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[FINANCIAL TIMES]海外移管 イメルト氏の警告
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投稿者 あっしら 日時 2017 年 7 月 06 日 02:35:53: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


[FINANCIAL TIMES]海外移管 イメルト氏の警告
グローバル・ビジネス・コラムニスト ラナ・フォルーハー

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルト最高経営責任者(CEO)には、次世代の企業経営者らに助言したいことが複数あるようだ。

 「バーニー・サンダース氏の演説の最初の5分間には、私も賛成だ」と彼は述べた(編集注、サンダース氏はリベラル派の政治家として知られ、昨年の米大統領選で民主党の候補指名をヒラリー・クリントン氏と最後まで争った)。多国籍企業のCEOの発言とは思えないだろうが、彼は確かに先週、筆者にそう語った。

 イメルト氏は今年7月末に、創業100年を超えるこの老舗グループのCEOを退任し、経営を後任のジョン・フラナリー氏に譲ることになっている。「引退」前だから本心を明かしやすかったという可能性はある。本人が言うようにこれで彼が本当に「引退する」とは思えない。

 だが、彼は賢明な経営者であれば今、どんな認識であるべきかを語ったにすぎない。金融危機とその危機による経済的打撃が続き、政治的ポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭したことで、グローバルなビジネスの基本的考え方は根本的に変わった。その意味で、イメルト氏が金融危機後の数年間にGEの経営を通じて経験したことは、ポピュリズム台頭後の今の世界でグローバルビジネスを展開する時の指針となるかもしれない。
 

 では、イメルト氏は何を学んだのか。第1に米欧のような先進諸国の経済を成長させるには「消費を伸ばそうと考えているだけではだめだ」と言う。これは大衆迎合主義者の主張の一部だが、サンダース氏の支持者(もちろんトランプ氏の多くの支持者も含む)と、イメルト氏が同意できる点だ。

 過去40年の米国の経済モデルは、米国の賃金は低いままでいいが、生産を含め海外に出せるものは外国に移すというグローバル化を基本としてきた。グローバル化の推進により米国の物価が下がれば、失業しても低賃金のままでも、その影響を相殺できるはずだと考えられてきた。しかし、米国内総生産(GDP)の70%は消費が占める。そうした状況で1990年代以降、働くほとんどの人の賃金が上がらないとなれば、その理屈はもはや成立しない。

 「海外に外注するだけして、米国の賃金水準は低いままでいいなどというグローバル化の考え方はよくない」とイメルト氏は話す(最近は、低賃金はグローバル化がもたらす問題ではなく、米国の低賃金そのものがいろんな問題を招いていると指摘する調査が増えている)。

 イメルト氏によれば、グローバル化の恩恵を分かち合う最良の方法はドイツ方式をまねることだ。理想的モデルは、大企業を中心に、「ミッテルシュタント」と呼ばれる中小企業群が周囲から支える垂直統合した製造業のエコシステムを形成することだ。このモデルなら、高度な技術を持つ労働者(報酬もよい)が、価値の高い輸出競争力のある製品を創り出すことができるという。

 通常、大手輸出企業が従業員を1人雇うと、その企業の供給網に8人の雇用が生まれる。米国の多くの地域が大企業の誘致に懸命なのはそのためだ。大企業が1ドルの経済的価値を生み出すごとに、地域に1.5ドルの利益を落とす。だからこそ、技術の進化で米製造業の雇用規模は全体として縮小していても、大企業の存在は今も非常に多くの高度な経済活動を支えていると考えられている。

 例えば、GEのジェットエンジン事業は、各エンジンに取り付けた何千ものセンサーが発信するデータを分析し、そのデータをいかに活用できるかコンサルティングする新サービスを生み出すことで拡大してきた。

 各地方政府は、こうした仕事を生み出す大企業の誘致に、優遇税制や補助金の提供で際限のない競争を展開することが多い。だがイメルト氏はGEが事業拠点を決める際、最も重視するのはその地域にどのような人材がいるかだと話す。人材レベルは、その地域の教育システムの質とほぼ相関関係がある。

 GEが昨秋、完成させた新工場は、米インディアナ州ラファイエットにある。工学分野で有名な州立のパデュー大学の近くだ。この工場でジェットエンジンの組み立てに携わることになる数百人の労働者全員が、四年制大学で電気工学や産業工学の学位を持つとは限らないが、大学を中心とするエコシステムの恩恵は受けた人々となる。「大学のある街は、中等教育や職業教育もしっかりしているものだ。それが良質な労働力を生み出す」とイメルト氏は話す(実際、筆者が育った町から30分ほど離れたウェスト・ラファイエットには、インディアナ州で最高レベルの高校がある)。

 ここから得られる教訓は、教育やインフラといった公共財は重要ということだ。企業の事業は、何の支えもない自由放任主義の環境下で成功するわけではない。教育や職業訓練といった政策の選択によって、その地域社会(国)に流れ込む経済的価値は大きく変わるということだ。
 
 
 イメルト氏が今後の経営者に与える最後の、そして恐らく最も価値ある助言は「ダボス会議より製造現場でもっと時間を過ごせ」ということだ。“世界の賢人”たちはなぜか一般の人々のニーズとはかけ離れてしまったという。自分たちはグローバル化の中身や一般の人々への影響を十分に考えずに、競争力強化のためには絶対に必要な投資だとして、グローバル化の理論を理解してきた。海外への外注を進めることは優れたビジネス手法だとして、労働者のことよりも企業にとって有利との理由から様々な貿易協定を支持し、社会への大きな経済的影響には目をつむってきたと述べ、GEもその一角にいたと認めた(最近では、同氏は北米自由貿易協定の再交渉を支持している)。

 イメルト氏は決して経営者らに、「ウォール街占拠運動」への参加を呼びかけているわけではない(普通の企業人同様、規制緩和や企業寄りの税制改革を求めている)。しかし、自分たちが実際に生活する人々の目にどう映っているかをまるで理解しない経営者が多すぎる、と警告している。その無理解は、企業に目に見えるリスクをもたらす。米ライドシェア(相乗り)大手ウーバーのCEOを辞任したトラビス・カラニック氏の浮き沈みを見れば分かるだろう。

 前述のサンダース氏も、イメルト氏の警告には同意するに違いない。

(26日付)

[日経新聞6月29日朝刊P.6]


 

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