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日立と東芝の最終損益の推移(写真:フジサンケイビジネスアイ)
電機業界の名門、日立と東芝 ライバル2社の命運分けた「トップの覚悟」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170818-00000007-fsi-bus_all
SankeiBiz 8/19(土) 7:15配信
電機業界の名門としてしのぎを削ってきた日立製作所と東芝の明暗がくっきりと分かれている。東芝は不正会計問題、米原子力発電事業の巨額損失と不祥事が続き、存続の危機にひんする一方、日立はかつての不振から復活し、利益規模は国内電機大手でトップだ。ライバル2社にこれほどまでに大きな差が開いたのはなぜか−。
英国ウェールズ北西部のアングルシー島。英本土と鉄道・道路橋で結ばれ、首都ロンドンから特急列車で4時間ほどのこの島は、英国の保養地の一つで夏場は海水浴やキャンプをする家族連れでにぎわっている。羊や牛の放牧地が一面に広がる島の北部の一角、ウィルヴァ・ニューウィッドと呼ばれる1000エーカー(約400ヘクタール)ほどの区画が日立の計画する原発の予定地だ。
「島民が誇れる世界水準の原発にする。地元企業や若者に質の高い就労の機会の提供を約束する」。同社の原発開発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーのダンカン・ホーソーン最高経営責任者(CEO)は5、6月の住民公開ヒアリングでこう表明した。来年には建設認可が下りる見通しで、2020年代前半の稼働に向け計画は着々と進んでいる。
一方、東芝の綱川智社長は5月の記者会見で「英国政府も含めたステークホルダー(利害関係者)と相談して株式売却も含めて検討したい」と力なく語った。英北西部で原発新設計画を進めたが、米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の巨額損失を受け、英国も含む海外原発事業から撤退せざるを得なくなった。
日本政府が練る原発産業の再編に向けた戦略も「核になるのは日立」(エネルギー関係者)だ。東芝はコーポレートガバナンス(企業統治)が不安視されており、東芝が原子炉を建設した中部電力浜岡原発1、2号機(静岡県)の廃炉作業も日立が受注したもようだ。国内原発産業の地図が塗り変わろうとしている。
両社の明暗は原発事業にとどまらない。「利益は着実に右肩上がりだ」。日立の東原敏昭社長は5月の会見で2017年3月期に2312億円だった最終利益を2年後に4000億円超にすると強調した。これに対し、東芝は17年3月期に国内製造業で過去最悪の9656億円の最終赤字を計上。上場廃止となる2期連続の債務超過を回避するため、利益の約9割を稼ぐ半導体メモリー事業の売却手続きを進めている。
両社の命運を分けたのはトップの覚悟が大きい。
「こんな増資は認められない。日本に帰れ」。09年に日立の会長兼社長に就任した川村隆氏はその年末に米国で機関投資家に罵声を浴びせられた。
今や業績が好調な日立だが、リーマン・ショックの影響で09年3月期には当時製造業で過去最悪の7873億円の最終赤字となり経営危機に陥った。この危機対応で抜擢(ばってき)されたのが子会社会長に転出していた川村氏だった。薄くなった自己資本をてこ入れするために世界を回って金策に奔走したが、「経営陣への市場の信頼がなきに等しかった」と振り返る。
厳しい現実に直面した川村氏は大規模な構造改革を断行した。リストラで赤字を止血し、中小型液晶やハードディスクドライブ、テレビの自社生産など浮き沈みの激しい汎用(はんよう)品事業から次々と撤退。日立の技術力を生かせる社会インフラやITを中核事業に据えて経営資源を集中させた。
メンツにこだわらぬ思い切った改革の象徴的な事例が三菱重工業との火力発電設備事業の統合だ。14年に三菱重工が65%、日立が35%出資する会社を発足させて両社の火力事業を統合した。
だが、日立の主力事業の一つで、川村氏自身の出身母体だっただけに、統合には「日立が助手席。これでいいのか」と反対論が強かった。川村氏は「世界の“列強”と戦うにはこの選択肢しかない」と粘り強く説明して回ったという。
東芝もリーマン後の09年3月期の最終赤字は3988億円と巨額で、本来は会社を構造改革で立て直すべきだった。だが、当時社長だった西田厚聡(あつとし)氏が「財界総理である経団連の会長に意欲を示し、条件の業績向上にこだわってウミを出し切れなかった」(関係者)。さらに業績不振を隠蔽(いんぺい)するため部下に「チャレンジ」と称して無理な収益改善を要求したことが不正会計の温床となった。
「公家の東芝、野武士の日立」。両社はこう評される。財界総理を輩出してきた東芝は財界活動で培った“コネ”にモノをいわせた調整力が武器で、東京電力などから一番に仕事が回ってくるのが常だった。これに対し日立は財界から距離を置き、独自技術と品質にこだわり続けた。
しかし、今や東芝の威信は地に落ち、政府や財界の視線も日立に集まっている。川村氏は日立会長時代に経団連会長を固辞したことで知られるが、東京電力ホールディングス会長に就任。経団連の次期会長候補には日立の中西宏明会長の名前が挙がる。両社の立ち位置が入れ替わる皮肉な現状は東芝の財界活動への固執があだとなったことも浮き彫りにしている。(万福博之)
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