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日本経済に次なるリスク!巨象「三菱重工」が東芝みたいになってきた 問題は「飛ばないジェット機」だけじゃない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51705
2017.05.19 週刊現代 :現代ビジネス
戦後ニッポンの高度成長期を支えた巨象が、足元から揺らぎ出した。モノづくりの底が抜けたかのような失態が止まらず、次々に損失計上する事態に――。図体はでかい。倒れれば被害は甚大だ。
1年で営業利益が半分に
4月26日午後3時。
この日の株式マーケットが閉じようとしたその瞬間、東京証券取引所が運営する情報伝達システム上に三菱重工業をめぐる情報が映し出されると、市場関係者に衝撃が走った。
この1年で、営業利益が半減した――。
三菱重工が投資家向けに開示した財務資料には、そんな実態が記されていたのである。
三菱重工がこれまで投資家に開示してきた各種資料によれば、1年前の2016年5月段階では、'17年3月期に〈3500億円〉の営業利益を確保するとの見通しを示し、これは〈キャッシュフローやバランスシートの状況、受注残工事の質などから、達成可能〉と胸を張っていた。
'16年3月期の営業利益が3095億円だったことを考えれば、1割強の増益という強気な業績予想を出していた形である。
それが今回開示した最新資料では、弱気な文言がズラリと並ぶ状況に一転。実際にその文面を見ると、〈火力事業の売上高の減少〉や〈商船のコスト悪化〉、さらには〈MRJ(註・三菱重工が開発している国産ジェット旅客機)の開発費増加〉などの損失イベントが立て続けに起きているとの実情を吐露。
その結果、営業利益は従来予想を〈下回る見込み〉で、〈1500億円〉になりそう……。つまり、たった1年で営業利益が約52%も激減することを初めて明かしたのである。
「言うまでもなく、営業利益は会社が本業で稼ぎ出す利益のこと。それが1年で半減するとは、経営の異常事態と同義です。
案の定、情報が駆け巡った翌27日は、株式市場が開く午前9時前から三菱重工株に対して、いくらでもいいから売りたいという注文が50万株以上も殺到。午前の相場で、同社の株価は一気に急落した」(大手運用会社ファンドマネージャー)
実際、三菱重工の経営の現場ではいま、モノづくり企業としての根幹を揺るがすような事態が進行している。
三菱重工は、原発、宇宙ステーション、航空機、艦艇などに及ぶ約700の製品を抱える日本最大の重厚長大企業だが、そうした主要製品の現場で設計変更、納入延期などが勃発。
その度にコストが積み上がり、売上高3兆円超、全世界8万人超の社員を抱える「巨象」が大きく揺らぐ事態になっているのだ。
最も象徴的なのが、MRJの現場。半世紀ぶりの国産旅客機と期待されたものの、'08年の開発開始から5度も納入延期をし、当初'13年としていた納入開始時期がいまだ見通せない「飛ばないジェット機」と化している。
「見切り発車」の経営陣
「現場は明らかな経験不足で、信じられないミスやトラブルが絶えない」と、愛知県の開発現場の実情に詳しい関係者は明かす。
「たとえば、MRJは安全性の検査をクリアする型式証明を取らなければいけないが、日本人技術者にはその経験値がほぼない。
そのため、安全性の証明方法、試験の仕方は手探りで進めたが、昨年に海外技術者から最新の安全性対策には不十分と指摘を受けた。結果、2万本以上という途方もない電気配線の配置を全面的に見直さなければならなくなった。
これはほんの一例で、試験飛行のときに警報がビーと鳴った際、警報機に問題があるのか、警報の原因現象が問題なのか、すぐになにが悪いのかわからないということもあったようです。
幹部たちは『知見不足』と言うが、それは最初からわかっていたことで、それ以上に準備不足が否めない」
MRJだけではなく、大型客船事業の現場も厳しい。'11年に海外クルーズ会社から約1000億円で2隻受注したものの、設計・仕様変更が度重なり、ついには受注額の2倍以上(2500億円規模)の特別損失を計上する羽目になった。
「10年以上も大型客船の建造から遠ざかっていたため、いざ建造を始めたら能力不足が次々に露呈した。たとえば10年の間にデジタル化が進んだことで無線通信ワイファイを全室完備しなければいけなかったが、そんな初歩的な作業からして手こずる始末。
また、大型客船は『海の上のホテル』と言われ、船上にプール、スケートリンクなどを作るが、ノウハウがないため基本設計段階で発注側から相次ぐやり直しを命じられた。しかも、納期を守ろうとするあまり、基本設計が固まらないうちから材料調達などを進めた結果、設計仕様の変更後に再び調達先変更をしなければいけない悪循環にもはまった」(ライバル社幹部)
造船事業をめぐっては、商船三井に引き渡した貨物船が、インド洋を航海中に真っ二つに破断する信じられない沈没事故まで起きている。
一事が万事この調子で、原子力発電事業ではアメリカで建設された原発の蒸気発生器を納入したが、その配管が破損して水漏れが発生して廃炉になっている。
こうした事態の背景として指摘されるのが、経営陣による「見切り発車」――。
同社の内情に詳しい金融機関幹部が言う。
「佃和夫現相談役が社長時代にMRJの事業化を決定した際、幹部の間でもハイリスクだとする声があった。
しかし、航空機部門で新興国勢が台頭してきたことへの危機感があり、このタイミングしかないと事業化にえいやっと踏み切った経緯がある。大型客船事業を受注したのは大宮英明現会長が社長の時代で、実はその直前の数年間、客船の大型商談で連続して受注に失敗していた。
結果、受注優先に走り、最新の大型客船建造ノウハウの不足を認識しながら、過去の経験で乗りきれると楽観して突き進んだ」
