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017年8月2日 渡部 幹 :モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授
日本で進む国際的引きこもり化、留学したい大学生たった1%
!?
日本の若者の引きこもり化が加速!?
「海外なんて行きたくない」
海外のことは何でもネットで分かる時代。英語だってネットで学べるから、わざわざ海外に行こうと考える若者は減っている。しかし、情報を集めることと、実際に海外で「体験」をすることの間には、大きな差がある
先日、日本の某国立大学の副学長が、筆者の勤めている大学を訪問され、数日にわたってお話を伺う機会を得た。
その先生は、若い時からアメリカに渡り、アメリカの一流大学で博士号をとって、今も活躍している優秀な方だ。当然ながら英語にも不自由せず、本学でも多くの人とコミュニ―ションを取っていた。
彼と同様に筆者も米国の大学で博士号を取り、日本の大学に勤めた経験があるので、彼との会話は必然的に、日本や他の国の大学の国際比較になったが、その中で彼が印象的なことを語っていた。
「先日テレビを見ていたら、株のオンライントレードで数億を稼ぎ出している若い個人投資家の特集をしていたんですよ。独学で株を始めて、ほぼ引きこもりのような生活をしながらやっているんですが、才能があるんでしょうね。大成功しているんです。その彼がインタビューで、得たお金を使って海外旅行などには行かないんですか、と聞かれたら、『いえ、興味ないですから』と答えていて、へえ、と少し驚いたんです」
筆者もそういう人がいるのは聞いている。似たような話はネットでも見かけるため、彼の話を聞いても「そうか」と思うだけだった。相槌を打っていると、彼はこう続けた。
「実はうちの学生も同じなんですよ。とても優秀で、アメリカの大学なんかに行ったら伸びるだろうな、と思っている学生に、海外留学する気はない?と聞くと、『いや、海外のことはネットでほぼわかるし、英語だって日本で勉強すればいい。それに、実際に行って何の得があるんですか?』と逆に質問されてしまいましたよ」
それで思い出した。近年、米国の一流大学への留学生は大半が中国人で、それ以外で目立つのはヨーロッパと韓国だという。日本人の数は激減している。彼は続けた。
「それでね、こんなこと言うのはその学生だけなのかと思って、教えているクラスで、『海外で勉強してみたい人、手挙げて』と言ったら、200人以上いるクラスで2〜3人だけしか手を挙げなかったんですよ!ビックリしたなー!」
情報はなんでもネットで手に入る
海外に行く意味を見出せない現代
筆者の若い頃は、海外、特に欧米に対して、漠然とした憧れがあった。インターネットがなかったため、情報源は新聞や雑誌、そして経験者の談話しかなかった。留学を志してからは、毎日のように本屋に行って留学雑誌や関連書物を漁っていたものだった。
今は、本当に情報を得るのが楽になっている。ネットで検索すれば大抵の現地情報は手に入るし、経験者のブログやフェイスブックも簡単に探せる。
さらにその先生がある学生に聞くと、こういう答えが返ってきた。
「情報ならばネットで手に入るし、いろんなメディアで海外とやり取りもできます。文字だけでなく、スカイプやLINEでの会話も可能。買いたいものも、アマゾン等で手に入れられます。食べ物だって、日本でだいたい食べられるし、日本の食べ物の方がおいしいですし。南の島にちょっとリゾートに行くならともかく、わざわざ日本と変わらない規模の海外の都市に住んで得になる理由はないですね」
情報という観点からいえばその通りだと思う。そして語学留学程度ならば、それこそ高いお金を払ってする必要などないだろう。安価なスカイプレッスンの英会話教室を活用するほうが、よっぽど効率的だ。その意味では、この学生の言うことに理はあると思う。
だが、実際に海外に留学し、現在も海外に暮らすものとしては、それだけにとどまらないものがある。それは現地でやらなくてはならない「問題解決の体験」だ。
大きなものから小さなものまで、私たちは日々意思決定を行っている。今日の昼食から、進路の決定、就職先の希望、ビジネス上の重大な決定まで、さまざまな意思決定を行わなくてはならない。その意思決定のほとんどは「問題解決」のために行われる。
