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実は、世界景気はもう減速に向かっている 「日経平均2万円」も風前の灯火…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51950
2017.06.08 安達 誠司 エコノミスト 現代ビジネス
世界景気はピークアウト間近?
6月に入り、日経平均株価もついに2万円の大台に乗り、株式市場にも明るさが戻った。今週になって、再び2万円を割り込んでしまったが、市場関係者の株価の先行きに対する強気の見方は変わっていない。
強いのは、日本株だけではない。アジア新興国を中心に、年初来高値を記録する国が続出している。例えば、日本の経済論壇ですこぶる評判の悪い韓国の株価は非常に強い。韓国の代表的な株価指数であるKOSPIは2012年から続くボックス圏を抜け、高値をつけている。
むしろ、株価でいえば、日本は韓国をはじめとするアジア諸国においていかれ続けていたのが実情である。そのためか、「ついにキャッチアップの機会が訪れた」と市場関係者の鼻息は荒い。
株価とマクロ経済の「ファンダメンタルズ」の動きは必ずしも一致しないが、最近の日本株の堅調は、昨年終盤から回復基調を強めてきた経済に対する評価の見直しという側面は否定できないだろう。
そして、この日本経済の回復は、いうまでもなく、輸出の回復に起因するものである。例えば、日銀が発表している実質輸出指数は、直近(4月)で、105.7ptだったが、これは、昨年11月から急激に上昇し始めた。この実質輸出指数の伸びは、製造業の業績にも寄与している。
法人企業統計等を利用して製造業の経常利益(対前年比)を要因分解すると、「売上数量」の寄与が大幅に高まっている。これは、輸出数量指数の上昇とほぼ軌を一にしている(図表1、2)。
もちろん、輸出の回復は世界景気の回復によるものである。特に、「Global PMI(世界の企業の景況観指数)」等をみるかぎり、世界景気は、昨年10月から回復基調と強めてきた。
だが、筆者が世界の景気指標を見る限り、残念ながら、やや翳りが見えてきたのではないかと考える。もし、世界景気が減速に転じれば、輸出が牽引している日本の景気も再び停滞を余儀なくされることは想像に難くない。
金融政策の「正常化」はまだ早い!
この「世界景気がピークアウトから減速に転じる予兆」は3つあると考える。@世界的なインフレ率の減速、A中国の景気減速懸念、B世界的な自動車販売の減速懸念、である。
まず、世界的なインフレ率の減速だが、インフレ率は「経済の体温」といわれるように、高すぎても低すぎてもダメである。もちろん、経済の発展段階によって「適正なインフレ率」は異なるが、先進国では、概ね2%近傍、新興国では、概ね4-6%程度だとされてきた。
特に、先進国では、リーマンショックやその直後のユーロ危機によって、主要国のインフレ率は0%近傍(場合によってはマイナス)まで落ち込んだ。これをFRB、ECB、そして日銀等の中央銀行による「非伝統的な超金融緩和政策」によって適正レベルまで持ち上げようとしてきたのがここまでの姿であった。
まずは、インフレ率の減速であるが、確かに昨年までは、日本を除く主要先進国のインフレ率は順調に適性水準に向け、上昇していた。だが、今年に入ってから、多くの国のインフレ率がピークアウトしつつあるようにみえる(図表3)。
その理由については、今回のコラムで書くスペースがないので割愛させていただくが、主に@原油価格の反転が止まったこと(これはトランプ政権のエネルギー政策と北米でのシェールガス、シェールオイルの増産が影響していると思われる)に加え、A各国中央銀行で、超金融緩和解除の流れ(FRBは実際に粛々と実行に移している)が強まったことが影響していると思われる。
さらにいえば、原油等の国際商品市況は、商品の需給や世界景気よりも、FRBによる米国からの「ドル流動性(Global Liquidity)」の縮小、もしくは、縮小の思惑が、価格の反発を止めたのではないかと考えられる。
FRBは、依然として、米国国内の労働需給の逼迫を理由に、淡々と利上げを進めていくという考えを捨てていないようだし、(ドラギ総裁は否定的だが)ECBも、ドイツから派遣された幹部らがテーパリング(量的緩和の縮小)の必要性を主張し始めている。
さらに、日本も、日銀幹部は強く否定しているものの、マーケットでは、QQE(量的質的金融緩和)の縮小を主張する声が強まっており、これが投資家の行動に影響を与えつつあるようにみえる。
