http://www.asyura2.com/17/hasan122/msg/491.html
Tweet |
やっぱり「財政再建目標」が間違いである、これだけの理由 なぜ自民党二回生議員は立ち上がったか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52212
2017.07.06 藤井 聡 現代ビジネス
7月5日、自民党二回生衆議院議員28名が、「デフレ不況から完全に脱却し、日本経済を成長路線に乗せると同時に、 財政再建を果たすために必要な財政政策に関する提言」という提言書を、官邸(萩生田副官房長官)と自民党執行部(西村総裁特別補佐)に手交した。
筆者は、この提言は、日本経済を再生し、財政を健全化させる「切り札」となるものと考えている。本稿では、その内容と背景を解説したい。
■いまだ抜き取られない毒矢
去る6月9日、日本経済の方向を決定づける政府予算の方針が、「骨太の方針」として閣議決定された。
この決定に向けて筆者は、経済政策担当の内閣官房参与として、
「これまでの政府方針は予算の『規律』が厳しすぎ、増税と予算カットが過剰に進められ、結果としてデフレ不況が続き、かえって財政を悪化させている。だから真の『財政再建』を目指すなら一時的に財政規律を緩め、デフレを終わらせる積極財政を短期的に徹底展開することが必要不可欠だ」
という主張を繰り返し政府内外に提案し続けてきた。
結果、今回の「骨太」にはそんな筆者の主張が一部採用された。そして、「単なる増税と予算カット、つまり、『単なる緊縮』でなく、経済を成長させて借金の重荷を減らす」という財政目標が明記された。
この目標なら、日本人が豊かになることを通して財政問題を改善でき、大きな「前進」となったのだが――その最新の「骨太」においてさえ、「プライマリーバランス黒字化目標」(あるいは、PB目標と略称)という不条理極まりない規律は解除されなかった。つまり、PB目標という、日本に打ち込まれた「毒矢」は抜き取られなかったのだ。
このため、日本は未だに、デフレから脱却できず、中長期的な財政改善が望めない状況に置かれているのである。――その理由は、以下の通りだ。
■家計とはまったく違うもの
そもそも「プライマリーバランス」(略してPB)というのは、「政府の収入と支出の差」、つまり「財政の収支」である(ただし、支出については、社会保障費や公共事業費などの通常行政のための支出が対象だ。したがって、PBはしばしば「基礎的財政収支」と言われる)。
政府は今、このプライマリーバランスの「赤字」を毎年減らし、2020年度には黒字化しよう、という「財政再建目標」を掲げている。これは一般に「2020年のPB黒字化目標」とも言われている。
そして、安倍内閣はこの目標を達成するために、2014年に消費増税を行うと同時に、様々な支出を抑制し、PB赤字を着実に縮小させてきた。実際、安倍内閣は、13兆円以上ものPB赤字を縮小させる「激しい緊縮財政」を行っているのだ。
もし仮に、政府を家計に例えるなら、「収支が赤字」なら「黒字化するのが当たり前」だと誰もが素朴に感ずるだろう。だから、この「PB黒字化目標」は、世論にすんなりと受け入れられ、官僚や政治家の中でも、その目標は至って「正しい」と感じられている。
しかし、それは完全なる勘違いだ。なぜなら、政府と家計はまったく「違う」からだ。
なぜなら、政府と家計はまったく「違う」からだ。そもそも政府は家計では無く「企業」に似た存在だ。そして企業というものは、上手に支出を増やせばビジネスチャンスが拡大し、収入が増える存在。逆に支出を切り詰め過ぎれば儲けが減る。だから企業の収支改善には、単なる「緊縮」ではダメなのだ。それでは確実に自滅する。あらゆる企業は仕入れしたり新しい店を出したり、「カネを借りて、使う」ことを通してビジネスを拡大する。当たり前のことだ。
だからこそ政府は、家計の主婦感覚で支出を切り詰めれば収入は確実に減少し、かえって借金が膨らむ。つまり、PB赤字を無理して縮小すればするほどに、財政は悪化し、将来のPB赤字を拡大させてしまうのである。
つまり、「異性にもてたい」とあがくほどに異性から嫌われたり、「信頼されたい」ともがくほどに信頼を失っていくことがあるように、「PBを黒字化したい」と無理して緊縮すればするほどに、PBは悪化していくのである。
これこそ、PB目標撤廃が必要不可欠だと、筆者が考えている理性的根拠である。
■場合によっては消費税減税すべき
筆者はこうした主張を、政府関係者のみならず、世論に対しては『プライマリーバランス亡国論』という著書を通して、そして、与党自民党に対しては「日本の未来を考える勉強会」(代表呼びかけ人・安藤裕衆院議員)での発表を通して訴え続けた(https://www.youtube.com/watch?v=BBLFipGeinA を参照ください)。