海外に実際に住み、その文化の中で(お客さんとしてではなく、現地の人と同様に)、問題解決のための意思決定を行うと、自分が日本で学んできた日本のやり方や考え方が通用しないことがたくさんある。最初は、それがわからず、困ったり、失敗したりする。そのような体験を通じて、私たちは徐々に、意思決定の仕方を覚えていくのだ。
情報だけでは世界で
ビジネスができない理由
日本以外の環境や文化では、そこで培われた、日本とは違う考え方や問題解決の方法、意思決定の仕方があり、それらの背後にはきちんと意味がある。失敗しない意思決定をするには、その意味を理解することが重要となる。そのためには、ネットによる情報取得だけでは、全然足りない。現地での体験が必要なのだ。
筆者はたまに日本に戻ると、日本が素晴らしい国であることを実感する。外国より優れているものはたくさんある。だが、いつでもどこでも日本人のやり方が最高かというと、それは違うと思っている。日本人のやり方が最高なのは、日本という文化、文脈の中だけだ。違う文化、違う文脈にいれば、違うやり方が必要となる。そしてそれは体験によってしか身に着かないと思っている。
前回、この連載(記事はこちら)で、エアアジアCEOのトニー・フェルナンデス氏が、インド系ASEAN人起業家フォーラムで講演をした際に披露したエピソードを紹介した。この経済会議ではほかにも、すでに様々な国でビジネスを行ったインド系の人々の体験談が披露されていた。
そこで驚いたのは、さまざまなインド系ASEAN人が、世界のさまざまな場所で、さまざまな体験をすでにしていて、それを共有しようとしていることだ。そのうえで彼らは、大枠のビジネス戦略について合意を得ようとしていた。
シンガポールのシンクタンクの予想によると、2035年時点でのGDPの世界1位は中国で、2位に米国、3位がインド、4位が日本で、5位にはインドネシアが入るとしている。つまり、世界GDP大国ベスト5のうち4ヵ国がアジアの国だ。
そして、そのうち日本はすでに低成長期に入っており、インド系ASEAN人が新規参入できる市場は少ないと予想する。中国は、最近鈍化してきたものの、経済成長は続けており、かつ人口が多いため、莫大な内需がある。しかし政治的な理由から、外国人、特に中国語の話せないインド系が中国市場に新規参入するのは難しいと考えている。
ならば、彼らのターゲット市場は、インド、インドネシア、そしてASEAN諸国でのビジネス展開だ。マレー語とインドネシア語はほぼ同じだし、マレーシアとフィリピン、シンガポールでは英語が通じる。インドとの橋渡しもできる。
しかし、現時点で彼らに欠けているのは、異文化での「体験」だ。外国でビジネスを行う際には、その文脈に即した意思決定が必要だが、その経験が足りない。同胞の「体験談」を聞くだけではダメなことを彼らは分かっている。
その経済会議の目的は、さまざまな国々で活躍するインド系ASEAN人のコミュニティを活性化し、若いビジネスパーソンの交流を進めて、さまざまな体験ができるように、今からネットワークを作ることにある。それが約20年後には花開くと予想しているのだ。
ASEANを含め、諸外国は自分たちの文化の外にあるチャンスを見ている。翻って日本はどうか。筆者には、少し内に籠りすぎのように見える。ニュースを見ても国内のニュースばかりで、CNNやBBCがトップに持ってくる国際情勢や世界市場のニュースの扱いは比較的小さいように思える。
目先の得や損ではなく、将来のビッグサクセスへの投資として、「体験」は必要なものだと筆者は考えている。日本人が今後もこのまま「内向き」ならば、やがて「国際的引きこもり」になってしまうかもしれないと、筆者は少し不安に感じている。
http://diamond.jp/articles/-/137184
日経ビジネスオンライン
どう生きる?定年退職男が悩む「終活」の実態 退任後1カ月で女房と2人で3000kmをドライブしたワケ
お悩み相談〜上田準二の“元気”のレシピ
2017年8月2日(水)
上田 準二
ユニー・ファミリーマートHD相談役、上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、同窓会への出席をためらう64歳の男性の悩み。役員などに出世した同期と比べて早く定年退職したことを引け目に感じている相談者に、上田さんは「あなたこそ人生の大先輩だ」と教えを請いたいという。そのワケは?