手掛ける製品が重厚長大なだけに、失敗した時の損失もその分巨額になることはわかっていたはずなのに、焦りから甘い経営判断に傾いた……。
佃氏は本誌の取材に「もう経営から離れた身。現経営陣は一生懸命にやっているし、彼らに任している」と語るが、負の遺産を背負わされた現社長の宮永俊一氏からすればたまったものではない。
日立との泥沼裁判
一方、当の宮永社長自身も「'18年3月期に売上高5兆円を目指す」とぶち上げて改革路線を突き進んでいるが、「その急激な改革に現場がついていけていない」と三菱重工現役社員は語る。
「宮永社長は、『GEなどの海外勢と伍して生き残るには売上高5兆円が必要だ』と社員の尻を叩いています。が、もともとうちは重工業なので一つの仕事を成すのに時間がかかる社風。急にスピード感を求められても、『そう簡単にはできない』『勝手なことばっかり言いやがって』というのが現場の本音です。
宮永社長は各セクターが強い権限を持つ従来の縦割り組織を破壊しようと、門外漢を畑違いのセクターに配置する異例人事や、セクターが持つ機能を本社に戻すなどの『聖域なき改革』も断行しているが、これが現場のモチベーションを下げている面も否めない。稼いでいる部門の利益が、MRJなど赤字部門に投じられるのも、稼ぎ頭のセクターの社員からするとおもしろくない」
長く三菱重工をウォッチしているアナリストはここ数年、事業説明会に登場する各事業部門トップたちの姿を見て、違和感を覚え始めたと言う。
「社長の無理難題に現場担当者も頑張ってこたえようとしているけれど、なかなかうまくいかない……そんな本音が隠し切れない場面が目立つようになってきた。
いまの三菱重工は、売り上げや受注というボリュームを取りに行くトップダウンに対して、現場が疲弊している。
一旦、無理な数値目標を取り下げて、態勢を立て直すべきでしょうが、宮永社長に改革の手を緩める気配はなく、この5月には新たな人事施策を発表する予定。東芝のように、プレッシャーを感じた現場が『数字のお化粧』に走らないかという危惧すら感じるようになってきた」
巨象の内側から沸き起こり始めたこうした異変が、経営をむしばみ出しているのだ。
追い打ちをかけるように、新たな巨大リスクも急浮上してきた。電機業界に精通するコンサルタントが指摘する。
「三菱重工は'14年に日立製作所と火力発電事業を統合したのですが、その統合前に日立が獲得していた南アフリカの不採算案件について、約7600億円を支払うよう請求しています。
日立側は『法的根拠がない』と突っぱねており、両社の交渉は長期化が必至。三菱重工は約3800億円分の請求権の一部をすでに資産計上しており、仮にとりっぱぐれれば、その分を損失計上しなければいけない可能性がある」
前述したように三菱重工の営業利益は1500億円なので、それが一気に吹き飛ぶインパクトだ。
さらにMRJをめぐっても、追加損失リスクが出てきた。ジャーナリストの松木悠氏が言う。
「MRJの主な販売先であるアメリカでは、スコープクローズという機体への制限条項があります。MRJはこの規制が緩和されることを見越した米航空会社から多く受注しているが、いまだその規制緩和が実行されていない。このままではMRJの88席クラスがアメリカで運航できず、最悪の場合は大量キャンセルのリスクも出てくる」
メインバンクの本音
それだけではない。三菱重工は、「フランスの原発大手アレバグループに追加出資する見込みだが、アレバは赤字体質で、将来的にも欧米で原発需要が伸びる見込みは薄い。他事業のリスクがあるところ、さらに原発リスクを抱え込むのは危険と言わざるを得ない」(龍谷大学の大島堅一教授)。
最終損益ベースでは三菱重工はすでに赤字に転落している中、こうした「爆弾」が火を噴けば新たな日本経済のリスクになりかねない。果たして、大丈夫なのか――。
三菱重工社外取締役で、メインバンクの三菱東京UFJ銀行元頭取の畔柳信雄氏は次のように答えた。
「(懸案は)ひとつひとつ片づけてきていますから、率直に言ってそれほど心配はしておりません。MRJはもともと息の長い仕事ということで、みんな覚悟をして取り組んでいる。(資金繰りに関しても)きちっと押さえるところは押さえた経営をしています」
しかし、この「楽観論」を鵜呑みにしてもいいものか。というのも、三菱UFJフィナンシャル・グループは三菱重工の大株主だが、2月末までにその保有株数を大きく減らしている。
「同グループが3月に関東財務局に提出した資料によれば、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行などグループ数社の保有株数は全体の8.58%だった。それが、直近では7.29%にまで急減。単純計算で4000万株以上も減らしている」(前出・アナリスト)
実は資金繰りをめぐっても、三菱重工はこの3月末に横浜・みなとみらい地区に所有していた巨大不動産を売却。すでに損失穴埋めなど財務基盤の強化に走り、昨年にはグループ内の不動産事業を分社化して、JR西日本にその株式も970億円で売却している。
「三菱重工には売却できる資産もあり財務的な余力はあるが、問題は本業の稼ぐ力が低下している可能性があること。難易度の高い大型プロジェクトが増える中、プロジェクト・マネジメント力がそれに対応しきれていない面がある。同社にとっては、ここ1年が収益力改善に向けての正念場となるでしょう」(S&Pグローバル主席アナリストの柴田宏樹氏)
持てる資産を吐き出し、分社化した事業を売却する……その姿は、あの東芝がたどった道にそのまま重なってきたように映るのである。
「週刊現代」2017年5月20日号より
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