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「ニューオータニ」は早くも五輪後を見据えサービス向上策を練る
ホテル不足どころか作り過ぎ? 五輪後には悲劇のシナリオも
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170504-00000009-pseven-bus_all
NEWS ポストセブン 5/4(木) 7:00配信
訪日外国人客が4年連続で過去最高となる2400万人(2016年)を突破するなど、2020年の東京五輪開催に向け、インバウンド景気のさらなる拡大が期待されている。特に“五輪特需”を逃すまいと躍起になっているのが「ホテル業界」である。首都圏を中心に、新規開業や大幅リニューアルが続々と予定されている。
そのため、一時懸念されていた東京のホテル不足も何のその、大幅緩和されるとの予測さえ出始めている。しかし、祭りの後にやってくる“静けさ”の心配はないのだろうか──。ホテル評論家の瀧澤信秋氏が警鐘を鳴らす。
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政府主導によるインバウンド増への期待感、そして2020年への高揚感の中にあるホテル業界。日々多くの現場を取材していると、ホテルによる温度差が大きくなっていることが伺える。
もちろん立地や特性など各ホテルの持つ条件は異なるが、この好機を逃すまいと邁進するホテルが多い一方で、根拠なき楽観主義は危険だというスタンスを保つホテルも存在感を際だたせている。
確かに全体としてインバウンド数は増加しているものの、2016年でみると延べ宿泊者数は対前年比でマイナスに転じている。しかも、宿泊者数のうち85%を占めるといわれる日本人宿泊者数も減少している。
そんな状況の中、ホテルの新規供給客室数は、2018年までに東京だけで約1万9000室、全体としても2割増加する見通しで、ホテル不足どころか供給過剰の懸念も出始めている。
さらに、ホテル業界の脅威ともいえる民泊の動きもますます活発になっている。民泊新法は参入のハードルを上げると同時に、クオリティやコンセプト重視型民泊のフェーズ突入への足がかりとなり、ホテルライクなサービスを提供する民泊の出現が想定される。
少子高齢化や労働人口の減少などによる人手不足もホテル業界にとって深刻な問題だ。そもそもサーヒス業自体が深刻な人手不足。外食産業では店の閉店や深夜営業の中止に追い込まれ、経営に打撃を与えているケースも多い。ホテル業界もこれだけ大型ホテルやフルサービスホテルの開業が相次げば、スタッフの質以前に、運営が困難になるほど深刻な人手不足に陥ることは充分予見できる。
将来性や収益見通しの不透明さが一層叫ばれるホテル業界であるが、「アパホテル」のように、一貫して強気の展開で知られるグループもある。出店スピードはもとより、レベニュー・マネジメント(需要予測を基に販売を制限するなどして収益を最大化する)手法でも注目されるホテルだ。
2019年秋、横浜ベイエリアに開業予定の「アパホテル&リゾート 横浜ベイタワー」は客室数2311室と国内有数の規模。東京オリンピックをにらみ、増加傾向にある観光・ビジネス客の取り込みを狙う。一方で、市内のホテル関係者からは値崩れを懸念する声も出ている。市内ホテルの稼働率は現状では好調だがADR(平均客室単価)の下落も指摘されており、競合激化は避けたいというのが本音のようだ。
インバウンド需要は、為替変動をはじめ、治安・紛争、環境問題でも一気に冷え込む要素をはらんでいる。いくら稼働率が好調でも、熊本地震のように予測できない事態によって、経営に打撃を与えるケースはある。
そして、五輪開催でもっとも恐いのが“オリンピック型不況”だ。
開催まではインフラ整備等の特需効果で景気が良くなる一方、五輪が終わると特需剥落という反動で景気が悪くなる。事実、五輪開催決定から7年間で客室数が倍増したリオでは、五輪後客室単価はもちろん稼働率も下降、閑古鳥が鳴いているホテルが多いという結果に。
東京オリンピックはコンパクト五輪がコンセプトとはいえ、やはり開催以降の懸念材料は多い。そもそも2020年頃からの生産人口の減少加速、2022年からは団塊世代が後期高齢者になる「超高齢化時代」に突入する。
いずれにせよ、ホテル業界は五輪後に訪れる急激な稼働率やADR低下による経営難という最悪のシナリオをも念頭に置き、インバウンド率の抑制や日本人客の感覚に見合った料金変動を想定すべきだろう。
すでに「ホテルニューオータニ」では、五輪後の客室数供給過剰による需要減を見越した上で、サービス向上や目的研修などに力を入れている。伝統あるホテルだけに、社員一人ひとりが経営の状況を意識した上で、顧客をつかんでいく発想や行動が必要になるという考えからだ。
また、東京オリンピック開催イヤーの1964年に開業した「東京プリンスホテル」は、4月1日にリニューアルオープン。従来のクラシカルな空間を承継、日本の観光発展とともに歩んできた伝統を重んじるコンセプトを打ち出した。従前からの個人・法人の顧客に好評だという。
オリンピック特需を開催期間のみに焦点を合わせるというような一過性で終わらせるのではなく、開催後まで見据えた戦略が観光産業・ホテル業界でも重要だ。過去の開催都市でもオリンピック後の不況で支持を得たのは、地域や従来の個人・企業に主眼を置いてきた施設だという。
オリンピックまで景気はこのまま上がっていくという楽観主義と高揚感に包まれる中で、“東京”オリンピック効果を“地方”の多様性経験へとつなげる観光の具体的戦略も求められている。山高ければ谷深し──。身の丈にあった成長を続けるホテルが吉と出るのか凶と出るのか今後も注目していきたい。
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