悩み:「同窓会に顔を出すのが、怖いです」
同窓会の案内がきたのですが、60歳で定年退職した私と比べて、同窓たちは会社役員を務めているなど「友がみな我より偉く見ゆる日よ」という状態です。旧交を温めたい気持ちはあるのですが、同窓会に顔を出すと引け目を感じて、話の輪にも入れないのではないかと、出席するのをためらってしまいます。どうしたら気持ちが切り替えられるでしょうか。
(64歳 男性 無職)
大竹剛(日経ビジネス 編集):今回は、60歳で定年退職をしたという、64歳の男性からのお悩みです。同窓会に顔を出すのが怖いとのこと。どうやら、親しい同級生たちは今も会社役員を務めているなど、出世の階段を登った人が多いようですね。
そうした同級生と比べると、既に退職している自分の姿に引け目を感じてしまっているようです。きっと、ご自身も出世の階段を上り詰めたかったのに、それができなかったという思いもあるのかもしれません。社長、会長を歴任して、70歳まで現役で大企業を引っ張ってきた上田さんは、相談者から見れば、羨ましい存在でしょう。
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)
上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役):この方は、全くそんなことを思う必要はございませんよ。
大竹:ない。はっきりと言いきりましたね。
上田:僕の同期で会社に入った人間というのは、伊藤忠商事時代の同期ですよね。まあ、その大部分は60歳で定年ですよ。64〜65歳のときには、もう9割ぐらいが退職していました。役員になるというのはごく限られた人で、ほとんどは役員にならず定年を迎えるわけですから。
同期会なんかやると、皆さんだいたい来ますよね。彼らが僕に何を言うかというと、「お前はまだ現役で仕事をしていて、大変やな」と。「上田、俺なんかお前みたいに、あの仕事をやってくれ、この仕事をやってくれと頼まれたことがないから、きっちりと定年でやめられた。お前は大変やな、ご苦労さん」なんて言われるわけでね。
逆に僕は聞くんですよ。「あなたは今何をやっているの」と。いろんな答えが返ってくるよね。奥さんと温泉旅行だとか海外旅行だとか、奥さんと一緒にゴルフだとか。今まで読めなかった本を読んだりだとか。最近なんか果樹園をやっているとかいう人もいる。
「お前なんかが果樹園をやって商売をしても、倒産する」なんてからかうと、「いや、だから果樹園で利益を出そうなんてことじゃなくて、好き勝手に作っているだけだ」と言うんだよ。「今度、お前のうちに送ってやるから」と言われて、しばらくしたら本当に送ってきた。これまた、ひどくごつごつした果樹が届くんだよ、もう(笑)。
大竹:何ですかそれは。リンゴですか。
上田:リンゴだとかモモだとか、いろいろなものだね。要するに、僕なんかはそういう人たちに何を聞きたいかと言うと、自分のエピローグ、つまりは終活ってどんな生活をしているのかなんだ。残り少ない人生、どうやって生きていったらいいのか、ものすごく興味があるわけよ。
現役を早く退いた人は、終活の大先輩だ
大竹:早く現役を退いた人は、上田さんより終活の先輩なわけですからね。
上田:そうだよ。先輩どころか、大先輩だ。僕は、そういう大先輩から、どうやって自分の人生、最後のステージを豊かに過ごしているかを教えてもらいたいよ。
中には、失敗しているやつもいるわけ。さんざっぱら、あれやろう、これやろうと言って、退職金がなくなってしまったというやつもね。どうするんだよと聞けば、「いや、もう年金と息子に世話になる」なんて。気楽なもんだよな。でも、それはそれで1つの生き方だし、そういうのも含めて、僕は教えを請いたい。
そんな僕みたいな人間も多いと思うよ。巡り巡って、役員やら社長やらやってしまった人間にとっては、終活の時間はその分、短くなってしまっているわけだから。