そしてこの度、この勉強会を構成する自民党の当選2回の28人の衆院議員達によってとりまとめられた「デフレ不況から完全に脱却し、日本経済を成長路線に乗せると同時に、 財政再建を果たすために必要な財政政策に関する提言」の中に、筆者の主張が取り入れられた。(http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS25H0K_V20C17A6PE8000/)
この提言書はそのタイトルが示すとおり、「デフレ不況から完全に脱却し、日本経済を成長路線に乗せると同時に、 財政再建を果たすためには、PB制約を撤廃した上で、積極的な財政政策を展開することが必要である」ということを主張するものである。
その基本的な認識は、民間投資を補う財政出動を絞れば経済が低迷し、税収減で「財政がかえって悪くなっている」という点。
だからこそ、消費増税は凍結すべきであり、場合によっては「減税」すら視野に納めるべきではないかとも主張する一方で、PB目標に代わる新しい財政規律として、毎年度の当初予算の増額幅を2兆〜3兆円に抑えることを目安にすべきだと提言している。
600兆円経済を実現するためには年率3〜4%ずつの需要拡大が必須だが、それと歩調を合わせる形で、当初予算も3〜4%ずつ、つまり2〜3兆円ずつ拡大すべきだというのが論拠である。
ただし、当面の間はこの支出拡大だけでは、デフレ脱却を望むことはできない。だから、デフレ完全脱却を果たすためには、少なくとも2〜3年間は「建設国債」、さらには、「教育国債」を積極的に発行しつつ、補正予算を出動していくことが必要不可欠である旨も明記されている。
筆者は、この提言に全面的に賛成する。この主張はまさに、これまで筆者が主張し続けた内容と軌を一にするものだからである。
■デフレからの脱却を目指して
この提言は本年7月5日、官邸においては萩生田副官房長官に、自民党においては西村総裁特別補佐に手交された。政府、そして与党の中で、この提案が真摯に受け止められ、アベノミクスが真に成功し、デフレから完全に脱却できる果敢な財政政策が展開されることを、心から祈念したい。
ただし、この動きに対しては批判が展開され始めている。例えば、経済ジャーナリストの磯山友幸氏は、この動きを危険視し、PB目標撤廃や増税凍結などもってのほかと論じている(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52144)。氏は、その理由をこう説明している。
〈 国債などの国の借金が1000兆円を超える中で、単年度の赤字をこれ以上出さないことは「当たり前」のことだろう。多額の借金を抱えている家庭が、生活費が必要だからと毎月カードローンでお金を借りていれば、いつかは財政破綻する 〉
この主張がいかに誤ったものであるかは、上記の筆者の主張をご覧頂ければ一目瞭然だろう。政府は家計と違う。企業のようなものなのであり、(今の日本のように)業績がふるわない状況では、投資を中心とした支出拡大で、業績改善を図るほかに生き残る道はないのだ。
彼の議論はそれ以外にも、1)増税による景気低迷が如何に税収を減らしているかという事実も、2)自国通貨建ての国債によって完全破綻した国家は歴史上存在しないという事実も、3)財政目標の国際標準も日本政府の「公約」における目標も(PBでなく)「債務対GDP比の引き下げ」であるという事実も、4)債務対GDP比は名目成長率が拡大すれば引き下がるというという事実も、5)名目成長率が向上すれば翌年のPBが改善するという事実も、全て無視されている。
そのうえで、上記のような政府を家計になぞらえたナイーブな批判を展開しているに過ぎないのである(筆者の主張の詳細は、繰り返すが、拙著『プライマリーバランス亡国論』を参照されたい)。
ただしおそらく、こうした誤った認識に基づく批判は、これからも繰り返されることだろう。しかしそうした批判によって、これまで緊縮が続けられ、その結果、景気も財政も悪化しているのは、先に述べた通りだ。
日本がデフレを脱却し、財政を真に改善していくために一番必要なのは、こうした誤解だらけの経済論説に騙されないことなのではないかと、筆者は真剣に感じているのである。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民122掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。