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東芝が倒産する日〜「日本経済史上最大級の惨事」はいつ起こるのか カウントダウンが始まった
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51816
2017.05.23 大西 康之 現代ビジネス
原発事業の失敗で膨らみ続ける巨額の借金返済のために、虎の子の半導体メモリ事業を売却し、「解体」の道を突き進む東芝。だが、ジャーナリスト・大西康之氏は「この売却がスムーズにいくとはとても思えない」と懸念する。
電機業界を30年近くにわたって取材し、新刊『東芝解体 電機メーカーが消える日』を上梓した同氏の分析とは──。
存続をかけた「ディール」
東芝再生の1丁目1番地とされる半導体メモリ事業の売却に暗雲が垂れ込めている。
5月19日の二次入札で売却先が確定するはずだったが、「本命」とされる官製ファンド、産業革新機構と米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)連合の準備が整わず、結論は6月に持ち越された。
4月11日の記者会見では「5月19日の二次入札で東芝メモリの売却先を決める」と行っていたが、6月に持ち越された
東芝の存続をかけたディールは、あまりに「変数」が多く、解が出ないまま「時間切れ」になる確率が高まってきた。
東芝はこの事業売却で2兆円を調達し、2018年3月期末までに債務超過を解消することを目指している。
失敗すれば二期連続の債務超過で、銀行に「破綻懸念先」とみなされ、融資を受けられなくなる。つまり「倒産」だ。
東芝の銀行借入は約1兆2000億円。半分をメインと準メインの4行、残りの半分を地銀、信金などから借りている。
東芝は2017年3月末時点で5400億円の債務超過に陥っている。普通なら既に「破綻懸念先」に区分され、銀行が融資を引き上げてもおかしくない。
銀行団が融資を続けているのは、「17年度中に半導体メモリ事業を2兆円で売り、債務超過を解消する」という東芝の計画を信じているからだ。
東芝は、融資をつなぎとめるために、何が何でもディールを成功させなくてはならない。
「三次入札」が実施される不思議
しかし東芝の命運をかけたディールは早くも躓いた。通常、この規模の大型案件は二度の入札で買い手が決まる。
一次入札で「様子見」の応札を振り落とし、本気で買いたい企業だけに絞り込んだ二次入札で勝負を決する。故に二次入札は「最終入札」とも呼ばれる。
応札したのは4陣営。
冒頭で紹介した産業革新機構・KKR連合、シャープを傘下に持つ台湾のEMS(電子機器の受託生産)鴻海(ホンハイ)精密工業、米半導体メーカーブロードコム・米投資ファンド、シルバーレイク連合、そして韓国半導体メーカー、SKハイニックス・ベインキャピタル連合である。
しかし産業革新機構・KKR連合は政策投資銀行や日本の電機メーカーにも出資を呼びかけるなど、資金集めや投資回収の方法を巡って調整が遅れており、応札次に金額を提示できなかった。
一次入札の最高額はホンハイが提示した3兆円弱だったが、産業革新機構・KKR連合が集めた資金はまだ2兆円に及んでいないと見られる。
東芝は産業革新機構・KKR連合の体勢が整うのを待ち6月に三次入札を実施する構えだが、他の応札者からは「おかしい」との声が上がっている。
国際商慣行に則れば、二次入札が「ファイナル」であり、そこで金額を提示できなかった産業革新機構・KKR連合は、本来なら資格落ちのはずだ。
しかし東芝は本来の締切である5月19日に間に合わなかった産業革新機構・KKR連合の準備が整うのを待つ構えだ。
背後には、ホンハイやSKハイニックスといったアジア勢への売却を「技術流出」と捉えて忌み嫌う経済産業省の意向がある。
「原発推進」企業・東芝を救いたい経産省
世耕弘成経産相はかつて、東芝メモリが技術流出の恐れがある外資企業に買収されそうになった場合「外為法を使って阻止することも検討する」と語っている。
ホンハイ、SKハイニックス・ベインキャピタル連合を「除外」すると、残るのは産業革新機構・KKR連合とブロードコム・シルバーレイク連合。
経産省が、自分たちのグリップが効きやすい産業革新機構・KKR連合に買わせたがっているのは見え見えだ。
だが産業革新機構・KKR連合の提示金額がアジア勢より低かった場合、「技術流出の懸念」という、曖昧な理由でアジア勢を振り落としたのでは、東芝の株主や債権者(特に銀行)が納得しないだろう。