従って、この方は何も引け目に感じることはないな。退職してしまえば、会社人生はそこで完全にリセットされるわけだし、実際、同期会なんかでは、ほとんど仕事の話なんか誰もしませんよ。会社を離れて今やっていることとか、これから何をやるか、やりたいかといった話で持ちきりだね。クルーザーに乗りたいだとか言うやつもいれば、えらい高級な外車のスポーツカーを買うやつもいる。まったく、高速道路を逆走したらどうすんのかと言いたいよ(笑)。
だけどね、現役時代にできなかったことがある人が、「これを今やっている」「これからあれをやりたい」と話しているを聞くのは楽しいんだ。まあ、老後の失敗談もいろいろあって面白いね。
大竹:人生、最後まで失敗はつきものだと。
上田:ええ、誰でも最後まで、人間ですから。女房との関係の失敗談なんかが多いよね、やっぱり。女はこうなるぞとか、うちの女房がこんなことしやがってとかね。それが結構楽しい。
大竹:上田さんが出る同期会というと、伊藤忠時代のですか、それとも大学時代のですか。
上田:大学時代のは同じ寮に入っていた寮生が多いね。これは毎年やっている。会社関係は年に2回から3回。決して役員だったとか、役職がどうだったとか、そんなようなことはお互い全く話題にすらしませんね。今日、明日、来年、自分は生きているのかといった話ばっかりですから(笑)。この相談してくれた方も、もう何も気になさらないことです。逆にあなたは、役員経験者から見れば大先輩なのですから。
大竹:終活という観点から見れば、役員をやってしまって終活のスタートが遅れるのは、むしろ不幸かもしれない。
上田:そう。もう僕なんかは、終活の新入生だから。新入生にいろいろと教えてほしいよ。
大竹:同期会、同窓会ではなくても、普段から大学とか伊藤忠とか、昔の友人とのお付き合いは多いのですか。
上田:いっぱいあります。僕なんかは、いろんな会社を渡ってきたでしょう。自分がいた会社ではなくても、取引先もいろいろあったしね。
いずれにしても、仕事で一応区切りがついた人々が集まっているわけで、会社でどういう力関係にあったとか、どんな取引関係にあったとか、まったく関係ない付き合いですよ。またそうじゃないと、お互い続きませんから。だから、こういう会には、とにかく出られた方がいいですよ。もうオープンな気持ちで気楽にね。
一番大切なのは、「心身共に健康であること」
大竹:相談役に退いた後、どんなことを心掛けていますか。
上田:一番は、心身共にできるだけ長く正常であることだと。
大竹:正常であること。なるほど、「健康であること」とは違って、「正常であること」。何やら、奥深いですね。
上田:うん。だいたいみんな70歳過ぎたら、車と一緒で体のどこかが傷むものですよ。それが当たり前です。だから心身共にちゃんと「正常であること」がいちばん重要なんだよね。中古車でも、メンテナンスをしっかりしていれば、きっちりと走れるでしょう。エンジンがかからない、タイヤが動かないなんてことにならないようにしたいものだよ。
それに、体だけじゃないよね。「心」も大切。趣味でナシやらリンゴやらを作って、売り物にならないような味だったとしても、それを作って食べていたら健康になったとかね。果物を作れるような場所に住んで、それでもうけるのではなくて、趣味としてやって心が充実していれば、それで健康になるんだよ。
大竹:ところで、上田さんは5月の株主総会で取締役を退いてから、日々、どんな生活をしているのですか。
上田:それがだね、まだほとんど毎日、会社に来ています。だけど、9月を過ぎたら、ユニー・ファミリーマートホールディングスの上期決算が出ますし、会社に来るのは半分ぐらいに減らしたい。来年になったら、もっと少なくするよ。
大竹:会社に来ないで何をするんですか。
上田:もう、これが今から楽しみなわけです。何をしなきゃいけないと思うのが何もなくて、今日はあれをしよう、来月はこれをしよう、年末はこれをしようと考えるのが、わくわくするじゃないですか。
大竹:逆の人もいますよね。会社での役割を失って、何をしていいか分からなくなって途方に暮れるという……。
上田:うん。そういう人もおるよね。定年後に急にふけちゃったとかね。ストレスがあった方が健康だったとか、何もなくなったら急におかしくなっちゃったとか。
