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激震!やらせ発言≠ェ発覚、国際会議を操作する水産庁のモラル
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10164
2017年7月25日 真田康弘 (早稲田大学地域・地域間研究機構客員次席研究員/客員講師) 伊藤 悟 (Wedge編集部) WEDGE Infinity
「マグロの王様」と称されるクロマグロ。日本近海に生息する太平洋クロマグロは、初期資源量(漁獲がないと仮定した場合の資源量)比2・6%にまで減少した「絶滅危惧種」としても知られている。日本はこの資源の半分以上を漁獲しているが、資源管理に後ろ向きであることから、国際的批判が高まりつつある。
太平洋クロマグロは「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」という国際機関で管理され、この委員会が管轄する資源のうち、北太平洋に主として生息するものについては、「北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)」が資源評価を実施している。
このISCは2017年4月、内外の関係者が一堂に会した国際会議である「太平洋クロマグロ・ステークホルダー会合」を東京で開催した。今後どのような方策を取れば資源は将来どのようになるのかISCから報告を受けた後、内外の関係者が率直に意見を出し合い、前広(まえびろ)に話し合うためである。
会議に出席した筆者は、奇妙な場面に遭遇した。会議には大規模巻き網漁業者はもとより小規模沿岸漁業者として日本各地の漁協から組合長が多数出席していたが、彼らは異口同音に、
@自分たちは漁獲抑制のための最大限の努力をしている
A今年は経験したことがないほどクロマグロが漁獲されており、資源評価は実態に合っていない、ゆえに漁獲枠を増やすべきだ
B日本の沿岸小規模漁業者がこれ以上漁獲を減らすことは難しい
と発言した後、「クロマグロの資源は戻ったが漁業者がいないでは『本末転倒』だ」、と四字熟語まで同一のフレーズで発言を結んでいたからである。何らかの「台本」を読み上げているように思えた。
4月に東京で行われた国際会議の場で、水産庁は漁業者の発言を「操作」した
取材を進めていくと、とある関係者からこの「台本」を入手することができた。それが、次ページの文書である。聞けば水産庁がこの文書を作成したという。流出した場合を考慮してか、「水産庁」とはどこにも書かれていない。
だが、Wedge編集部の取材に対し、この文書は水産庁が作成したものであることを認めた。
水産庁曰く、「水産庁としては、ISCステークホルダー会合においては、漁業関係者がそれぞれの事情を発信し、活発な意見交換がなされることが重要と考え、全漁連(全国漁業協同組合連合会)を含めた関係者に積極的に発言するよう伝えてきたところ。全漁連に対してもこのことを伝えたところ、『ステークホルダー会合で、組合員である沿岸漁業者の発言の際の参考にするため、これまでの沿岸漁業者の主張をまとめてほしい』との要請があり、水産庁管理課資源管理推進室で沿岸漁業者の主張をまとめ、全漁連に提供したもの」だという。
しかし、筆者がマグロ漁業者に直接問い合わせたところ、「資源が回復している実感はない。(30キロ未満の)未成魚に関しては、巻き網の取り残しや規制によって制限されたことによる取り残しが回遊してきただけ」(九州一本釣り漁業者)、「北海道は今年史上最低。日本海側の北海道の漁師はほぼ同じことを言っている」(北海道一本釣り漁業者)、「資源は数年前よりは多少良くなっているように感じるが、好転したとは思っていない」(本州定置網漁業者)など、「台本」とは異なる発言が多く聞かれた。
「台本」に書かれている内容は、とても沿岸漁業者の主張をまとめたものであるようには思えない。「あの台本に書かれていることが、日本の漁業者の総意であるわけがない」と漁業者は怒りを露わにする。