筆者は、米国も含め、まだ金融政策の正常化(出口政策)をおしすすめるのは時期尚早ではないかと考えているが、このまま、金融政策の「正常化」の流れが強まれば、経済活動の減速からさらにインフレ率が鈍化していくことになりやしないか懸念している。
中国経済を見舞うボディブロー
2点目の中国の景気減速懸念についてだが、まずは、5月のPMI(企業の景況観指数)が景気判断の分かれ目となる50ポイントを割り込んだ点が指摘できる(「財新伝媒」調べ)。このPMIは、昨年7月以来、50ポイントを上回っていたが、これが、5月に50を割り込んだということだ。
中国は昨年の前半まで景気の減速に苦しんできたが、中国政府の景気対策(財政拡張や銀行融資の拡大)で昨年半ば以降、回復に転じた。昨年8月頃から大きく減少していた社会融資総量が急反転し、4月には、前年比78%の増加となっていた。
中国の景気回復は、サプライチェーンを形成している東アジア諸国の景気を急回復させ、それにともない、日本も半導体や電子部品の輸出を急回復させた。これが、昨年11月以降の輸出の急回復の要因である。
だが、PMIが50ポイント割れしたということは中国、及び、中国を中心とした東アジアのサプライチェーン全体の先行きに対して大きな懸念材料である。
このPMI低下の原因は何なのであろうか?
PMI低下が5月単月の現象なので、まだその動向は不明で早合点は禁物であるが、筆者は、人民元レート下落を防止するための短期金利引き上げの影響ではないかと推測している。
中国の市場金利である「Shibor(上海国際金融市場における短期金利)」の翌日物金利は2015年半ば以降、じりじりと上昇してきた。2015年半ばは約1%であったShibor翌日物金利は現在、3%近傍まで上昇している。翌日物金利の2%近い上昇は、先進国であれば8回分の利上げに相当する。
すなわち、かなりの金融引き締め効果をもたらしてもおかしくないのではなかろうか(図表4)。
この効果もあって、人民元レートは落ち着きを取り戻しつつあるし、人民元買い介入も減少したのであろう、外貨準備の減少も止まっている。
だが、その代わりに金利の上昇は中国国内の経済活動にとってはかなりのコスト高要因となりうる。最近は中国株の下落等もあり、金利上昇が中国経済にボディブローのような影響をもたらしつつあるのではないか。
日本経済の回復基調はいつまで?
3点目は、世界的な自動車販売がピークアウトから減速する兆候である(図表5)。
リーマンショック後の世界経済の回復は世界的な自動車販売の好調によってもたらされた側面が強い。特に、新興国や欧州では、景気対策(環境対策という名目もある)の一環という意味もあり、補助金給付や減税措置などが講じられ、これが自動車販売を急拡大させた。
これに加え、低金利によるローン負担の軽減という効果もあっただろう。だが、自動車は耐久財であり、政策的なインセンティブによる販売増は、需要の前倒しという側面がある。これに加え、先進国の金融政策が転換するという予想が流布される局面では、これ以上の拡大は見込みづらくなる。
自動車販売はリーマンショック後、比較的長い期間継続してきたので、そろそろ「お役御免」ということになっても不思議ではない。ただ、「長期停滞論」が示唆するように、代わりに世界景気の牽引役となる目玉が出てきていない。
今後の世界景気の起爆剤として筆者は「トランポノミクス」に期待していたが、現状、その行方は極めて不透明であり、あまり、期待をしないほうがよいのではないかと考え始めた。そのため、このままではどうしても、世界景気は減速に向かうのではないかという見通しになってしまう。
* * *
以上のように筆者は、世界景気に3つの減速の予兆が見え始めたと考えている。現状のような輸出に牽引された日本経済の回復も、世界景気の減速に見舞われば、途中で頓挫せざるを得ないのではなかろうか。
現に、非製造業の経常利益は、人件費負担(正確にいえば、1人当りの賃金というより、雇用の確保の方が大きい)によって、鈍化しつつある(図表6)。日本経済でいえば、これは、2006年から2007年の状況に似ている。
日本経済の現状の回復はどこまで引っ張れるのか、そして、例えば、株式投資等では、どこで見切りをつけるか、今後はその見極めが重要になってくるのではなかろうか。
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