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定年後を豊かに過ごすためのヒントとは?(撮影:今井康一)
なぜ「定年後」の男性は悲惨なことになるのか イキイキしている人は2割未満?
http://toyokeizai.net/articles/-/177533
2017年06月27日 肥沼 和之 :フリーライター・ジャーナリスト 東洋経済
定年後の過ごし方について、具体的に考えているだろうか? 「まだまだ先のことじゃないか」と、働き盛りの読者は思うかもしれない。しかし、定年後の準備を怠って、仕事ずくめの日々を送っていると、悲惨な老後を送ることになりかねないのだ。ベストセラー『定年後』の著者である楠木新氏に、会社人生、そして定年後を豊かに過ごすヒントについて聞いた。
■定年後に直面する会社生活とのギャップ
――今年4月に刊行された『定年後』(中公新書)が10万部を突破しました。定年後の過ごし方に関心が集まっている理由を、どのように見ていますか。
私は企業から依頼を受けて、50歳前後の社員に対し、「どのようなセカンドキャリアを描くか」についての研修をよく行っています。そこで感じるのは、多くの人が定年後のことを考えていないという事実です。定年が60歳の誕生日なのか、60歳になった年度末なのか知らない人すらいました。
会社にいれば仕事があり、人との繋がりもあり、定期的に給料ももらえます。守られて日々を過ごしているので、先のことまで考えている人は少ないのです。けれど、意識すらしていないレベルかもしれませんが、「いつかは会社を離れないといけない」という漠然とした不安はあるもので、そこに本書のテーマが刺さったのかと思いますね。
――漠然とした不安とは、具体的にどういったものでしょう。
よく言われるのは、老後にいくら必要か、もらえる年金はいくらか、貯蓄はいくらか……などおカネに関する不安です。確かに最低限のおカネは絶対に必要ですし、数字として見えるのでわかりやすいのですが、実際に定年後の人たちに話を聞くと、おカネで悩んでいるのは少数派なんです。
――では、多いのはどのようなことなのですか。
会社生活とのギャップです。会社中心の生活を送っていた人が定年を迎えると、仕事や人間関係が一気になくなります。同僚と飲み会をしたり、趣味を一緒にしたりと、オフの楽しみも会社に組み込んでいた人は、それもなくなる。急に居場所がなくなって、困惑してしまうのです。そのギャップを埋めるには、会社中心の働き方を修正するか、定年後の生活を変えるかどちらかですが、すぐには難しいものです。
――会社から離れたとしても、定年後にできた時間を趣味などに費やして、日々楽しく過ごせないものなのでしょうか。
そう考えていても、実際に定年を迎えると、思っていたほど楽しめない人が多いですね。ある人は定年後に地元に帰り、趣味であるゴルフ三昧の日々を送ろうと、ゴルフ場の会員権を買いました。すると、そのうちに「ゴルフが難行苦行のようだ」と言うようになったのです。
結局、その人にとってゴルフは、会社の仕事があるからこそ成り立つ趣味だったんです。仕事の合間にあくまで「気晴らし」として楽しんでいたので、それだけになるとしんどくなる。一方で、定年後に趣味の釣りにますますのめりこみ、毎日夢中になっている人もいます。自分の趣味が気晴らしのものか、本物なのか、定年になるまでわかりづらいですが、単なる気分転換の趣味だったと気づいてから初めて次のステップに進む方も少なからずいます。
――定年後に居場所や趣味を見つけられないと、どのような弊害が現れるのでしょう。
私の知人で、家族関係がギクシャクしてしまった例があります。その人は定年後、再就職しようとしてもなかなか決まりませんでした。そんな日が続いて焦り、奥さんが友人との電話を切った後に「長い」と言ってしまったりするようになる。出かけるときは「どこに行くんだ?」と聞き、夜遅く帰ってくると、「どこをほっつき歩いていたんだ!」と怒鳴る。それで大げんかになり、子供も巻き込んで家族会議を開いたと聞いています。
多くの家庭では、夫が毎日家にいることを、妻は嫌がるんですよね。出かけるときにいちいち伝えないといけませんし、お昼ご飯を用意するのかも確認しないといけなくなるからです。私の高校時代の友人女性なんか、定年後の旦那のことをボロカスに言っていますよ(笑)。
――悲惨です……。しかもご著書の中で、定年後にイキイキと過ごしている人は2割未満という、驚きの記述がありました。
その数字は、私の先輩である60代半ばの人の見解なので、統計結果ではないのですが、そんなに大きく外れてはいないと思いますね。
■培った経験をカスタマイズする
――定年後をイキイキと過ごすために、趣味や居場所を見つけるコツはあるでしょうか。
個人事業主に会うことが1つのヒントになるはずです。個人事業主は、社会の要請や顧客のニーズと直に接していますよね。けれどサラリーマンの場合、組織を通じて間接的にそれらと接し、分業制で仕事をしているだけなのです。
