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三菱UFJ銀行頭取「1年で退任」の全内幕 組織はこうして人を潰す(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/17/hasan122/msg/143.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 6 月 08 日 10:20:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


三菱UFJ銀行頭取「1年で退任」の全内幕 組織はこうして人を潰す
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51897
2017.06.08 週刊現代  :現代ビジネス


「プリンス」と呼ばれた男は、満を持してトップに立った。巨大組織の舵取りをする自信もあっただろう。だが、わずか1年で自らリングを降りた。何があったのか。サラリーマン頭取を襲った悲劇。

もう限界だった

その頃には小山田隆氏(61歳)の「変調」は、周囲にいる誰の目にも明らかだった。
5月18日に小山田氏が全国銀行協会(全銀協)会長として臨んだ記者会見。その場にいた三菱東京UFJ銀行関係者はこう振り返る。

「目が虚ろになっていて、見るからに辛そうでした。当時の睡眠時間はおそらく3〜4時間。疲れ果てた顔をしていて、周囲は心配していました。ただ、実際の会見が始まると、最後の力を振り絞るかのように笑顔を見せて自分の言葉で話していた。

小山田さんは仕事に対して非常にストイックで、会見ではすべての質問に百点満点の回答をしないと気が済まないタイプです。

そのために大量の想定問答集をつくり、しかも『ペーパーを見たくないから』と、できるだけ暗記していました。会見が終わり、『先月の会見より良かった』と言われて喜んでいたんです。

でも、もう限界でした。実際には4月下旬に病院で診察してもらい、『長期療養が必要』との所見が出ていたようです。決算発表と全銀協会長としての会見をやり終えたところで辞めさせてもらいたいと言った。

本当に真面目な人ですから、自分で自分を追い詰めてしまったのでしょう。現在は入院しているそうですが、病状が本当に心配です」

5月23日深夜、日経新聞電子版が三菱東京UFJ銀行の小山田頭取退任の一報を打った。就任からわずか1年という「異例の退任」だ。全国紙経済部デスクが言う。

「寝耳に水でした。メガバンクの頭取は通常4年務めますからね。小山田氏は東京大学経済学部を卒業後、'79年に三菱銀行に入行し、長年、企画部門や大企業担当の営業部門などを歴任。若い頃から『プリンス』と呼ばれた頭取候補でした。

旧東京銀行や旧UFJ銀行との合併の際には、事務方の責任者として統合をまとめ上げた実績もある。親会社である三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の平野信行社長の信頼も厚く、来春には平野社長の後継としてMUFG社長に昇任するとも目されていた。

それがなぜ?各社が後追い取材をすると、小山田氏はメンタルに不調をきたしていることがわかったんです」

翌24日、MUFGは会見を開き、小山田氏の後任に三毛兼承副頭取(60歳)が昇格する人事を発表。平野社長は会見でこう述べた。

「2月に(小山田氏から)体調が万全ではないので、頭取の職責を果たせないという相談を受け、その時から交代を考えていた。5月19日に辞任の申し出があった。誠に残念だが、健康上の理由でやむをえない」

社長退任発表から遡ること、9日前。5月15日にMUFGは'17年3月期の決算発表を行った。この場で「ある人事」が発表されなかったことで、三菱東京UFJ銀行の幹部の間に動揺が走った。

「実は三毛さんは三菱UFJモルガン・スタンレー証券の副社長になることが内定していたんです。決算発表の場で人事を発表し、1年後には証券社長にすることまで内々に決まっていた。

つまり、三毛さんはそのレベルの人材であって、銀行頭取の器ではありません。本人も銀行の経営者としての訓練をしていませんから。

キャリアを見ればわかりますが、国際畑が長く、国内の企画部長や人事部長をやっていないため、経営の勉強が十分ではありません。

ところが、決算発表の日に三毛さんの人事の発令がなかった。それで、みんな『上層部で何か変なことが起こっている』と騒ぎ始めた」(三菱東京UFJ銀行中堅幹部)


 三毛兼承(三菱東京UFJ銀行頭取)Photo by GettyImages

「小山田さんは犠牲者」

蓋を開けてみれば、小山田氏が退任し、その後任に同期入行の三毛氏がスライドしたわけだ。

MUFGの有力OBはこう嘆く。

「組織が人を潰すんですよ。MUFGにはいまだに『三菱銀行の亡霊』が跋扈している。現役が何をするにしても、元頭取や元役員が集まる『相談役会』に諮らなければいけない。そこで否定されたら、現場が決めた方針でも変更を余儀なくされる。たとえば――」

そう言ってこのOBが挙げた例が、来年春に三菱東京UFJ銀行から「東京銀行」の名前を消す案件だった。

5月15日にMUFGが発表したが、その裏では元有力役員の強烈な介入があったという。

「実は2〜3年前から名称を変えるプロジェクトを始めたんです。その時、経営トップ数名で国内の銀行名を『MUFG銀行』にすることに決めた。東京銀行出身者からは文句が出ましたが、三菱でもUFJでもない『MUFG銀行』にするということで納得してもらった。

その後、平野社長が元役員に報告に行ったら、『三菱の名前をなくすなんてとんでもない』と、激怒されたというんです。それで今回、名称が『三菱UFJ銀行』になった。結局、行内で一番立場の弱い東京銀行だけを蹴飛ばしたんです」

