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ヤマトが撤退したアマゾン当日配達「争奪戦」の裏側
http://diamond.jp/articles/-/132225
2017.6.21 週刊ダイヤモンド編集部
ヤマト運輸は総量規制で8000万個の荷物を減らし、当日配達から撤退する方針だ。そこに目を付けた新興勢力が、のろしを上げた。一方、佐川急便と日本郵便はどう出るのか。(週刊ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
「車と人をかき集めろ!」。中堅物流企業、丸和運輸機関の和佐見勝社長はこう社内にげきを飛ばしている。「桃太郎便」で展開する宅配事業を強化するためだ。5月、軽ワゴンを新車でなんと1万台発注。年内に3500台が納品予定だ。中古車も500台ほど手当てした。
「ラストワンマイルは今がチャンス。ネット通販が伸び盛りの中、大手が運ばない当日配達の荷物を誰が運ぶかで、下克上が始まった」(和佐見社長)と鼻息は荒い。
20年間で宅配便の数は急激に膨れ上がり、今や年間約40億個。市場シェアは大手3社で9割を占める。その一方、足元では新興企業がじわじわと勢力を拡大しつつある。近年、企業の物流業務を一括して請け負うサードパーティーロジスティクス、通称「3PL」企業がインターネット通販大手と組み、宅配に手を広げているのだ。
中でも注目されるのが、アマゾンと地域限定で提携する配達業者、通称「デリバリープロバイダ」で、丸和もこれに参画した。
先行者はアマゾンと二人三脚で急成長している。例えばアマゾンの倉庫業務や宅配が売上高の7割を占めるファイズは2013年に創業し、わずか4年で上場を果たした。他にはTMGやSBS即配サポートなどが取引を拡大中だ。
後発の丸和は、生協や大手ネットスーパーの宅配を長年手掛けてきたノウハウを生かし、接客の質で差別化を図る。「早く、丁寧に運べば、大逆転も狙える」(同)。
人材獲得も独特だ。年間250人の新卒採用を目標に掲げており、社内にラグビーチームをつくることで、関東圏では新卒ラガーマン40人超の採用に成功した。この取り組みを関西圏でも進めている。
大手がやらない当日配達をなぜ新興勢ができるのか。前述した通り、ヤマト運輸は通販の荷物を、全国自前の宅配網で運んできた。
一方、新興勢は個々の通販会社に合わせた仕組みを構築する。そもそも3PLにとっては、企業向けカスタマイズはお手の物。通販各社の物流倉庫と連携し、狭いエリアに絞って当日配達に特化する。
さて、ヤマトの本命ライバルの大手2社はどんな一手を出すのか。佐川急便は、ここ数年、宅配よりも企業間物流に主眼を向けている。人材獲得では、東京都と山梨県で、正社員ドライバーの週休3日制を打ち出した。休日には副業もOKで、さまざまな働き方の人を取り入れて労働力不足に対応する。
ダークホースが日本郵便だ。営業合戦ではボリュームに貪欲で、ヤマトに対して安値攻勢を仕掛けてきた。万年3位だが、足元、毎月の取扱個数は対前年比率で2桁増を続けている。郵便受けに入る厚さ3センチメートルの「ゆうパケット」で、個数を伸ばしているからだ。
さらに近年は1300億円を投じて物流拠点を建て替えてきた。新施設では通販会社の在庫を預かり、受注管理から梱包、配達まで一手に引き受けるようになった。
「アマゾンには感謝すべき点も多い」とは日本郵便の幹部。かつて業界は荷主と宅配会社1対1の相対契約が基本だったが、アマゾンが宅配会社を使い分けるようになって、日本郵便もヤマトの牙城に入り込める余地が生まれたという。
ライバルがこけた今は日本郵便にとってまたとないチャンス。だが、難点がある。主力の郵便事業が低迷していて、採算性確保が最重要課題なのだ。そのため高単価客が優先で、大口法人に対しては慎重になっている。
アマゾンの内部資料によると、配達委託先には「23区300カ所の新聞販売店」も候補に挙がる。ただし、これは現実的ではない。
「新聞販売店に宅配のサービスレベルを満たす人材はいない」(物流関係者)からだ。しかしながら、それだけ、アマゾンは当日配達に執念を燃やしているともいえる。
さりとて「アマゾンに食いつぶされてたまるか」と拒絶反応を示す企業もある。「最初は頼み込まれて始めても、力関係は早晩変わるはず」(3PL企業幹部)。
前出のアマゾンの内部資料には「車建て料金で始めた後、個建て契約を両者の合意で決定していきたい」と記載がある。アマゾンは宅配大手と同じように新興勢とも荷物1個当たりの成果支払いを要望。一方、新興勢からすれば、当日配達は再配達が多く、燃料費も人件費も掛かるので、料金を保証してほしい。水面下では、こうした攻防が繰り広げられている。
ヤマトが再び当日配達を行う解はあるのか。ネット通販大国の米国では、日本と同じく荷物が急増してUPSやフェデックスといった大手が苦しんだ。一方で日本と大きく異なるのは、値上げを繰り返して利益を積み増しながら、他の物流企業を買収するなどして、ネット通販に合わせた新しいネットワークをつくっていることだ。
ヤマトが描く未来は前述した通り、自前の宅配網を高度化し、他社に提供するスタイル。一方、今のトレンドは個別の通販会社と3PLの相対だ。ヤマトの戦術は受け入れられるのだろうか。
そして最大のネックは、やはり人手だ。すでに物流倉庫ではアジア系の労働力が欠かせない。外国人労働者が宅配ドライバーになる日も近いかもしれない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部)
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