たとえば、私は芸人さんの生きざまが好きで、取材などで話を聞くことがあるのですが、彼らは他人になにか言われても、決められた枠に収まりはしません。チャンスがあれば積極的に打って出て、ものにしようとしますよね。ギャンブラーの人もそうで、偶然を商売にしているので、「今日と明日が同じであるはずはない」という前提に立っています。だから、ツイていないときは、しばらく会っていない人に手紙を書いたり、いつもと違う道を通ったりして、ツキを呼び寄せようとします。これはサラリーマンにはない考えですよね。サラリーマンは自分を主張せず、人の言うことをちゃんと聞いて、毎日同じことをしていたほうが出世できる場合もありますから。
――個人事業主と接することで、サラリーマンとしての自分を見つめ直し、社会との繋がり方を考えるきっかけになるのですね。
そうですね。ほかには関心のある人、格好いいと思う人、うらやましいと思う人に近づくのも大事です。そういった人には自分を投影している何かがあり、それに気づけるヒントがあるということですから。また、話を聞く際は1人、2人ではなく、できるだけ多くの人に接することで、自分の立ち位置が見えてくると思います。
――『定年後』では、会社を辞めてもイキイキと過ごしている人の事例を紹介しています。会社員からそば屋や美容師、大道芸人など、一見するとまったく違う世界に転身した人も多いように思えますが、何か共通点はあるのでしょうか。
会社員としての経験を活かし、次のステージに行く人が多い印象です。たとえばそば屋に転身した人は、製鋼会社の現場で職人的な仕事をしていたのですが、そば作りの時は、部屋の気温や湿度を見ながら、最適な方法でそばを打っていました。職人的な仕事という意味では共通していたのです。ご本人も「鉄を打つか、そばを打つかの違いだ」と話していました。
定年になってからまったく新しいことを始めても、会社員として培ったレベルまで上げることはほぼ不可能です。これまでしてきたことをカスタマイズして、社会のニーズに応えられるものにすることが大事ですね。それと、子どもの頃に好きだったこともヒントになります。
■小さい頃に好きだったことは大人になっても変わらない
――それは具体的には、どういったことでしょう。
小さい頃に好きだったことや、コンプレックスと感じていたことは、実は大人になっても変わりません。それをうまく取り入れた人は、イキイキと過ごしていることが多いですね。
私は保険会社でサラリーマンをしながら、並行して執筆活動をしていたのですが、周囲からは「おかしなことをしている」と思われていました。編集や記者の仕事をしていたならともかく、まったく別の業界にいたためです。けれど中学の同窓会で、同級生は「お前、昔から人の話を聞いて、それを面白く話すのが好きやったからな」と納得してくれたのです。大人になると、違う自分になったように錯覚しますが、実はベースは変わっていないのですね。私は50歳前後の人たちへの研修でも、「小さい頃にワクワクしたことや、時間を使ったことを考えてみてください」と伝えるようにしています。
――何歳ぐらいから定年後に向けて準備をするべきでしょうか。
サラリーマンは40代に入った頃から、仕事中心の働き方に疑問を覚え、「このままでいいのか」と思う人が増え始めます。若手の頃は強かった「収入を増やしたい」「役職を上げたい」などの成長意欲がひと段落し、気持ちが心の豊かさの追求に向かうのです。そのときからすでに定年後は始まっていると言えるでしょう。
私が執筆を始めたのは50歳からで、それでも十分間に合いましたが、60歳から始めたらしんどいかもしれません。40代後半から検討を始めて、50歳を過ぎた頃から動き始めればベストだと思います。
■30代の会社員がすべきこと
――30代など若手の頃は、どのように定年に向き合えば良いでしょう。
30代は定年など意識せず、目の前の仕事に注力することです。それが基礎力となり、中高年になったときに、自分の選択肢やキャリアの幅を広げてくれるのです。与えられた仕事を右から左へ流すのではなく、自律した姿勢を持って仕事に取り組めば、なおいいですね。
会社は社会の要請と向き合っている存在です。そこでの経験は、会社以外の場ではなかなか得られません。若い頃はがむしゃらに働くことで自分を育て、行き詰まったら違うことを少しずつ始めるなど、年齢を経るごとに働き方を変えていくのがベストだと思います。
――在職中、それもできるだけ早いうちから趣味ややりがいを持つことが、定年後の豊かな暮らしになるのですね。
そうですね。その際も、主体的な意思が大事です。「みんながしているから自分もしよう」ではなく、自分が本当にしたいことを探す気持ちがあれば、きっと見つかるでしょう。
あとは逆説的ですが、病気やリストラに遭った、役職から降ろされたなど、不幸や挫折を経験した人はうまく次のステップに転換できている人が少なくありません。なぜ自分だけがこんな目に、という経験は、自分を見つめ直す孤独な作業を必要とします。また、所属する会社を客観的に眺めることにつながる。これらが主体的意思を育むのです。すぐには転換できなくても、時を経てみると、結果的にプラスになっている人がたくさんいますよ。
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