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都内で記者会見するタカタの高田重久会長兼社長(2017年6月26日撮影)。(c)AFP/Kazuhiro NOGI〔AFPBB News〕
タカタ倒産、日本企業はもう米国で事業できなくなる? 臭い物に蓋をする企業文化は米敏腕弁護士の格好のターゲット
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50379
2017.6.30 堀田 佳男 JBpress
タカタが倒産した。
正確には「民事再生法の適用申請」という表現なのだろうが、ここではあえて倒産という言葉を使いたい。それはまさしく築き上げた「資産」を「倒した(された)」からである。
倒産の詳細は他メディアに譲り、当欄では倒産から学ぶべき2つのことを中心に話を進めたい。
■3年前から倒産は読めていた
実は2014年12月、当コラムでタカタについて「倒産はあり得る」と書いた(「米弁護士に寄ってたかって食い物にされるタカタ」)。3年前から倒産は読めたのだ。
当時、タカタ製エアバッグによる米国内の死亡者は4人。すでに事件として大きく報道されていた。それから現在まで、米国内の死亡者は計11人(全世界では17人)で、今後も増える可能性がある。
これが日本国内だけの問題であれば、倒産までには至らなかったかもしれない。だが問題の中心地は訴訟の国、米国だった。
3年前に指摘した通り、米国の貪欲な弁護士たちがタカタを標的にして、いかにカネを巻き上げるかに力を注ぐことは容易に想像できた。
弁護士たちはその時点でタカタから、製造業界で過去最大の賠償金を奪えると踏んでいた。願ってもないほど典型的な懲罰的賠償訴訟に持ち込めると考えていたはずだ。
しかも、事故が起きてから数年を経てもタカタの動きは遅く、それがさらに賠償金の上乗せにつながっていく可能性があった。
2014年12月時点で、タカタは全米規模でリコールを実施していなかったのだ。「全米でリコールするデータの裏づけがない」というのが会社側の言い分だった。
この動きの遅さが米国の消費者を苛立たせ、弁護士の活動をさらに加速させた。タカタが倒産したところで、賠償金さえ獲れれば弁護士や被害者にとってはさほど大きな問題ではないという姿勢が見え隠れした。
実際、タカタが倒産してもなお、ロサンゼルス市の弁護士ブラッドフォード・チャイルド氏は「タカタは米国の連邦破産法11条(民事再生法)を利用して、エアバッグで死傷した被害者への責任を逃れようとしている」と糾弾してさえいる。
■3年前の時点でも「時すでに遅し」
その背後には、タカタは全資産を売却して消えてなくなるべきとの思いを感じさえする。
中国系部品会社キー・セイフティー・システムズ(KSS)が事業と資産を買収して再建支援する合意案が出ても、多くの弁護士は不満を抱えたままなのだ。
というのもタカタが倒産したところで、弁護士が抱える顧客一人ひとりに対する賠償金は満足のいく額ではないからだ。1円でも多くの賠償金を勝ち取ってこそ、弁護士としての腕が評価される世界では、まだまだ不十分なのである。
タカタが欠陥エアバッグの隠蔽工作を認めて、刑事事件で10億ドル(約1110億円)の賠償金を支払うことに合意したのは今年1月のことである。
リコール対象車は米国だけで計4200万台になり、負担額は計1兆円に達する。しかもAP通信によれば、今年4月までにリコールされた車は全体の22%でしかない。
2014年12月の時点ですでに米国内では55件の集団訴訟が起こされていた。3年前に原稿を書いた時ですら、「時すでに遅し」の印象があったくらいである。しかも、今後エアバッグの交換を待つ間に事故が発生することもある。
ミズーリ州の弁護士ケント・エミソン氏はエアバッグ事故で顔面に大怪我をした女性顧客のために、これからタカタと自動車メーカーに対する訴訟を検討している。
タカタの倒産で、問題がすべて終わったわけではないのだ。これから始まる訴訟もあることをタカタだけでなく、すべての日本企業は知っておくべきだろう。
もう1つの論点は隠蔽という行為である。
■社員が欠陥を発見した2004年に隠蔽しなければ・・・
悪いものを隠そうとする意識は、多くの人が抱えるものである。誰にも話さず、自分だけ、または数人の秘め事として何事もなかったかのようにやり過ごすことは日常生活で垣間見られる。
ここであえて書かなくとも誰もが思い当たるはずだ。些細なことで、誰も傷つかない事例であればいいが、組織ぐるみの隠蔽となると話は違ってくる。
しかも今回のように事故につながる案件であれば、徹底した報告と改善が必要になる。
タカタがエアバッグのテストで、社員が欠陥の兆候を発見したのは2004年のことである。テストに立ち会った社員2人は、テスト最中にインフレーターに亀裂が入ることを発見。
上司に報告したが、報告を受けた上司はテスト結果を破棄するように命じた。この隠蔽工作がのちに、内部告発としてニューヨーク・タイムズに告げられるのだ。
報告を受けた上司は、すぐに頭の中でリコールや抜本的改良に費やされるコストを計算していただろう。
その時点で億円単位のコストがかかったかもしれない。だが同時に、事故につながる危険性も理解していたはずで、2004年、2005年の段階で手を打っておけば、少なくとも倒産はなかっただろう。
それよりも世界中で亡くなられた17人の命は助かっていたはずだ。負傷者は180人にのぼる。この議論は、単なる結果論として片づけられない。
結果論だからこそ見えてくる教訓があり、「あの時こうすればよかった」が他社に生かされなくてはいけない。
タカタは長い間、隠蔽を否定し、高田重久会長兼最高経営責任者(CEO)も表舞台に姿を現さなかった。今年になって米司法省から鉄槌をくらって、ようやく隠蔽を認めるという体たらくである。
友人のドイツ人経済記者と話をすると、悪い意味での日本らしさを口にした。
■タカタに限らず日本企業全体の問題
「家族経営の弊害が悪い形で出た。日本的な、事なかれ主義で済ます空気が社内に充満していたのではないか」
「すべてを欧米流の合理主義にする必要はないし、日本的なものを貫くことも大切だが、モラルに反することをすると、どの世界でも最後には痛い目に遭う」
最後に再び指摘したいが、米国の訴訟文化は日本だけではなく、世界企業にとっても大きな課題である。ドイツ人記者は「こんなことを続けていたら、米国で事業をしたいと思う企業がいなくなる」と言った。
ドナルド・トランプ大統領が行動の人であるならば、訴訟文化の軌道修正をするくらいの動きに出てもいいが、トランプ氏自身が訴訟好きであるので、弁護士たちの飯の糧である訴訟件数が大きく減ることはないだろう。
となると、米国に進出する日本企業は、タカタのような事件に遭遇する可能性を十分に想定しながら事業をする覚悟が必要になる。
その前に、不測の事態が生じた時はすぐに手を打つという態度が重要さを増す。
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