確かに、日々の生活の中で適度なストレスというのは、必要なのかもしれないな。まあ、僕の場合、適度なストレスは女房だから(笑)。時間できて、女房に「これをやろう」と言ったら、「いや、私はそれは嫌、こっちをやる」とか言われるしね。
だけど、僕にだってやりたいことがあるから、もう強引に引っ張り出す。
女房にゴルフ一式をプレゼント、2人で1カ月で3000km走破した
大竹:例えば、奥さんと旅行したり……
上田:そう、株主総会後の約1カ月で、3000kmほど車で走りました。
大竹:1カ月で3000kmですか!すごいですね。どこへ行ったんですか。
上田:いっぱい行きましたよ。温泉へ行く途中にお寺を回ったり、自然を見たり。だけど、温泉だけでは物足りないというので、最近、ネット通販でゴルフセットとゴルフウエアとゴルフシューズをぱっと注文して、女房にプレゼントしたんだ。
女房が届いた荷物を見て、「ちょっとこれ、女性物が届いたんだけど」と言うから「お前がやるんだよ」とね。「では、ゴルフ教室に行く」と言うもんだから、「そんなん行ったってダメだ。暇になったんだから、俺が全部コーチをやるから一緒にコースに出るぞ」と。
大竹:なんと、素敵ですね。
上田:でしょう。それで、だいたい僕は朝5時ぐらいに起きだして、バタバタと準備をして、6時ぐらいに「起きろー」と女房を起こして支度をさせて、車に乗り込んでダーッと出発。「どこへ行くの」と聞かれても、「俺が計画しているんだから、お前は寝てればいいんだ」と。
大竹:1カ月で3000km走って温泉もゴルフも、となると週末は忙しいですね。
上田:休みの日は、とにかく出かけているよ。金曜日から休んで2泊3日にするとかね。だから僕は、やることがなくなって急におかしくなるなんていうことにはならないな。やることを考えなきゃいけないということが楽しみになっている。
大竹:ちなみに、上田さんは結構、車を運転するのが好きだったんですね。
上田:好きですよ。
大竹:奥さんも運転が非常にお上手だといううわさも聞きましたが。
上田:よく知っとるな。実は、女房は僕が知らん時に、ある仕事を勝手にしていたことがあるんだよ。若い頃の話だがね。
ある時、つい女房に「お前なんか何の資格も持っていないし、特技もない」と言ってしまったことがあったんだ。そうしたら、その後、急に夜、女房の帰りが遅くなるようなことが増えたんだ。「こいつ、おかしいな」と思ったよ。「ちょっと、あの世界に狂ってしまったかな」と。
大竹:あの世界、というのは……
上田:ホストクラブ(笑)。
かつて女房は車検場で運転の腕を磨いていた
上田:気がつけば、何か高そうな服とか指輪を、僕の知らないところで買っていたんだよ。当然、「これどうしたんだよ」と問い詰めたよ。そうしたら、「私のお金で買ったんですから、文句を言われたくない」なんて言うんだ。「何やっているんだ」と聞けば、何と、車検場で働いていたんだ。車検が終わった車をお客さんのところに届けたりする仕事だよ。
何でそんな仕事をしていたかというと、僕が「お前なんか手に職がない」と言ったことが原因だったんだ。自分には、車の運転免許があるというわけだ。
大竹:上田さんが奥さんの気持ちを焚き付けてしまったんですね。
上田:そうなんだよ。1人が車検が終わった車を運転して、もう1人が別の車で後ろからついていって、帰りは2人で乗って戻ってくるというやつだ。
大竹:へえ〜それは運転が上手になりますよね。
上田:大型じゃないけど、トラックの運転免許も取ったんだって。
大竹:凄い行動力!それなら、運転はかなりの腕前でしょう。
上田:だけれども、僕がファミリーマートの社長になった時、車検場の上司から言われたんだって。「上田さん、新聞を見たら、おたくのご主人、ファミマの社長じゃないか」と。
大竹:社長夫人が、何をやっているんですか、と。
上田:そう。「ちょっとうちでトラックの配達だとかを続けるわけにはいかないでしょう」と言われてしまったらしいんだ。だから、それ以来、車検場の仕事はしていないけれど、運転は上手い。
大竹:それなら、旅行の時は交代で運転しているんですか。
