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間違った介護や徘徊老人への対応、極めて危険…大怪我をさせ多額の損害賠償支払うハメに
http://biz-journal.jp/2017/08/post_20276.html
2017.08.22 文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表、保険・介護・医療ジャーナリスト Business Journal
先日、筆者は徘徊高齢者を発見した。保護から家族に出会うまで、約30分の超スピード解決となった。わずかの時間とはいえ、得た教訓は大きいものだった。徘徊は社会問題として、たびたび取り上げられる。一方で、専門家の意見を交えて多角的に徘徊の問題を論じられることは少ないように思える。そこで今回は包括的にそれを考察する。
■“白い人”と遭遇
街はようやく眠りから目覚めようとしていた。筆者はコンビニエンスストアで、ぼんやり外を眺めながらコピーをしていた。早朝の街を行き交う人は、ほとんどいない。すこし先の横断歩道を、白髪頭の“白い人”がヨタヨタとしながら渡っているのが見えた。「危なっかしいけど、青信号の間に、渡りきることができるのだろうか?」と気になりながらも、コピーを続ける。わずかばかりの枚数のコピーは、すぐに終えた。
「先ほどの“白い人”はどうなっただろう?」
私はその人をなにげなく探したが、横断歩道にもうその姿はなかった。「無事に渡ったんだ」とほっとしたのも束の間、横断歩道から10メートルほど先で、“白い人”がうずくまっている。うずくまっていたのは、歩き疲れたからなのか、急激な体調悪化か。片付けもそこそこに“白い人”の元へ全力疾走をした。春とはいえ、薄手のコートを羽織らないとまだ肌寒い。それなのに“白い人”は、半袖・七分丈の服装だ。
どれぐらいの距離を“白い”人が歩いてきたのかわからないが、あの調子なら結構な時間が、かかっているに違いない。となると、高齢の方なので、寒さで体力を奪われていることは十分に考えられる。ともかく、ただのお散歩ではないようだ。近づいて、その“白い人”がステテコ下着姿であることに気づく。
少しの休息で回復したのか、自分で起き上がろうと何度かトライもされてはいるが、身長の割には結構な重量感があるからか、立とうとしても、なかなか立ち上がれずにいる。私の頭の中に徘徊という言葉が駆け巡る。走りながら、「どこにも行かないで」と心の中で叫ぶ。
同時に、「困った」と思った。私は介護職員初任者研修の資格を持っているが、徘徊老人を見つけた時の対処方法は、授業にはなかったからだ。「どう話しかければいいのか。何を言えばいいのか」と戸惑いながら、“白い人”の前に立った。だが、それは杞憂だった。自然に座り込み、「おはようございまーーす」と声を掛けた筆者に、天使のようなかわいい笑顔を返してくださった。65歳以上のお歳だろうか。
「大丈夫ですか?」と聞いて、「しまった」と思った。経験上、「大丈夫ですか?」と聞くと、「大丈夫」と答える方が多いからだ。ぱっと見では、特にケガをしている様子もない。「どこか痛いところはありませんか? 寒くはないですか? 転ばなかったですか?」と、一つひとつ聞き直した。そのたびに、首を振っては、ただニコニコとされている。どうやら障害をお持ちで、会話を交わすことは難しいようだ。
「やはり徘徊中だ」と確信した。ラッキーなことに2軒隣が警察署だ。自力で立つのが難しいことがわかっているので、「ここに居てくださいね。すぐに人を呼んできます。すぐに戻ってきます」と何度も言い、警察に駆け込んだ。「徘徊中の下着姿の高齢者がうずくまっている」と聞いた警察の方も、筆者とともに全速力で現場に戻る。たった2軒先なのに、果てしなく遠いように思えた。
筆者たちの顔を見ても、その方(以下、Aさん)はニコニコと笑っていた。警察官は「おはようございます」と声をかけながら、健康状態に緊急性があるかどうかを見極めているようだった。そして、「ここは寒いから、すぐ隣に警察があります。そこに行けば暖かいから、移動しましょうか?」と促した。ありがたいことに、にっこり笑って手をさしのべてくれた。
手をさしのべられたら、その手を握り、体を起こすために引っ張り上げたいものだ。しかし、これは非常に危険だ。大人対大人で、しかも体重のある人が座り込んでいるのを助けようとした場合、助けようとした人が引きずられ、ともに倒れ込むか、座り込んでいる人が後ろに転倒してしまい、頭を打つなどして大怪我を引き起こしかねない。「良かれ」と思ってしたことが、相手に大怪我をさせてしまい、損害賠償を請求されるような事態になっては、本末転倒になってしまう。
■自転車保険、加入検討時の注意事項
ちなみに、日常生活中に誤って第三者にケガをさせたり、壊してしまった場合に備える保険商品としては、損害賠償責任金が支払われる「個人賠償責任保険(特約)」、保険会社によっては「日常生活賠償特約」などが発売されている。
