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「やったもん勝ち」ネット業界のイノベーションが世間を犯罪まみれにするまで 最先端技術を駆使した「泥棒市」に見るマネーゲームの異様
http://bunshun.jp/articles/-/2385
5/4(木) 7:00配信 山本 一郎 文春オンライン
先日、私もお世話になっているフジテレビ系「とくダネ!」でご一緒する菊川怜が、カカクコム社やクックパッド社の経営で名を馳せた御仁と結婚するという話になり、新しい形のトロフィーワイフを発展的に世にプレゼンできた感じで良かったのではないでしょうか。夫婦というものは山あり谷ありなので、いろんな事態が発生し、そしてまた文春のお世話になる危機感も抱きつつ良い結婚を、相応しい人生を送っていただきたいと心から祈っております。
なぜネット界隈の不祥事は一般的な話題になりにくいのか
そのクックパッド社も経営陣のドタバタですったもんだしていました。レシピサイトとして乳児に危険とされるハチミツ入りレシピを離乳食として紹介したものを削除するのしないの、ほかの安全性の微妙なレシピをどうするのという議論が沸き上がっていたのは記憶に新しいところです。業者寄りの目線で言うならばクックパッドもある種のもらい事故であって、以前にネットの健康情報で問題のある記事を量産していたDeNA社のキュレーションサイト問題があってからみんな神経質になっている部分はあるんですよね。
一般的な話題になりにくいネット界隈の問題 ©iStock.com
そして、問題はこの辺のICT(情報通信技術)系サービス企業に不祥事が続出しているという点にあります。じゃあいままで不祥事がなかったのかと言われるとそうでもないのですが、ネット界隈というのは経営者も利用者もネット専門媒体も距離が近いために、なかなか一般的な話題として騒がれるような事件にまで成長しないというのが辛いところなのです。そろそろソーシャルゲーム業界も新たな火が噴き上がりそうですし、持て囃されていたハードウェアベンチャー界隈もUPQ社という新興企業が無い機能を有ると宣伝し自社製品を売り捌いた挙句に後から「そんな機能はなかった」ことが発覚して騒ぎになっていました。
「一万円札5枚が、5万9500円で出品される」問題を再考する
そんななか、NHKでもようやく報じられることになったのがメルカリやヤフオク!(旧・Yahoo! オークション)などの利用者同士の売買を仲介するネットサービスで起きていた「現金出品」のあれこれです。文春の読者の方であれば、インターネット上で「一万円札5枚が、5万9500円で出品される」のを見てすぐピンと来た方も多くいらっしゃるかと思うわけですが、これはもう90年代からあるクレジットカードの現金化商売がネットに乗り出してきたというネタなんですよね。つまり、とにかくいま現金が欲しい、借金さえできなくなった多重債務者がカード決済で現金を得る手段として、ネットオークションを利用しているのです。もちろん、今回の現金出品に関しては、メルカリなどは売買に仲介手数料を取るため、一時は利用規約を古い紙幣も出品可能なようにわざわざ変更していました。実際に、古い紙幣が売買されていたかなどメルカリ側は確かめようがないので、結果的には野放し黙認であり、このような適法性が疑わしい出品があったとしても収益に結びつくならいいかという気持ちがあったんじゃないのと邪推されても仕方がない展開になっておるわけであります。
さすがに批判が殺到したのでメルカリもそのような出品があれば削除する方向で管理するようにはなったのですが、今度は一万円札を折り曲げて福沢諭吉の顔で泳ぐ魚のオブジェとして出品されたり、果てはぱちんこやパチスロなどで換金用の具として使われる特殊景品が出回るといった事態にまで発展しました。みんなよく考えるなあと思うわけですけど、基本的には法的に認められる利息制限の枠内でキャッシングをしてきた業者は昔から壺や古い食器などの骨董品や絵画などの美術品といった「値段がはっきりしない品物」を使って、中古品を扱う故買商のスキームで資金調達をしたり、お金が足りない人に資金を融通したりしてきたわけです。モノの値打ちに敏感な仕事を長年してきた人たちからすれば、メルカリも含めたネット業界の浅い知見など赤子の手をひねるようなものでしょう。