2016年にホンハイがシャープ買収に名乗りを上げた時も、「技術流出」を懸念する経産省は産業革新機構に対抗の買収案を出させたが、シャープのメーンバンクは最終的に出資金額の大きいホンハイを選んだ。
今回も構図は同じである。
東京電力福島第一原発の事故後も「原発推進」の旗を下ろさない経産省。
その経産省が原子力延命のためにひねり出した「原発の海外輸出」という「国策」に忠実に従ったのが東芝だった。
その結果、東芝は米国の原子力事業で1兆円近い損失を出して存亡の危機に陥った。
東電を筆頭とする電力会社に地域独占を認め、ピーク時には年間4兆円を超えた設備投資が東芝など重電大手を潤した。
この社会主義的な構図こそ、日本の総合電機の国際競争力を弱めた元凶である。詳しくは拙書「東芝解体 電機メーカーが消える日」(講談社現代新書)を参照いただきたい。
この甘えの構図を断ち切らない限り、東芝の真の再生は実現しないはずだが、それでも東芝は国にすがる。
世耕大臣の詭弁
5月17日、国会の経済産業委員会で民進党の近藤洋介議員が世耕大臣に噛み付いた。
「東芝は現在、決算について監査法人から同意意見をもらえない異様な状況にある。その会社に産業革新機構を通じて公的資金を投入するのは、大いに問題だ」
銀行の融資継続すら危ぶまれる会社に、何千億円もの血税を投入しようというのだから、野党が懸念するのも当然だろう。世耕大臣はこう答えた。
「東芝の会計に問題があることは承知しているが、産業革新機構が投資する東芝メモリは子会社として成長性がある。
投資によってオープンイノベーションが進むと産業革新機構が判断し、その件が経産省に上がってきたら、私はその判断を認めるだろう」
詭弁である。
東芝が東芝メモリを売却するのは、オープンイノベーションを促進するためではなく、原子力事業の失敗によって陥った5400億円の債務超過を解消するためである。
すなわち「東芝救済」だ。
しかも救済できる見込みは極めて薄い。何千億円もの血税が泡と消えかねないギャンブルなのである。
しかし経産省内部には「液晶パネルと半導体メモリでは技術の重みが違う」という意見があり、世論の反対を押し切って半ば強引に、産業革新機構・KKR連合に東芝メモリを買わせるかもしれない。
恐ろしい「偶発倒産」のシナリオ
だが、今度は別の障害が立ちはだかる。
東芝の半導体事業のパートナー、ウェスタンデジタル(WD)だ。
これまで東芝の四日市工場などに共同で巨額の投資をしてきたWDは「東芝は、自分たち(WD)の同意なく東芝メモリを他者に売却することはできない」とし、米国の裁判所に売却の差し止めを申し立てた。
WDは、19日の二次入札には参加していないが、これとは別に、自社が東芝メモリに過半を出資する提案をしている。
東芝にとって手っ取り早いのは、産業革新機構・KKR連合にWDを巻き込むことだ。
経産省はなぜだか理由はわからないが、日本企業が米欧企業に買収される場合は「技術が流出する」と騒がない。
だがWDが加わると、今度は中国が黙っていない。スマートフォンやパソコンの生産が集約された中国は今や、世界最大の半導体の買い手である。
その中国の独禁当局が「ノー」と言えば、産業革新機構・KKR・WD連合による東芝メモリ買収は成立しない。
NAND型フラッシュメモリは東芝メモリと韓国サムスン電子、WDが圧倒的な世界シェアを持つ。WDが東芝メモリを買えば、市場はさらに寡占が進み、供給側の価格支配力が強まる。こうした場合、主要国の独禁当局が認めないと買収は成立しない仕組みになっている。
つまり、現在、既定路線として報じられている「東芝メモリ売却による債務超過の解消」は、絵に描いた餅なのだ。
計画通り今年度中に東芝が東芝メモリを売却し、債務超過解消のための資金を手にする可能性はそれほど高くない。資金調達に失敗すれば、待つのは法的整理である。
滝壺に落ちるとき、最後まで流れに抗って後ろ向きに落ちると、後頭部を岩に打ち付けて命を失う。
前を向いて自ら滝壺に飛び込んだほうが、早く浮かび上がって助かる確率は高くなる。
今東芝が置かれているのは、そんな状況だ。
最も怖いのは、東芝が手形の不渡りなど不測の要因で偶発的に倒産するシナリオだ。取引先や株主、債権者、従業員に甚大な被害を及ぼす。
東芝メモリが首尾よく売れれば問題はないが、そこにリスクがある以上、プランBを準備しておくのも経営陣の責任である。
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