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23日に開催された株主総会で、ゴーン会長は「業績のV字回復が始まった」とした。最終損益が1985億円の赤字だった2017年3月期に対して、今期は680億円の黒字を見込んでいる(編集部・長倉克枝)
三菱自動車は“ムラ”から脱却できるか〈AERA〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170628-00000039-sasahi-bus_all
AERA 2017年7月3日
地に落ちたイメージを回復させて、業績も上向かせる……。これまで、多くの企業が直面し、その実現に腐心してきた。これは、個人の場合でも同じこと。落ち込んだ底が深ければ深いほど、復活には時間がかかる。AERA 2017年7月3日号では、「どん底からの脱出」と銘打ち、見事V字回復した企業を大特集。そのとき企業は、個人は、何を考え、どう振る舞うべきなのか。当事者たちの話を聞いた。
「V字回復と、その先にある持続的回復に向けて、確かな手ごたえを感じている」。23日、東京都港区で開催された株主総会で、三菱自動車の益子修社長兼最高経営責任者(CEO)はこう強調した。
* * *
先月中旬、「アウトランダー」などを生産する三菱自動車の主力生産・開発拠点である岡崎製作所(愛知県岡崎市)を、カルロス・ゴーン会長が初めて視察に訪れた。
パーテーションの代わりに、白木のすだれのような間仕切りが天井から下がる、明るい一室。正面のディスプレーを取り囲むようにして、赤や黒の椅子がランダムに並び、作業着を着た社員ら十数人が集まっている。
「私たちの部のパフォーマンスを上げる取り組みをご紹介します」
ディスプレーの前に立った中堅の男性社員が、少し緊張した面持ちで説明を始めた。その数メートル先、最前列の中央に座るのは、ゴーン会長だ。隣の女性が逐次、通訳をして伝える。
「そうですね、素晴らしい取り組みです」
●変革とは成長すること
社員が発表を終えるとゴーン会長はそう言い、一息つくと厳しい表情で、
「だが、会社の変革には具体的なビジョンが必要です。それが、世界目標販売台数125万台という数字。変革とは成長することなのです」
と、檄を飛ばした。
この場では、若手からベテランまで、数組の改革チームの代表が、組織改革の進捗についてゴーン会長に報告をした。使い慣れない英語で発表する社員から、日本語で発表する社員も。内容も、マネジメント方針の改革からトイレの改築までさまざまだった。この部屋も、「改革」のひとつとして改装して作られたという。
その後ホールに数百人の社員を集めて開かれた「タウンミーティング」でも、ゴーン会長が一貫して強調したのが、「成長」だった。
「再び成長軌道に乗せる。三菱自はまだまだ、もっともっと成長できるんです」
と繰り返し訴えた。
「成長」。ここ10年以上、三菱自で見られなかった単語かもしれない。同社では2000年以降、リコール隠しなどの問題が相次いで発生した。00年代、同社の世界販売台数は漸減し、09年3月期以降は100万台前後にとどまっていた。
そこに昨年4月、自動車の燃費試験での不正問題が発覚した。それも、発端は、11年に軽自動車の合弁会社をつくった日産からの指摘だった。問題発覚を受け、昨年の世界販売台数は1割以上落ち込んだ。売上高は大きく減少した。
昨年10月、日産は三菱自に34%出資し三菱自は実質ルノー・日産の傘下に入り、3社によるアライアンス(提携)に加わった。それに伴い、ゴーン氏は12月に三菱自の会長に就任、今年4月に日産の社長を退任すると、再建に向けて3社の会長職に専念することとなった。
●野心的な数字
燃費不正問題に対してはこれまで、役員によるチェック体制や開発プロセスの見直し、危機管理体制の構築といった31の再発防止策を講じ、実施してきた。特に開発部門では明確な目標設定やコミュニケーションを取りやすくするための組織改編などを進めてきた。「再発防止と社内の意識改革を経営の最優先課題と意識している」と益子社長は説明する。賠償金として、1661億円の特別損失を計上し、「すでにほぼ支払い終えた」(同社広報部)という。
そんな中、先月発表した新中期経営計画には、20年3月期の世界販売台数を125万台にするとの目標が盛り込まれた。不正問題発覚前の台数を25%上回る野心的な数字だ。ここにきて、いよいよ、攻勢に転じるというわけだ。成長路線へと大きく舵を切ったのにはわけがある。
●健全な財務状況
「本来、企業の変革マネジメントのプロセスでもっとも重要なのは、いかに社員の危機感を醸成できるか、ということです」
と、『カルロス・ゴーンの経営論』(日本経済新聞出版社)などの編著がある早稲田大学ビジネススクールの池上重輔教授は言う。
「ところが、燃費不正問題を受けてもなお、三菱自は改革に向けた危機感を感じにくい状況にあるのです」
と、続ける。
ひとつは、健全な財務状況だ。自己資本比率は約46%と高い。販売台数が横ばいとはいえ、燃費不正問題発覚前の数年は売り上げも安定し、営業利益率も6%程度と堅調だった。
投資ファンドで企業再生を手がける公認会計士の男性は言う。
「三菱自は自己資本比率も高く、結構健全な状態。一時的な赤字であれば、社員には危機感はないでしょう」
さらに池上教授は言う。
「燃費不正問題といったこれまでの不祥事は、そうはいっても三菱という『ムラ』を守るために仕方がなかったという認識が、社内外にあるのではないでしょうか」
●巨大IT企業との戦い
こうした危機感を感じにくい状況は、日産が連続赤字に陥り、1999年にゴーン氏が再建を始めた時よりも、不利に働く可能性があるという。そこで、三菱自はこれまでとってきた、販売台数の規模を抑え健全な経営を進めるという「安全運転」路線から、規模を拡大していく「成長」路線へと戦略を大きく変えるという策に出た。
「今後、世界の自動車企業は、アップルやグーグルといった巨大IT企業と戦うことになるでしょう。自律化やコネクテッド(自動車間の通信)といった今後の自動車産業のカギとなる技術は、IT企業に強みがある。彼らは買おうと思えばいつでも自動車会社を買えるんです」(池上教授)
自動車企業の生き残り策の一つは、買収されないように、いかに規模を拡大できるかにかかっているという。
「三菱自は、いずれにしてもどこかと組まざるを得ない状況でした。そこで、ルノー・日産アライアンスの一員となることで、『勝ちに行ける』という状況が生まれたのです」(同)
これまで三菱グループの一員として「ムラ」の論理を重視してきたといわれる三菱自。成長し勝ちに行くためには外へと目を向ける必要がある。そのひとつが、ルノー・日産とのアライアンスだ。ゴーン会長はこう強調する。
「目標のひとつは、アライアンスに組織横断的なつながりを持たせることだ。まだまだほど遠いが、双方向コミュニケーションをやらないといけない」
23日に開かれた株主総会では、ゴーン会長はこう強調した。
「現在の当社の状況は1年前の株主総会時と比べてはるかによくなった。今では1年前の三菱自ではありません」
V字回復の成否は、「ムラ」から脱却する社員それぞれの意識改革にかかっていそうだ。(編集部・長倉克枝)
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