ネットオークションの利便性と「盗品捌きの泥棒市」
このような問題のある出品が乱立することは、そもそもがネット業界を取り巻く法的枠組みが弛みまくっている証拠じゃないかと思うわけです。本当にこの方面が有望なのであれば、銀行がバックにいる消費者金融はとっくに参入しているはずなんですよ。それでもやらないというのは、消費者トラブルになったときに企業イメージやブランド的に取り返しのつかないダメージを負うことになるうえ、金融庁から具体的な指導があったら営業を止められかねない危惧があるからなのです。実際、今回のインターネット上での適法性の疑わしい出品に関しては、問題を認識している金融当局が介入することが予想されるばかりか、日本維新の会の丸山穂高議員が国会で麻生太郎財務相に質問までしてしまって、一般的にはリーガル大敗北事例だろうとも思うわけです。
インターネットオークションで不正販売されたトラのはく製(右、中央)と毛皮(左)(東京・警視庁牛込署) ©時事通信社
メルカリに限らず、インターネット上でのサービスは多かれ少なかれ一定の匿名性が担保されていて、簡単な登録さえできればすぐに出品したり落札できたりする利便性が消費者にウケて伸びている側面はあります。しかしながら、簡便な登録で売買ができるということは、業者側はその出品者や落札者が誰なのか事件にでもならない限り把握しなくて済む一方、犯罪で収益を上げようとする側はその品物がどのような経緯で誰から得たものか表明せずに売買が完結するという格好の盗品捌きの泥棒市に化けてしまうことにもなります。
ポイント決済システムがマネーロンダリングの温床になりかねない
ネットオークションで現金出品が横行する理由は先に述べたように、金に詰まった貧困者が消費者金融の大回転(複数の消費者金融の金利ゼロサービスを使いながら借り替えて回すこと)もできなくなって、しまいにはメルカリへの支払いをカードにすることで事実上のカードローンの現金化までできるようになります。そればかりか、マネーロンダリングの疑いを持たれかねない取引も出てきかねません。
というのは、メルカリは出品者の落札収入が口座に振り込まれることなしに、そのままメルカリ内で使うことができるのです。なので、その売上金を使って現金を落札すれば、本人特定が容易な銀行口座などを紐づけることなしに盗品その他を売り捌いて得た売上金を現金に換えることができるわけです。これらのビジネスがマネーロンダリングになりかねないという指摘はかねてからあるわけですけれども、手口情報がここまであからさまになって、金融庁も消費者庁も警察庁もこの問題を認識し、国会でも質問が出るぐらいの話になっていることは、事業者自身ももう少し状況をよく認識していくべきだと思うわけであります。
「やったもん勝ち」になることもあり得る、この状況
そのメルカリも、時価総額1000億円を超える未上場ベンチャー企業として著名になる一方、そもそもユーザーの預かり金の管理を行うのに必要な資金移動業者としての登録をしないなど、課題も多く抱えていました。さすがに犯罪行為を助長するようなサービスが時価総額が大きいからと言って上場させられるような真似が起きると、東芝よりもひどい状況になるんじゃないかと思うんですけどね。
それもあって、類似のビジネスをしているところでは、早くも売り逃げの話が出てきました。それはいつか来たソーシャルゲーム会社や、キュレーションメディア、バズ系ニュースサイトの高値売却事案と同様に、やったもん勝ちの状況になることもあり得るわけですよ。そのうちグラビアアイドルをトロフィーワイフにしてシンガポールに逃亡するのと同様の事例が、いくつも起きるようだと真面目に事業に取り組んでいる企業ばかりが馬鹿を見ることになりかねないのが気になりますね。
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