上田:うん。結構2人で走りましたよ。万座温泉、伊東温泉。軽井沢、近場の千葉なんか有名なお寺は全部回ったしね。
大竹:さすがに、1カ月3000kmを1人で運転すると疲れてしまいますものね。70歳を超えると、免許の更新の際には高齢者講習を受ける必要があるようです。プロ級の運転技術を持つ奥さんと一緒とはいえ、運転にはくれぐれも気をつけてください。
読者の皆様から、上田さんに聞いてほしい悩みを募集します。悩みの投稿は日経ビジネスDIGITALの有料会員か、もしくは日経ビジネスオンラインの無料会員になる必要があります。日経ビジネスオンラインの無料会員の場合は、投稿に会員ポイントが必要です。
>>悩みの投稿<<
このコラムについて
お悩み相談〜上田準二の“元気”のレシピ
コンビニ大手ファミリーマートで発揮した優れた経営手腕のみならず、料理、読書、麻雀、釣り、ゴルフと、多彩な趣味を持つ上田準二氏。ユニー・ファミリーマートホールディングスの社長を退任し、相談役となった今だから語れる秘蔵の経験や体験を基に、上田氏が若者からシニアまで、どんな悩みにも答えます。上田氏の波乱万丈の人生を聞けば、誰もがきっと“元気”になる。
日経BP社
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/16/022100017/073100029/
【第1回】 2017年8月2日 橘玲 :作家
いまの時代の日本に生まれたことが「最大の幸運」である理由
作家であり、金融評論家、社会評論家と多彩な顔を持つ橘玲氏が自身の集大成ともいえる書籍『幸福の「資本」論』を発刊。よく語られるものの、実は非常にあいまいな概念だった「幸福な人生」について、“3つの資本”をキーとして定義づけ、「今の日本でいかに幸福に生きていくか?」を追求していく連載。幸福のインフラとなる、「金融資産」「人的資本」「社会資本」という3つの資本(資産)の有無で生まれる8つの人生パターンにすべての人が当てはまる。あなたの今はどの状態か? そして目指すべき「幸福な人生」とは?
人生は幸福になるようにデザインされているわけではない
まずはきわめてシンプルな事実から語りはじめたいと思います。それは、
「あなたがいまここに存在することがひとつの奇跡」
ということです。
とはいえこれは、哲学や宗教、あやしげなスピリチュアルの話ではありません。父親と母親が出会い、2人の遺伝子からたまたまひとつの組み合わせが選ばれてこの世に生を受け、さまざまな出来事を体験し、多くの出会いや別れがあり、現在に至るまでには膨大な数の偶然の積み重なりがあります。この偶然を「奇跡」と呼ぶならば、これは誰でも知っている当たり前のことをいっているだけです。
そうした偶然のなかでもとくに強調したいのは、
「いまの時代の日本に生まれたということが最大の幸運である」
ということです。
ここで、すぐにあちこちから批判の声が聞こえてきそうです。日本経済は四半世紀に及ぶデフレに苦しみ、非正規雇用やワーキングプア、ニートや引きこもりが激増して、若者はブラック企業で過労自殺するまで働かされ、老後破産に脅える高齢者には孤独死が待っているだけだ、というのです。
私はこうした日本の現状を否定するわけではありません。しかしその一方で、この島国から一歩外に出てみれば、「下を見ればきりがないが、上を見るとすぐそこに天井がある」という現実にたちまち気づきます。
国連は毎年、1人あたりGDPや健康寿命、男女平等、政治・行政の透明性、人生における選択の自由度などを数値化して「世界幸福度ランキング」を発表していて、その上位は北欧など「北のヨーロッパ」の国々が独占しています(それにつづくのがカナダ、オーストラリアなどアングロサクソンの移民国家です)。
最近では「ネオリベ型福祉国家」と呼ばれるようになったスウェーデンやデンマークのリベラルな政治・社会制度はさまざまな面で日本よりすぐれており、雇用制度や教育制度など見習うことは多々ありますが、それを「幸福な理想社会」と呼べるかは別の話です。
デンマークは本当に「幸福な国」か?
