってきた。大型クルーズ船で寄港して日本に上陸する中国からの観光客が増えていることも一因だ。
7月の訪日外国人を国別にみると、中国がトップで78万8000人と前年同月比6.8%増加。次いで韓国が64万4000人で、44.1%も増えた。このところのウォン高円安もあって、日本を訪れる客が急増している。3位は台湾で44万6600人と12.5%増加した。中国、韓国、台湾とも単月としては過去最高の人数を更新した。
訪日客数全体に占める中国からの来訪者の割合は29.1%。今年4月の20.5%から急回復し、ピークだった昨年8月の33%に近づいている。
中国からの外客数増加に伴って、陰をひそめていた「爆買い」も復活する気配を見せている。日本百貨店協会がまとめた7月の外国人観光客売り上げは227億6000万円。今年4月の221億6000万円を上回って、過去最高を記録した。免税手続きをした外国人客数も35万7000人と、4月の33万1000人を上回って最高を記録している。
百貨店協会によると、免税手続き客の国別上位は、1位が中国本土、2位が香港、3位が台湾、4位が韓国となった。中国人観光客の増加が追い風になり、免税買い物額も増えたわけだ。
ただし、買い物の傾向は大きく変わっている。かつての「爆買い」の局面では高級ブランドのバッグや宝飾品などハイエンドブランドがトップだったが、7月も人気の1位は引き続き化粧品だった。また、2位には婦人服飾雑貨が続いた。3位にこそハイエンドブランドが入ったが、4位は食品、5位は婦人服といった具合だった。
その結果、一人当たり単価はかつてほどではない。2014年12月には8万9000円を付けた客単価だが、今年7月は6万4000円。2016年7月に5万2000円まで下落していたことを考えれば、だいぶ持ち直してきたとは言えるが、低価格品に大きくシフトしている様子が分かる。
それでも国内の消費不振が続いている中で、外国人観光客消費の持つ意味はどんどん大きくなっている。
■消費の外国人観光客依存、さらに進む
日本百貨店協会が発表した7月の全国百貨店の売上高は、前年同期比マイナス1.4%と2カ月ぶりにマイナスになった。前月は1.4%増となるなど、ようやく国内消費に底入れの兆しが見えたかと思われたが、再びマイナスに沈んだ。特に大都市圏では、10都市合計の売上高が5カ月ぶりのマイナスになった。
消費の牽引役でもある「美術・宝飾・貴金属」部門は4カ月連続でプラスになったが、伸び率は6月の7.9%から7月の3.4%へと大きく鈍化した。
対象店舗数は違うが、全体の売上高は5469億円だったのに対して、外国人観光客向け免税売上高は227億6000万円と4.2%を占めるようになった。
また、全体の売上高から外国人売上高を引いた「実質国内売上高」は12カ月連続でマイナスとなっている。百貨店の売上が一段と外国人観光客依存度を高めていることを示している。
政府が8月14日に発表した今年4-6月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比プラス10%となり、年率にすると4.0%という高い成長となった。民間消費が3.7%増、民間住宅が6.0%増、民間設備投資が9.9%増といずれも高い伸びを示した。
もっとも、百貨店の売上高を見る限り、日本経済を国内消費が牽引しているとはなかなか言い切れない状況が続いている。特に7月の百貨店売上高が腰折れしているところを見ると、7-9月期のGDPは厳しい数字になることも予想される。
■国内消費の先行きは厳しい
安倍内閣は経済の好循環を掲げ、大手企業の経営者に賃上げを呼びかけている。また、毎年、法定の最低賃金を大幅に引き上げており、東京などでは最低時給1000円時代が目前に迫っている。
緩やかながら賃金は上昇し始めているが、それにもかかわらず、消費が盛り上がらない。2万円を回復した日経平均株価も再び1万9000円台に戻って一進一退を続けており、株価上昇による「資産効果」の消費も生じていない。
百貨店売上高の中では、「資産効果」が現れやすい「美術・宝飾・貴金属」部門がプラスとなっているものの、アベノミクス開始直後のような2ケタの伸びにはなっておらず、消費に勢いはない。
この秋には年金保険料率がさらに引き上げられることが決まっており、個人の可処分所得は一段と減少する。雇用情勢など景気に明るさは見えるものの、消費増にはなかなか結びついておらず、政府が思い切った消費刺激策などを打たないと、百貨店の国内売り上げはさらに下振れするリスクもある。
そうなれば、中国人観光客を主とする外国人消費への依存度は、さらに高まることになるだろう。
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