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マーケットが最も警戒する「安倍一強」瓦解というリスク
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52314
2017.07.19 山崎 元 経済評論家 現代ビジネス
■都議選で見えた4つのこと
7月2日に投票が行われた東京都議選は、国政選挙並みの注目を集めたが、小池百合子知事率いる都民ファーストの会が大勝し、自民党は歴史的な大敗を喫した。
その後に発表された安倍政権に対する支持率の世論調査では、複数メディアの調査で、内閣支持率が軒並み低下して、不支持と逆転しており、安倍首相に関して多くの調査対象者が「信頼できない」と回答している。
ここ数年、海外の多くの国で政権が不安定化する中で、わが国の政権は安定し、「安倍一強」とも言われる政治状況が続いて来たが、にわかに今後の政治の展開が気になる状況が現れた。
都議選の結果を見て分かったことは、主に、以下の4つだ。
(1) 国民は、「加計学園問題」などの安倍政権の失点に対して厳しい目を向けている。
(2) 与党に対する批判票は適当な「受け皿」(今回は都民ファーストの会)があれば大きく動く。
(3) 公明党と協力が得られない場合の自民党は選挙に強くない。
(4) 民進党(改選前7議席→5議席に2減)は政権批判の受け皿として全く機能しておらず、党勢退潮が顕著である。
自民党対都民ファーストが注目された都議選だが、その時の「風」で大きく勢力が入れ替わりそうな両勢力の勝負を別とすると、地味ではあるが、本当の勝者は公明党で、救いの無い敗者は民進党だったとも言えよう。
特に、民主党政権時代の記憶に直結する蓮舫代表、野田幹事長の体制で、今後民進党に上がり目があるとは思えない。同党は「政治マーケティング」的に見て、全くヤル気があるように思えない。このままでは、消滅ないし分裂に向かうのではないだろうか。
これまで、国民の脳裏に「民主党政権時代はひどかった」という記憶が強くあり、選挙に負けない状況で公認権と人事権を掌握していることが「安倍一強」体制を支えていた。蓮舫・野田体制の継続を望んでいるのは、誰よりも安倍首相だろう。
しかし、民進党以外の批判の受け皿が提供されれば、政権への批判票が大きく動くことが分かった。今後、小池百合子氏サイドからの動きも出てこようし、自民党内でも安倍首相に距離を置く勢力の動きが活発になるだろう。
■加計学園問題というトゲ
今後の大まかな政治日程は、8月に内閣改造、来年9月に自民党総裁選、来年12月までのどこかで衆議院解散、といったところだ。
小池氏の目標は近い将来の首相にあるように見える。彼女は、この野望に向かって、例えば「国民ファーストの会」を準備して次の総選挙に備えよう。
自民党内で安倍首相に距離を置く勢力とも連携を取る可能性があるし、選挙の看板として機能しなくなった民進党を捨てて小池氏側に動く民進党議員も出てくるかもしれない。
今後、彼女の政治的な影響力は強化されるだろうし、その動きは安倍政権に対する遠心力の一部として作用するだろう。
俗に「政権は解散のたびに強くなり、改造のたびに弱くなる」という。8月の改造で安倍政権が急速に勢いを取り戻すとは考えにくい。特に、「加計学園問題」を処理しきれずにいると、内閣支持率はさらに下落する可能性がある。
ちなみに、加計学園問題を、「規制の緩和の可否の問題」にすり替えようとする安倍政権側の印象操作は全く上手く行っていない。多くの国民は、行政手続きが首相官邸により歪められたか否かの問題であることに気づいている。この問題の処理は、簡単ではない。
筆者は、いわゆるアベノミクスを大筋で支持しているが、これと加計学園問題は別問題であり、共に是々非々で判断されるべきだと考えている。加計学園問題は、安倍内閣の致命傷になってもおかしくない問題だ。
■マーケット側から見る政局
さて、政治は資本市場のために行われるものではないが、投資家は、大いに政治の影響を受ける。
マーケット側から政治を見ると、「安倍政権の安定」は、金融緩和の継続可能性を保証し、2018年の消費税率の引き上げの再延期に期待を持たせる点で、「強気材料」と解釈されていると見るべきだろう。
マーケット側から見て最も困るのは、安倍首相が例えば年内に健康問題などを理由に政権を投げ出すことだ。第一次安倍政権時の記憶があるので、この可能性を完全には否定しにくい。
この場合、来春に予定されている日銀の正副総裁人事が不透明化することになる。これまで、金融緩和派の政策委員が増えてきたが、総裁、副総裁が少しでもタカ派的な(金融引き締めに積極的な)人選になると、アベノミクス相場の終わりが強く意識されて、円高・株安に向かう可能性が小さくない。
マーケットは、「起こるかもしれない、嫌な事態」に反応するので、今後、政権が苦境に陥り支持率を下げるたびに、安倍首相辞任の可能性が株価に対する重しとなる可能性がある。
安倍政権が、来秋まで保つ場合には、日銀人事がマーケットの大きなリスク要因となる事態は避けられそうだが、来年の通常国会で憲法改正に踏み込もうとすると支持率を大きく落として、政権の苦境を招く可能性がある。
この点に関しては、今回の都議選で選挙への影響力を示した公明党がストッパーとなることが期待されるが、安倍氏は憲法改正に強いこだわりを持っているので、止まらないかもしれない。
そうした場合、自民党内の改憲消極派と対立軸ができる可能性もあり、次期総裁選の行方が混沌とする可能性がある。
自民党内での勢力構造が変化する場合、マーケット側から見て一つ心配なのは、石破茂氏や小泉進次カ氏のような有力と目される政治家が、財政再建に重きを置く財務省的な考え方に影響されているように見える点だ。
小池氏も含めて、安倍政権に距離を置く人々が、政治的立場に影響されて、金融緩和の縮小や増税を言い出す事態は今後相当に心配だ。
マーケットの側から見ると、「安倍一強」が来秋まで継続して、消費税率引き上げの再延期を再び掲げて、年末に追い込まれる前に解散してくれるような展開となると、「マーケット的には」いいのだが、目下の政治情勢では、そこまで期待していいのかは不透明だ。
■米国マーケットの政治リスク
一方、日本だけでなく米国にもトランプ政権の「ロシア・ゲート問題」を巡る政治リスク要因がある。
現在、米経済は好調を維持しているので、政権の弱体化がマーケットの足を引っ張るような事態に至っていないが、今後、大統領弾劾に進む可能性や、トランプ辞任の可能性などが出て来ると、減税やインフラ投資などの政策が滞ることが心配されるようになるので、マーケット的に悪材料として意識される可能性がある。
もっとも、米国の場合、トランプ氏が大統領を辞めると、ペンス副大統領が大統領職に就くので、そうした事態は、共和党支持者からもマーケットからも歓迎される可能性がある。
最も困るのは、スキャンダルの処理に追われて政権が弱体化して、物事が進まない状態が長引くことだろう。
投資家は、日米双方の政治的なリスクに気を遣わなければならない局面を迎えた。
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