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日銀、株 買い一辺倒
4社に1社で「超安定株主」に
日銀の日本株買いが止まらない。異次元緩和の一環で上場投資信託(ETF)=総合2面きょうのことば=を買い入れる金額を2016年7月に年6兆円に拡大してから1年近くがたち保有残高は推定17兆円を突破。日本株保有額では第3位に急浮上した。上場企業の4社に1社で日銀が「安定大株主」になった計算だが、投資活性化で物価上昇につなげる目標の達成は道半ばだ。海図なき株買いの出口は見通せない。
日銀タイム。日本株の個人投資家がこう呼ぶ時間帯がある。午後の取引が始まる午後0時30分からおおむね午後2時まで。日銀は直接買うのではなく信託銀行に一定のルール内で決定を委ねている。相場が下がった時点で買うのが大原則のため、インターネットでは刻々と買い出動を先読みする臆測が飛び交う。
保有総額17兆円
日本経済新聞社の独自推計では上場する3675社のうち、833社で日銀が上位10位内の「大株主」に入った。実際に名簿に表れる株主名はETFを実際に買っている信託銀行だ。ユニクロを展開するファーストリテイリングや半導体製造装置アドバンテストなど日銀が15%超を持つ企業は着実に増えているもよう。サッポロホールディングスなど3社は計算上、筆頭株主になったようだ。
保有総額は推定17兆円を超え、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と米運用会社ブラックロックに次ぐ第3の機関投資家に急成長した。昨年は個人株主が日本株を売り越す中で日銀が有力な受け皿となったとみられる。みずほ総合研究所の大塚理恵子氏は日経平均株価を最大2千円ほど押し上げたとみる。
主要国では例をみない中銀のETF購入は10年10月に始まり、黒田緩和の一環で購入額が急増した。日経平均は6月に2万円を突破。日銀は株価下支えに一定の効果を果たしていると主張する。
企業の間でもアクティビスト(物言う株主)より、日銀が「超安定株主」になってくれるのを歓迎する声が多い。アドバンテストは「株主は選べないが長期で持ってくれればうれしい」という。
プラス面ばかりではない。割安になれば日銀がすかさず動くため「民間の投資機会を奪っている」(ヘッジファンド運用担当)と恨み節も漏れる。様々な情報を反映しながら適切な株価を見いだすのが株式市場の生命線だが、個別銘柄の「価格発見機能」を低下させているとの見方もある。
日銀の悩みも深い。株高で現在は数兆円を超える大幅な含み益になっているもようだが、世界的な金融危機などで日本株が大きく下落すれば特別損失が発生する。
しかも必ず償還期限が来る国債などと違って株式は売らない限り手元に残る。日銀は過去に銀行から買い入れた時価およそ3兆円の株式の売却を静かに進めている。米金融危機などを経てようやく本格売却にこぎ着けたのは16年春で、02年に購入を始めてから10年以上の年月がかかった。
予測できぬ出口
ETFによる日銀の保有分はまだ上場企業の時価総額の3%弱にすぎず、購入を増やしてもすぐに問題は起きないというのが日銀の立場だ。黒田東彦総裁は6月の記者会見で早期の買い入れ減額が「理論的にはあり得る」と発言したものの、ある日銀関係者は「ETF購入減額を急に決めれば瞬く間に株価が急落し、黒田緩和の成果が一瞬で吹き飛びかねない」と強く否定している。
これだけの巨額ETF購入でも物価上昇率は前年比で0%台に低迷し、デフレ懸念は払拭できない。株式市場を活性化しインフレ期待を高めるという目的の実現は遠い。
いまのような経済状況が続けば少なくとも数年はETF購入を続けざるを得ない、というのが日銀主流派の考え方だ。長期にわたり巨額の株を買い続け、事実上売却もしない異形の投資家。強力なカンフル剤を投与しつづける市場はどこへ向かうのか。その帰結を誰も予測できない。
(中村結、浜美佐、宮本岳則)
[日経新聞6月24日朝刊P.1]
上場投資信託(ETF) 純資産総額、最高に
▽…日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)といった株価指数などに連動するように運用される金融商品のうち上場しているものを指す。金などの商品や債券を組み入れるタイプもある。ETFはExchange Traded Fundsの略。個別銘柄の株式と同じように価格が変動し、投資家は取引時間中にリアルタイムで売買できる。
▽…上場していない投資信託と比べて運用コストが低いなどの理由から、個人投資家も取引しやすいとされる。日本では2001年に本格的な取引が始まり、東京証券取引所に上場しているETF銘柄は計209本。17年5月の月間売買代金はおよそ2兆6500億円だった。純資産総額は、5月末時点で24兆821億円と過去最高を更新した。
▽…日銀によるETF購入は金融緩和策の一環として10年10月に始まった。保有残高は右肩上がりに増加し16年7月には年間買い入れ枠を6兆円に拡大した。
[日経新聞6月24日朝刊P.3]
「大株主」日銀、5%以上保有は83社 ファストリや京セラなど
日銀による日本株買いが膨らんでいる。日本経済新聞社の調査では日銀の日本株の保有残高は17兆円を突破し、計算上、発行済み株式数の5%以上を保有する企業数は83社に上る。株式市場の時価総額に占める割合は3%に迫る。企業側からは安定株主になるとの声がある一方で、売買の実態が見えず株主名簿でも日銀の存在が確認できないとして戸惑いの声も聞かれる。
日銀が10%以上の株を保有しているとみられるのは14社。例えば、日銀のファーストリテイリング株の保有比率は15%のもようで、筆頭株主で2割強を保有する柳井正会長兼社長に次ぐ株主とみられる。京セラ株は9.8%を保有しているとみられ、稲盛和夫名誉会長(約3%)の3倍を保有している計算になる。
セコム株の保有比率は8.4%で、創業者の飯田亮氏の約2%を上回るもよう。三菱倉庫では三菱グループ3社の合計保有比率が約8%なのに対し、日銀の比率は10.1%に上るとみられる。
日銀が大株主と見られるある企業のIR担当者は「保有株が売られる局面ではどう対処していけばいいのか」と懸念する。別の企業の担当者も「業績や事業に関係なく株価が上下するので、投資家にどう説明すればいいか難しい」と話す。
市場では日銀による上場投資信託(ETF)買いを評価する声もある。みずほ総合研究所の高田創専務執行役員は「株式需給を支えることで株式市場を安定させ、家計や企業の心理を支える効果がある」と話す。株価を下支えする効果の一側面だ。
一方で、弊害を指摘する声もある。その一つが株価形成のゆがみだ。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストの分析によると、日銀が大株主の銘柄は同業他社に比べ、株価が割高になっていた。
今後、日銀がETFの売却に転じる「出口論」が活発に議論されれば、「日銀が大株主の銘柄は需給悪化懸念から株価が上がりにくくなる可能性がある」と井出氏は指摘する。
もうひとつが「投資家の買い場が減った」との声だ。日銀が年6兆円ペースでETFを購入することで、これ以上売り手がいなくなる「セリングクライマックス」が見えにくくなった。ある銀行系投信会社のファンドマネジャーは「株価が下がり切らず、株を仕込みにくくなった」と話す。
[日経新聞6月24日朝刊P.15]
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