デンマークでは非白人移民の国外追放を求める国民党が閣外協力ながら政権の一角を占め、オランダの総選挙では「ヨーロッパのイスラーム化阻止」を主張するヘールト・ウィルデルスの自由党が大きく票を伸ばしました。世界でもっともリベラルな国々は、「反移民」「反EU」の右派ポピュリズムが跋扈する社会でもあるのです。
これは、「北のヨーロッパ」にあまり住む気になれない私の個人的な感想というわけではありません。東南アジアのビーチリゾートには、北欧の「幸福な国」から移り住んできたひとたちがたくさんいます。
長く寒い冬を避けるのがいちばんの理由でしょうが、彼らと話をすると、「あんな社会で暮らすのはまっぴらだ」という愚痴がいくらでも口をついて出てきます。ここでは詳しく述べませんが、北欧は個人主義が極限まで徹底されたきわめて特殊な社会なのです。
日本がこれから必死の努力で「改革」を行なっても――もちろんこれは必要なことですが――そのゴールは、自由で平等で暮らしやすいかもしれないけれど、移民問題で国論が二分し、ものごころついてから死ぬまで「自己責任」「自己決定」で生きていくことを強いられる社会です。これが、「上を見るとすぐそこに天井がある」という意味です。
しかしだからといって、絶望する必要はありません。
「知識人」を自称するひとたちは、「資本主義が終焉して経済的大混乱がやってくる」とか、「社会が右傾化してまた戦争に巻き込まれる」とかの不吉な予言をばら撒いています。
しかし過去100年間を時系列で眺めれば、私たちが暮らす社会がずっと安全になり、ひとびとがゆたかになったことはあらゆる指標から明らかです。――そしてこれは、時間軸を300年、500年、1000年、あるいは1万年に延ばしても同じです。
かつての日本社会は、ごく一部の特権層しかゆたかさを手にすることができませんでした。しかし現在では、より多くのひとが「幸福の条件」にアクセスできます。江戸時代であれば、あるいは明治や昭和初期であっても、「平民」が幸福について語るなど考えられなかったでしょう。
「江戸時代といまを比べても意味がない。問題は(デフレや右傾化で)いまの日本社会がどんどん生きづらくなっていることだ」との反論もあるでしょう。しかし「日本が世界の頂点に立った」とされる1980年代は(私は20代で体験しましたが)、有名大学を卒業し、官僚になるか一流企業に就職する以外に社会的成功への道のない時代でした。
『幸福の「資本」論』
橘玲著
ダイヤモンド社 定価1500円(税別)
80年代末のバブル経済でこの構造にひびが入り、それまで社会の底辺にいた(ヤクザと同類の)ひとたちがきらびやかな衣装をまとって登場しますが、バブル崩壊と暴対法(暴力団対策法)の施行でその抜け穴はたちまち塞がれてしまいました。
しかしその後、グローバル化の荒波によって日本社会の構造は根本から揺さぶられ、それまでつぶれるはずがないとされていた大手金融機関が次々と破綻する経済的混乱を経て、一介の若者が徒手空拳で大きな富を合法的につかめる時代がやってきました。
冷静に歴史を振り返れば、「経済的成功への機会」という意味で、現在の日本が過去のどの時代よりも恵まれていることは間違いありません。すなわち私たちは、いまの時代の日本に生きているというだけで、とてつもない幸運に恵まれているのです。
だとしたら考えるべきは、この「奇跡」と「幸運」を活かし、どのように「幸福な人生」をつくりあげていくかでしょう。
これまで私は、何度かこう述べました。
ひとは幸福になるために生きているけれど、幸福になるようにデザインされているわけではない。
私の新著『幸福の「資本」論』では、「金融資産」「人的資本」「社会資本」という3つの資本=資産から、「幸福に生きるための土台(インフラストラクチャー)」の設計を提案しています。この考え方はきわめてシンプルですが、だからこそとても強力です。
次回から、その設計の仕方について述べて行きましょう。
(作家 橘玲)
http://diamond.jp/articles/-/137181
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