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下請け企業の仕事フローを把握している「外注元」はどれくらいあるでしょうか?(写真はイメージです)
残業減らしで外注急増、大企業社員の劣化が止まらない
http://diamond.jp/articles/-/133938
2017.7.3 秋山進:プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 ダイヤモンド・オンライン
大企業で止まらない“外注頼み”
本業を疎かにする弊害
こんな社員が実在するという話を見聞きしたことはないだろうか。
プログラムを一度も書いたことのないSE。
戦略作成はコンサルタント頼みの経営企画部員。
文章をまったく書かない編集者。
教育制度の企画運営を全部外注する教育担当者。
代理店のインセンティブ(奨励金)プログラムを作るだけの営業本部員。
残念なことにこれは笑い話などではなく、大企業のあちらこちらでお目にかかる現象である。すでに、大企業の社員は見事なまでに外注頼みになっているのだ。
もともと外注には2系統ある。
一つは、重要ではあるけれども、その仕事が組織の中で常にあるとは限らない仕事の外注である。フルタイムの従業員を抱えておくほどの仕事量がないものとも言える。
あのマネジメントの哲人、ドラッカーもこう記している(『経営者の条件』、ダイヤモンド社より引用)。
≪時おり、あるいは問題に応じて必要になる専門家は、組織の外においておくべきである。高度な技能をもちながら仕事のない専門家を抱えることは組織全体の士気に関わる。そのような専門家は、必要に応じて料金を払って相談にいくほうが安上がりである。常時抱えておくことは有害なだけである。≫
弁護士や特定領域の専門家などはここに該当する。彼らのことは、企業もそれなりにうまく活用していると思う。
もう一つは、価値構築において、それほど重要な仕事ではなく、外注したほうがコストが抑えられる、または複数の会社を競わせるなどして、切り替え可能な状況にしておくことによるメリットが得られる場合である。
こちらはいわゆる下請けへの外注である。競争力の維持のために、製造部門から始まり、いまでは管理部門においても、アウトソーシングという名のもと、どんどん外注されるようになった。
仕事の内容がそもそも違うとも言えるが、プログラムを一度も書いたこともないSE、文章を書かない編集者、箱だけ作って全部外部任せの教育担当者などの外注はこちらと言えるだろう。
まともな会社は外注化に慎重
成功するための5つの要件
まともな会社では、外注化は、かなり慎重に進められる。というのも外注するということは、社内に知見を蓄える機会を失うことになるからだ。外に出して本当に問題はないか、長期的に競争優位性を失うことにはならないか、などの判断は重要である。
そして、外注すると決めたら、自分たちがやるべきことだけに集中する。顧客ニーズの分析や、新商品開発、ビジネスプランの設計、協力会社(外注業者)の間を束ねる業務の設計、などに領域を絞って自社で取り組み、その他を外注するということになる。
外注するためには、以下の5つの要件を満たす必要がある。
・網羅性……外注先のその先の外注先も含めて、プレーヤー全員を把握する。
・体系性……下請けの階層を体系的に把握する。階層性を作り、それぞれの階層に一定の権限行使を委託する。
・連関性と時系列性……それぞれの会社の業務上の連関と、フローチャート的把握、およびクリティカルパスの把握などを行う。
・代替性……その外注先以外に外注できる会社を予備に持っておく。
・繁閑性……相手先の企業の繁閑状況を知っておき、発注量などを制御する。
外注化を進める最初の段階では、社内でもエースと言われる人がこれらの要件を満たすように業務を再設計し、さらに試運転で検証し、問題がなければ本格的なスタートが切られる。
外注の工程を理解していないと
異常事態にまったく対応できない
しかしながら、外注化の初期段階を終え、次の担当者が引き継いで運用していく段階になると、確認はおざなりになる。3人目の担当者ともなると、まったくもってひどい状況になる。ましてや4人目、5人目となった日には、業務をまともに把握できているかすら怪しい。