相談役会の存在で経営改革が前に進まない――。こうしたガバナンスの機能不全は、監督官庁である金融庁も大いに問題視している。

金融庁関係者が言う。

「MUFGでは、三菱銀行のOBが現役の仕事の邪魔をする傾向があまりにも強い。小山田さんはその犠牲者だったと思いますね。

たとえば、例年6月の株主総会に先立って、MUFGでは『旧三菱役員招待会』なるものが丸の内本店の食堂を占拠して開催されます。MUFGの常務経験者以上で、旧三菱銀行出身者が集まる。最年長の出席者は90代だそうです。

この場で現役の社長や頭取が『先輩の皆様、三菱はこうやって頑張っています』と報告するわけです。

MUFG全体の話なのに、三菱銀行出身者に話を聞き、時に経営に介入される。こんなバカな話はありませんよ。

現役トップがOBたちから『くん』付けで呼ばれ、昔の上司がズラッと並ぶ会議で説明するんですから、プレッシャーは相当なものでしょう。

この場に限らず、三菱東京UFJ銀行の頭取やMUFGの経営陣は、OBたちへの根回しをしないと何も決められない」



金融庁との板挟み

三菱東京UFJ銀行では、副頭取が資料を作って毎月、経営状況を相談役会で説明する。小山田氏も副頭取時代、膨大な資料を作って熱心に説明していたという。

「その結果、相談役たちの覚えもめでたく、頭取になった。ただ、自分が頭取になると、OBたちからの重圧を一身に受けて身動きが取れなくなった。そして徐々に精神が追い詰められていったのでしょう」(全国紙金融庁担当記者)

一方で金融庁からは、OBたちが経営に介入する旧態依然としたガバナンスの改革を命じられ、小山田氏は板挟みになっていたのだ。

もちろん、こうした「相談役会」の弊害を指摘する声もあった。

経営陣の人事を議論する「指名・ガバナンス委員会」委員長で、MUFGの社外取締役を務めるJ.フロントリテイリング相談役の奥田務氏は、平野社長に相談役会の廃止を提案したとMUFG関係者が明かす。

「でも、奥田さんは自分の会社の相談役なんです。J.フロントリテイリングでは今年、相談役制度を廃止すると発表しましたが、現在の相談役は任期満了まで留任するという。

自分が相談役に留まっているのに、よその会社に『相談役制度を廃止せよ』と言っても、まるで説得力がありませんよ。平野さんも相談役制度には触りたくない。抵抗されるのは目に見えていますからね。

本来なら、指名・ガバナンス委員会や社外取締役が行内のしがらみから離れて、OBの介入をチェックし、それを排除しなくてはならない。しかし、残念なことにまったく機能していません」

小山田氏の精神を蝕んでいった原因は、これだけではない。平野MUFG社長の拙速な経営判断もまた、小山田氏の肩に重くのしかかっていた。

それが三菱UFJ信託銀行の法人融資事業を三菱東京UFJ銀行に統合する再編案だ。

「これは、あと1年で退任する予定だった平野MUFG社長が自分のレガシー(遺産)として残そうと決めたんだと思います。年明けくらいから小山田頭取以下、この再編にかかりきりになっていましたが、これは1年でできるようなものではありません。大事業ですよ。

信託銀行から法人融資だけを移すといっても、それだけでは収まらない。法人の預金やデリバティブはどうするのか、具体的なところは何も決まっていませんからね。

しかも三菱UFJ信託銀行の側にも有力OBがたくさんいて、彼らから『三菱東京UFJ銀行に俺たちの事業をそこまで渡すわけにはいかない』という圧力が現役にかかっているはずです。その調整は本当に大変だったはずです」(前出・三菱東京UFJ銀行幹部)


 平野信行(MUFG社長)Photo by GettyImages

新頭取の抱える「不安」

OBと金融庁の間で板挟みになり、上司である平野社長からは無理難題を押し付けられる。このほかにも、マイナス金利による収益の低下、銀行カードローンの問題、グローバル展開のさらなる推進、東芝への融資など、難題は山積していた。

重責に耐えかねて、ついに小山田氏の精神が決壊した――。これが「一年で退任」の内幕だ。

だが、頭取が替わったからといって、三菱東京UFJ銀行が直面する状況が変わるわけではない。同行の前途には、依然として課題が山積みだ。

「三毛新頭取は剣道四段という触れ込みですが、実は心臓に不整脈の持病を抱えています。今も薬を常用しているはずですから、激務に耐えられるか心配です。

小山田さんの退任で、結果的に『天皇』になってしまった平野社長が倒れでもしたら、代わりはおらず経営が行き詰まってしまう。

MUFGにはトップになるべき人材が明らかに少ないんです。それはつまり、経営陣を決めるはずの指名・ガバナンス委員会がまったく仕事をしていないということでもあります」(前出・MUFG関係者)

前出の有力OBは再びこう嘆いた。

「三菱東京UFJ銀行の頭取は、面白い仕事ではないうえに、激務。やるもんじゃありませんよ。毎日、お客さんと飲まないといけないし、週末はゴルフで本を読む時間もないんですから。2年もやると嫌になります。

しかも、OBへの根回しや再就職先の世話までしないといけないため、心労が絶えない。

仮に三毛新頭取が倒れてしまうと、次から次に人材を潰す平野社長の責任が追及されることになるでしょう。昨年12月には三菱東京UFJ銀行の元常務も自殺していますしね。

『いったいどうなっているんだ』という声が若手役員からは上がっていますが、平野社長には届いていない」

異例の人事は、小山田氏個人の問題ではない。三菱UFJフィナンシャル・グループが抱える構造的な問題が、改めて浮き彫りになった。

「週刊現代」2017年6月10日号より



 

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