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家購入の危険な罠…買う時も買った後も支払う、ローン返済以外の高額費用
http://biz-journal.jp/2017/07/post_19646.html
2017.07.02 文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士 Business Journal
私は有料相談専門のファイナンシャル・プランナーとして、累計2,000件の相談を受けている。相談はまず相談者へのヒアリングから始まるのだが、相談者が不動産販売業者などから聞いた、あるいは自分でインターネットで調べたという住宅購入の知識や常識は、私にとっては非常識に感じるものも多い。今回は、こうした住宅購入でよくある3つの勘違いを挙げていこう。
■「ローン返済額は今の家賃並みだから大丈夫」か?
「ローン返済額を今の家賃と比べてみてください」は不動産販売業者の定番フレーズだが、住宅を購入した後、継続的に支払っていく必要があるのは住宅ローンだけではない。保有することにより固定資産税や都市計画税といった税金の支払いが必要になる。マンションであれば管理費や修繕積立金がかかる。
修繕積立金には注意が必要で、ファミリータイプの新築マンションでは当初月額5000〜6000円程度ということが多いが、将来的には2〜3万円程度まで上昇する物件も多い。また、たとえば10年ごとに数十万円の一時金が徴収される計画である物件も多くはないが存在する。
一戸建てであれば管理費や修繕積立金はかからないが、外壁や屋根のメンテナンスが必要で、給湯器やキッチン・バス・トイレなどの水回りも一定期間で交換が必要になる。こうした費用として20年間で数百万円は覚悟しておく必要がある。
また、将来の変化も想定すべきだ。住宅ローンを変動金利で借りる前提で月返済額を想定しているのであれば、将来、金利が上昇したときの月返済額の上昇も想定する必要がある。まだ幼い子どもがいる家庭であれば、これから教育費の負担が増していくことも考慮しなければならない。生活費が年金収入を上回る老後に向け、ある程度の金額は老後資金の貯蓄に回していく必要もある。
つまり、当初のローン返済額が今の家賃よりかなり低い、あるいは今の家賃並みであっても家計に余裕がありかなり貯蓄できるという状態でなければ、将来、家計が苦しくなる可能性は高いといえよう。
■「自己資金ゼロで購入できる」か?
家の購入時にもさまざまな費用がかかる。主なものを挙げると、住宅ローンの保証料や融資手数料、登記関連の費用、火災保険料、そして不動産会社を通じての購入であれば仲介手数料、一般的に仲介手数料が不要な新築マンションの場合でも修繕積立一時金などがかかる。これらを合計すると購入する物件価格の5〜10%程度になる。
こうした購入の諸費用を金融機関から全額借りて家を購入することは可能だ。だが、これらを借りることを私はお勧めしていない。これらを借りる人は、貸す側の金融機関から信用力が低く評価されても仕方がない。審査により金利優遇が少なくなる、つまり住宅ローン金利が高めになってしまうことも多いのだ。また、住宅ローンの金利自体は低くても、購入の諸費用分は別のローンとなり、高めの金利が設定されていることもある。
また、そもそもであるが現時点で貯金があまりなくて諸費用を支払うことができないのであれば、今の家賃で家計が収支トントンということである。ローン返済額が今の家賃並み、あるいはそれに近い資金計画であれば、住宅ローン以外の保有コストもあるので短期間で家計は赤字に転落してしまう。自己資金ゼロで購入しようとしている人の相談を受けると、こうした資金計画を不動産販売業者から提案されている人も多いが、リスクが高いと考えざるを得ない。
■「賃貸は損。家は買ったほうが得である」か?
家は買ったほうが有利なのだろうか。家を買うと、継続的に必要になる支払い、つまり住宅保有コストが意外に多いのは、前述した通りである。
住宅保有コストで比重の大きい住宅ローンの利息は、現在の超低金利により固定金利を想定すればかなり少なく見込むことができる。これにより現在では、賃貸と保有の総コスト比較で保有が有利とシミュレーションできるのであるが、大きな差になるわけでもない。また、エリアの特性により、賃貸が有利になりやすいエリアと保有が有利になりやすいエリアがある。つまり、単純に「買ったほうが得」とも言い切れないのだ。
優良企業に勤めている人などでときどき見かけるのは、家賃十数万円の賃貸住宅に住んでいても勤務先の手厚い住宅補助などで、自己負担は月3〜4万円程度という人だ。こうした人も「賃貸は損だから、家を買いたい」と思っていたりするのだが、この程度の負担であれば標準的なファミリータイプのマンション保有コストを下回っているので、損得で判断するのであれば今すぐ購入する理由は見当たらない。また、住宅を購入すると、勤務先から支給されている月5万円の住宅手当がなくなるという人もいる。勤務先の制度もよく確認した上で、購入は検討したい。
住宅の妥当な予算や、その人がいま買ったほうがよいかの判断は、毎日のように相談者の生涯収支シミュレーションを行っている私から見ると、簡単なものではなく、個別性が高いといわざるを得ない。これら3つは大事なポイントではあるが、そのまま鵜呑みにせず、一度、長期的な視点で考えてみよう。
(文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
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