前者は一般的に自動車保険や傷害保険、火災保険などの特約として契約するが、クレジットカードにセットされている場合もある。最近では2013年、自転車に乗っていた小学生が女性に重篤なケガを負わせた裁判で、小学生の親に9500万円の賠償金を命じる判決が下って以来、個人賠償責任保険は脚光を浴びるようになった。
これに伴い、自転車保険の加入が急増したが、自転車事故の場合に補償額が2倍になるものや死亡保障があるもの、一般的にはケガによる入院・通院などの医療保障に個人賠償責任保険がセットされている。
自転車保険に加入する前に、覚えていただきたいことがある。すでに加入している自動車保険や火災保険などに、自転車保険の補償内容である個人賠償責任や傷害保険がセットされているケースもある。注意したいのは、いくら複数社に加入していても原則、補償されるのは、法律上の賠償額だ。保険料の無駄を省く意味でも、加入している自動車保険などの内容をチェックしていただけたらと思う。
また、新規に自転車保険に加入を検討する場合、すでに加入している自転車保険などに個人賠償責任保険や傷害保険をオプションでセットした場合の保険料と補償内容を比較することを、お勧めしたい。というのは、自転車保険の個人賠償保険は、おおむね補償額の上限が設定されているのに対し、オプションとしてセットした場合の個人賠償保険の補償額は国内無制限の会社が一般的だからである。
いずれにせよ、「何のために」という目的をきちんと決めて、補償も保険料も無駄なく、漏れのないようにすることが肝要だ。
■ボディメカニズム
介護の話に戻ろう。座っている人の脇の下に両手を回して、上に引き上げてみると、びくともしないことに気付く。何度も同じことを繰り返したところで、結果は同じだ。筆者は介護職員初任者研修を修了しているが、その際に「ボディメカニズム(=体の動き)」を活用した介護の仕方を習った。
普段はまったく気にしたことはないだろうが、人間が座っている姿勢から立ち上がろうとする場合、実は一度、体を斜め前方に倒してから立ち上がるものだ。試しに、まっすぐ頭上に引っ張られるように立ち上がってみてほしい。それが困難であることがわかるだろう。
介護にもそのボディメカニズムを活用する。介護者が足を肩幅程度に広げ、腰を落とし、介護を受ける方のそれぞれの脇の下に介護者の手を入れる。介護者を斜め前に倒し、すぐに上に引き上げる。スムーズに立ち上がらせるためには、介護を受ける人に自然体でいてもらうことが望ましい。そのためにも、一連の流れは、伝える必要がある。Aさんが力を抜いてくれたおかげで、立ち上がりもスムーズにできた。
警察官と筆者は右と左に分かれて、体を支えながら警察署へ向かった。Aさんは、よほど心細かったのか、その間、ずっと私の手を握り締めておられた。警察官と筆者は「寒くないですか?」「よくがんばりましたね」「もう安心してくださいね」「警察署に行けば、すぐに暖かりますよ」「すぐそこだから」「もう大丈夫ですよ」と交互に声を掛け合い、背中をさすり続けた。
のちに知った話だが、その警察署では高齢社会を見据え、徘徊老人が増えることを想定し、署内で共通の認識を持って対応を心掛けているようだ。徘徊の連絡を受けて駆けつけても、警察官の制服を見ると緊張して、徘徊を否定したり、いきなり怒り出す人も少なくない。そこで、ソフトで自尊心を傷つけない対応を心掛けているとのことだった。
警察署にいくと、すでに数人の警察官が待機していた。Aさんを座らせ、警察官が「こんにちは」「どこから来られましたか?」「お名前は?」と中腰に座り、目線の高さをAさんの目線に合わせながら、ゆったりとしたペースで聞いていた。
会話ができないAさんは、予想通り何を聞いてもニコニコとしているだけだ。ポシェットをきちんと斜めに掛けていたAさんの身元は、ポシェットの中に答えがあるのかもしれない。会話ができない高齢徘徊者の対応も、今後は考えていたほうがいいのかもしれない。警察署内の動きが慌ただしくなった。筆者も発見時の様子や住所などを聞かれた。
そうこうするうちに、70歳ぐらいの女性が血相を変えて、警察署に飛び込んで来た。「いたぁ! 良かったぁ」と言うと、その場に座り込んだ。「こんなスピード解決も珍しい」と警察官が言うぐらいの素早い解決となった。
それにしても、たまたま筆者が横断歩道を歩行中のAさんの姿を見ていたこと、Aさんがステテコ姿だったこと、そして介護関連の仕事をしていたために徘徊と気がついたが、これが下着姿ではなく、座っているAさんを見たら徘徊とは思わなかった。徘徊中かどうかを見極められるのは、本当に難しいことだと痛感した。また、今にすれば、警察署についてから、温かい飲み物や上着などを用意してもらえたら良かったと反省しきりだ。
次回は、徘徊中の方に遭遇したときの対応の仕方や、最先端の徘徊感知機器について伝えたい。
(文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表、保険・介護・医療ジャーナリスト)
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