http://www.asyura2.com/17/hasan122/msg/283.html
Tweet |
ヤマト現場「18時過ぎは鬼の形相」、ホワイト改革は前途多難
http://diamond.jp/articles/-/132224
2017.6.20 週刊ダイヤモンド編集部
前代未聞のサービス残業代190億円を支払ったヤマト運輸。働き方改革を進めるが、現場の実態に即しているかは疑問符が付く。値上げに突き動かされた真の理由に迫った。(週刊ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
「働き方改革? 荷物が減ってないのに『休憩を取れ』ってプレッシャーかけられて、嫌になっちゃうよ」。5月末、首都圏のある支店で働くヤマト運輸のセールスドライバーはこう吐き捨てるように言った。
以前は朝7時半から荷物をトラックに積み込み、8時には配達に出ていた。しかし今では上司から「出社は8時以降」とくぎを刺されている。それでも1日平均140個もの荷物を届けなければならず、13時間も拘束されて休憩は15分ほどしか取れない。ベテランの自負があるので笑顔と丁寧な接客を心掛けているが、18時を過ぎると疲労のあまり、「鬼の形相になってしまう」こともしばしばだ。
ヤマトは4月から働き方改革を推し進めている。全国で6万人いるドライバーの多くが休憩を取れず、長時間労働とサービス残業を強いられていたことが、社内調査により判明したからだ。背景には、インターネット通販の急拡大による荷物の増加と、昨年夏から労働需給がタイトになったことがある。
ところが、冒頭のドライバーの証言のように、現場ではむしろ混乱が増している。
さらに、6月からはドライバーに昼休憩を取らせる狙いで、12〜14時の配達時間指定枠を廃止するという。しかしこれも「現場の実態に即していない」(別支店のドライバー)。朝に積み込んだ荷物を届け、一度支店に戻ってくるのが13〜14時ごろ。すぐに14〜16時指定が待ち構えているから、荷物を積み込み慌てて出発する。14〜16時指定が廃止された方が、夜のピークに向けて十分な休憩が取れるはずなのだ。
経営陣は現場の窮状を改善するために、1年以内に荷物を8000万個減らして、9200人を採用すると言う。しかしある管轄では200人弱を採用しても同じ数だけ辞めていった年もある。本社が進める改革は、「現場を知らない連中がつくった名ばかりのもの」(同)と同僚と言い合っているという。
働き方改革はいわば内部の改革。同時にヤマトが対外的に進めているのが顧客との値上げ交渉だ。
宅急便は最低配達手数料250円に幾つかの経費を乗せた300〜350円が定価となるが、大口法人には個別に特別割引を適用してきた。それは競合の佐川急便や日本郵便とシェア争いをしていた時代は、常とう手段だった。さらに、運ぶ手間が増えるにもかかわらずネット通販の当日配達指定の荷物を、安値で受けてきた。
そこで、大口法人1000社に対して9月までに荷物量の抑制と運賃引き上げを要請。そして27年ぶりに、基本運賃の平均15%値上げに踏み切った。
中でも注目されるのが、通販最大手アマゾンとの交渉だ。本誌の取材では、ヤマトはアマゾンに対して現行の1個270円前後から440円前後へ引き上げを提案し、380円前後を“決着点”にできないか交渉しているもよう。この引き上げ幅は、他の通販会社に対しても大きな衝撃だ。
ヤマトが大口法人に要請した影響はすでに出始めている。通販各社は配送料の一部値上げや、当日配送の中止・縮小を余儀なくされている。交渉の余地なく契約終了を告げられた通販会社もいるもようで、「礼を欠いたやり方でヤマトへの信頼が“恨み節”へと変わってきている」(通販大手幹部)。
ただし、アマゾンなどの荷物が増えたことが元凶と思われがちだが、実は「サービス残業は、ネット通販の荷物が増えるずっと前から常態化している」と現役ドライバーから幹部まで、宅配業界関係者は口をそろえる。労働基準監督署からの是正勧告も今に始まったことではなく、毎年のようにどこかの支店で問題が起きていた。
ところが、潮目が変わった。1月末、国会で働き方改革について答弁される中、ヤマトが「違法労働を繰り返す悪質な企業」として取り上げられ、安倍晋三首相からは「事業所単位ではなく本社も調査して、厳しく対応していく」などの発言が飛び出したのだ。
春闘では、労働組合が出した荷物量抑制などの条件を受け入れ、妥結。その後、約4万7000人に対して未払い残業代190億円を一時金として支払うと表明した。前代未聞の規模と額である。この影響で2017年3月期決算は、営業利益が半減した(下図参照)。
「ヤマトの利益は長年、ドライバーの“無償の頑張り”が支えていたと証明されたようなもの。もうこの手法は通用しない。それなら値上げして利益を出すしかない」と現場は冷ややかに見ている。
振り返れば14年にもヤマトはクール便をずさんに扱っていたことが発覚している。そのときも原因は荷物の増加と低運賃だった。「経営陣は本当に危機感を持っているのか。何度も同じ過ちを繰り返せば、顧客に愛想を尽かされる」(ヤマト社員)と批判は尽きない。
ヤマトには過去に「量の追求」から抜け出す機会があった。
今、ヤマト社内からは「一番悪いのは佐川」と反発する声がある。というのも、コスト割れ覚悟の営業合戦から、“一抜け”したのは佐川だったからだ。13年、佐川は不採算だったアマゾンと決別。そうしてアマゾンの荷物が一気にヤマトへと流れ込んだ(下図参照)。
その時点で、ヤマトはアマゾンに対して値上げ交渉をする余地は大いにあったはずだ。にもかかわらず安値で受け続けたのは、ボリューム欲しさやシェアの追求があったと受け止められても仕方ない。ヤマトは経営計画において19年度に宅配便シェア50%以上を目標値に掲げている。こうした流れから、佐川の単価は改善したのに対し、ヤマトの単価は、500円台半ばに下がった(下図参照)。
真の宅配便改革は安値で運ばず人に投資すること
ヤマトも手をこまねいていたわけではない。荷主が要求する配送スピードに応え、かつ安値受注から脱却するため、宅配網を高度化しようとしているのだ。
具体的には、総額2000億円を投じて巨大物流センターを次々と新設。東名阪の巨大センター間における幹線輸送の多頻度化を図ることで、配送をよりスピードアップし、従来型の宅急便だけでなく、企業向けに一手間かけた荷物の配送や、国際物流も請け負う。
しかし、大口顧客であるアマゾンは近年、各地域で自ら物流拠点を設け、その地域内でデリバリーを完結させている。他の通販企業もさまざまな方法で独自のネットワークを構築しようとしている。ヤマトの構想は先手を打ったように見えたが、現時点では、ネット通販企業のニーズとマッチしない。収益化は予定よりも遅れていて、巨大センターは「宝の持ち腐れ」(物流大手幹部)ともやゆされている。「2000億円は人件費に投じた方が良かったのでは」と社内からも声が上がっているほどだ。
増え続ける荷物に対して見合った運賃を取れず、現場は疲弊する。こうした悪循環を断ち切るには、やはり荷物量を抑制して、値上げするしかないのである。ヤマトは大口法人への交渉などにより、今年度の単価を前年度に比べて5.9%上げる計画だ(上図参照)。
交渉は9月に大詰めを迎える。荷物量の抑制が本格化すれば、現場の状況は改善しそうではある。
とはいっても、ほとぼりが冷めれば、荷主からの値下げ要求や他社との競争環境は、また厳しくなるだろう。そのとき、ヤマトはどうやって利益を確保するのか。いばらの道を突き進むことになる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民122掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。