外注を管理する立場にありながら、外注先には一度も行ったことはない。さらに、その先にある下請けの会社は名前すら知らない。業務のつながりをまったく理解せず、下請け先のスケジュールも頭にはない。下請け会社が仕事を降りたいと言いだしても、代替候補の企業のリストアップすらできていない。業務の繁閑状況も知らないので、相手がピークのときに、さらに増産しろ、などと平気で無理を言う。
災害や事故など発生しようものならお手上げだ。全体像が頭になく、個々の会社の個別事情を何も知らないから、全体の復興をしようとしても、何をどこからどう手をつけてよいか全く分からない。とりあえず外注先の担当者を呼びつけて叱責し、期限を切っていついつまでに事態を収集しろと頭ごなしに命令する。
残念ながら、大企業の社員が担当する外注業務の多くはすでにこんな状態になっている。彼・彼女らの業績評価基準には、コストカットと、事故なく遅滞なく業務を遂行せよ、くらいしか書いていないから、それ以外には何の興味も持っていないのだ。
自分で全工程の管理をしたことがなく、業務の全体観を持たない社員が、外注先に仕事を機械的に割り振っているのは、そもそも無理がある。実務を知らないし、全体のつなぎ合わせ(編集と統合)もできない。価格を下げろというのも、どこをどう改善すればよいかの知見がないから、ただプレッシャーをかけるだけである。このような状況のまま、品質が維持できるのか、大きな事故は起こらないのか、心配は尽きない。
これでは、過去に先人たちが築き上げた企業ブランドをもとに、発注者と実際に価値を構築している会社や人(外注先)の間に入って、ピンハネしているだけだ。経済学的には、これでも「付加価値」と呼ぶのだろうが、こんなものは単なる「搾取」である。
短時間で付加価値を生む「働き方改革」ではなく
単なる「時短」で外注先にしわ寄せ
さらに、ここにきて、働き方改革である。業務の無駄が省かれ、データの効果的な利用などで時間効率性や創造性が高まり、より高く売れる商品が生まれれば、あるべき姿の「働き方改革」となるが、実際にはほとんどが単なる「時短」だ。労働時間がそのまま制約条件になるから、時間内に処理しきれない仕事は、いままで以上に外注に回る。「私はこれ以上残業できないので、(外注の)○○さんよろしくーー」と、大企業が時短した分の仕事が下請け企業に移転するだけである。
短期的に大変なのは、その仕事を請ける外注先だが、長期的に困るのは、大企業の社員たちのほうである。自分で手を動かさず、細部を知らず、ポンチ絵(机上のプラン)を描くことを基幹業務と思いこみ、無理なコストダウンの要請と、納期と計数だけを眺めている仕事を続けていても、何も身につかない。
今後、情報技術が発展し、指示系列がオープンになると、情報の非対称性が崩れる。すると、本当に付加価値を構築しているのは、どのプレーヤーなのかがさらに明確に分かるようになる。先人たちの構築したブランドを利用して搾取してきた大企業とその社員は確実に苦境に陥る。
そればかりではない、企業は意識的に次代を担う経営者、幹部候補を育てていかねばならない。そしてそのために必要なトレーニングは、決して紙の上で行えるものではない。
その会社の持つ業務の全部門とはいわないまでも、少なくともある部門の全行程を管理した経験や、実際に手を動かし、人と折衝し、多くの失敗を乗り越えるという実務に費やした時間がものを言う。仕事の絶対量が少なすぎると、考える材料が乏しいまま偉くなってしまい、業界全体、会社全体、一連の業務全体を踏まえた意思決定ができなくなる。
かくのごとく、外注に次ぐ外注で、企業はわざわざ当初は優秀だったはずの人材をスポイルしながら、一方では机上で他社事例を学ぶ幹部候補生の訓練には力を入れているのである。なんという皮肉であろうか。
もちろん幹部候補生だけの話ではない。こんなことを続けている大企業はやがて優位性を失い、社員も別の会社に転職しなければならない状況に追い込まれることになるだろう。そのとき、外注先に仕事の割り振りをしていただけの社員には、市場価値のあるスキルなど何もない。真の意味での「働き方改革」を伴わない、さらなる外注化の進展は、大企業のサラリーマンの人生を悲惨なものに追い込むだろう。
(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)
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