水産庁がわざわざ「やらせ発言」のマニュアルを作成したのは、昨年12月にフィジーで開催された国際会議・WCPFCの年次会議が少なからず影響していると考えられる。現行の太平洋クロマグロの規制措置は初期資源量比2・6%まで激減した資源を7%程度まで増加させるという極めて手ぬるいものとなっている(WCPFCではカツオについては初期資源量比50%を資源回復目標に設定している)。
水産庁が作成した「やらせ発言」のマニュアル
年次会議ではこの程度の規制しか受け入れようとしない日本に対し、加盟各国からの激しい非難が集中、少なくとも初期資源量比20%まで資源を回復させるとの目標を設定するよう検討せよ、との異例の指示が出された。
各国からの批判の十字砲火を受ける中、水産庁を中心とした日本側は「資源は近年増えている」「日本には多数の小規模沿岸漁業者がおり、彼らの生活を踏まえるならば、これ以上の規制強化は困難だ」とあくまで現行の措置が十分なものであると頑なに言い張り続けた。
一方で、カツオ、メバチマグロ、キハダマグロなどの魚種については、これを下回れば禁漁など極めて厳しい措置が導入されると想定される資源最低ラインを、WCPFCでは初期資源量比20%に設定している。2・6%で「資源が増えた」と主張するのは説得力に著しく欠ける。
各国代表がいる前で、最大漁獲国の日本の漁業者が口を揃えて「資源は科学的知見が示す以上に増えている」「我々にも生活があるので、これ以上の削減はできない」と言えば、交渉を有利に進めることができる、そう水産庁は踏んだのではないだろうか。
国の名や外交関係を傷つけるな
外務省が水産庁に苦言
さらに根深い問題もある。太平洋クロマグロの産卵場所は日本海沖と南西諸島沖の2カ所であり、産卵する時期(主に6、7月)は決まっていることから、絶滅危惧種になるほど資源量が減少しても比較的漁獲しやすい。産卵のため日本海に集まるクロマグロの群れを巻き網で一気に獲るため、日頃は高価なクロマグロがこの時期ばかりは廉価で売り出される。
ただし、一度に大量に獲るため処理が追い付かず、一本釣りなどに比べて質が著しく劣る。築地市場には「巻き網クロマグロ」が大量に競り残る。海外の科学者・専門家からも絶滅危惧種の産卵期における巻き網漁については懸念の声があがっている。
ところで、巻き網関係の主要な広域・全国レベルの組合は4団体あり、そのすべてに水産庁の天下り幹部ポストがあるという事実がある。産卵期の巻き網漁について効果的な規制がされていない現実があるが、水産庁の元次長は天下りを認めた上で、水産庁職員に対し「自分の行き先をおもんぱかっているんじゃないかと言われれば、その疑いを完全に払拭することはできない」と公開準備中のドキュメンタリー映画で話している。
クロマグロの管理に関して、この7月に就任した水産庁長官は、「日本は魚種が多様で、毎年の来遊状況も安定せず、漁法も多種の魚種を対象とするものが多い」「管理を強化しすぎて漁業者の経営が成り立たなくなっては本末転倒」だ、と業界紙のインタビューで答えている(水産経済新聞17年7月3日)。「本末転倒」という文言が、4月会合の「台本」に出てきたのは単なる偶然なのであろうか。
昨年12月のWCPFC会合では、クロマグロには初期資源量比2・6%でも「資源は増えており大丈夫」と言い張るその同じセッションで、資源量が日本側の主張でも40%はあるカツオに対しては、「更なる資源保護策が必要だ」と矛盾した主張を行う日本に対し、「科学をマニピュレート(操作)するな」と各国から厳しい批判が相次いだ。
「科学を操作している」と非難された日本は、今回国内で漁業者の意見まで操作しようと試みたと言える。
WCPFCでの非妥協的な交渉姿勢については「水産という狭い業界のイザコザで、日本という国の名や外交関係を傷つけてほしくない」と外務省から水産庁に苦言が呈されるほどである(みなと新聞16年12月15日)。
新しい水産庁長官の下で、今こそ旧来の悪弊を断ち切り、資源回復のための抜本的な政策方針の転換がなされることを期待してやまない。
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