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『一番搾り』の再成長を掲げる布施孝之・キリンビール社長
安売り規制でビール値上げ 顧客にとっては理解不能
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170606-00000010-pseven-bus_all
NEWS ポストセブン 6/6(火) 7:00配信
毎日の晩酌にビールが欠かせないという人にとっては、納得がいかない話だろう。6月1日から施行された「酒税法等一部改正法」に則り、食品スーパーなどを中心に発泡酒や新ジャンルを含めたビール類の価格が1割〜2割ほど値上がりしたからだ。
「いつもビールを購入していた酒のディスカウントストアは、特売日ともなるとアサヒの『スーパードライ』やキリンの『一番搾り』350mlの6缶パックが1000円以下(※税別)で売っていたのに、6月初めの週末にのぞいてみたら、1100円を超えていました。
ビールはほぼ毎日飲んでいますが、家計もそれほど楽ではないので1円でも安い店を探し回って購入してきたのに……。今後は泣く泣く発泡酒かチューハイに変えようかと思っています」(都内在住の40代男性)
今回の法改正は、まさにこうした安売り販売の商慣習にメスが入った形だ。
これまでスーパーやディスカウントストアがビールを格安で販売できたのは、ビールメーカーから卸売業者、そして各小売店へと支払われていた販売奨励金(リベート)を値下げの原資に充ててきたから。
ところが、大手のスーパーやディスカウンターが販売数量の多さを武器にリベートを得て、さらに赤字覚悟の値下げを続けていたら、町の小さな酒屋の経営は立ち行かなくなる。この不公平感を是正するために、国税庁が取り締まりを強化することになったのだ。
今後、商品の仕入れ値に人件費などを加えた原価を下回る価格で売った業者は、場合によって酒類の販売免許を取り消されるという。
この事態にビールメーカーはどう対応するのか──。
「今年に入って、法改正を前に大手メーカーは相次いでリベートを実質減額している。若者を中心に“ビール離れ”が止まらず、ただでさえ国内市場は12年連続縮小する中、メーカーとしてもこれ以上リベートを積み増して価格消耗戦を続けていても利益は増えない。むしろ安売り販売規制は望ましい姿だと考えている」(全国紙記者)
だが、値崩れを抑えて“適正価格”が守られたとしても、値上げによってますますビールの総需要が減ってしまえば元も子もない。
6月5日に主力ビールブランド『一番搾り』のうまみ成分などをアップさせるリニューアルを発表したキリンビールの布施孝之社長も、そんな痛し痒しの状況に困惑する。
「ビールの価格相場が全体的に上がったからといって、すぐに需要が減りお客様のビール離れが進むとは思っていません。ただ、5月下旬の出荷量は対前年120%と、明らかに値上げを見越した『駆け込み需要』も起きたので、この反動がどれだけくるのか。お客様の購買動向がどう変化するのか注視する必要があります」(布施社長)
ましてや、ビール価格変動による先行きの不透明さは、今回だけで終わらない。2019年には消費税増税が予定され、2020年以降は段階的に酒税の一本化が図られる。
最終的にビールは減税になる見込みだが、その他の発泡酒や新ジャンルビール、缶チューハイやワインなど、その他の酒類を差し置いて再びビール人気が高まる保証はない。一番搾りのリニューアルは、価格変動に負けないための商品力磨きでもあるのだ。
「何とかビールマーケットのダウントレンドを食い止めるためには、価格ではなくビールの価値やおいしさ、売り場の鮮度などをお客様に繰り返し伝えて需要を維持・拡大させていくしかありません。
今このタイミングだからこそ、キリンのフラッグシップである一番搾りを、長期的成長に向けた“再成長元年”と位置付けてリニューアルすることにしたのです」(布施社長)
とはいえ、相変わらず家計の節約志向が根強い中、消費者はまず値段に敏感に反応してしまうのも当然だろう。経済誌『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐がいう。
「今回のように原材料費の高騰でもなく、税金が上がる局面でもないのに値上げが行われるのは、消費者にとって理解できないでしょう。
小さな酒屋を守る名目で“販売の正常化”といわれても、他の食品や家電などでも廉価販売は普通にやっていますし、小売店の経営努力で販売促進的に行なった安売りまでもが規制されるような事になれば、若者だけでなくビール好きな40、50代の顧客も離れかねません」
果たして、庶民の消費行動をガラリと変えてしまうほどの酒税改正にどれほどのメリットがあるのか。
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