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セブンイレブンが「定価販売の原則」を捨てた理由 業界最大手が抱えるジレンマ(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/485.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 5 月 02 日 17:11:40: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


セブンイレブンが「定価販売の原則」を捨てた理由 業界最大手が抱えるジレンマ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51614
2017.05.02 加谷 珪一 現代ビジネス


コンビニ最大手のセブン−イレブンが新しい事業構造の構築に向けて舵を切り始めた。

コンビニは良くも悪くも現代日本を象徴するビジネスだが、コンビニの頂点を極めたセブンの方向転換は、日本の消費構造が根本的に変わろうとしていることの予兆でもある。

業界驚愕の値下げ

セブンが、このところ立て続けに新しい施策を打ち出している。

3月29日には洗剤など61品目の値下げを発表し、4月6日には米国のコンビニ買収とフランチャイズ加盟店のロイヤリティ減額を明らかにした。

これらのニュースは人によっては聞き流してしまうレベルのものかもしれないが、一部の業界関係者にとっては驚愕の中身といってよい。その理由は、コンビニというビジネス・モデルの核心部分がすべてひっくり返ってしまう可能性があるからだ。

今回、値下げの対象となったのは、洗剤やシャンプー、紙製品など61品目。

たとえば「LUX Sリッチ シャンプー詰替330g」は409円(税込)から388円に、「バスマジックリン本体380ml」は307円から298円になる。全商品を平均すると約5%程度の値下げである。

これまでも同社は値下げを行ってきたが、ほとんどが自社開発したPB(プライベート・ブランド)商品だった。メーカー・ブランドの商品を本格的に値下げするというのは2009年以来、8年ぶりのことになる。

コンビニが値下げに消極的だったのは、コンビニというビジネス・モデルがもともと定価販売を原則としたものだったからである。この仕組みを理解するためにはコンビニという業態が生まれた40年前に遡る必要がある。

これまで日本のコンビニを支えてきたのは、本部主導で大量の商品を安く提供するチェーンストア理論である。だがコンビニという業態自体がチェーンストア理論に対して多少の矛盾をはらんでいるのも事実である。

当時、日本でもいわゆる大型スーパーが普及し始めていたが、商品価格はメーカーが一方的に決めるという硬直的な市場だった。

こうした閉鎖的な環境に風穴を開け、大量調達によって庶民に安い商品を提供するというコンセプトを掲げて登場してきたのが、イオン(旧ジャスコ)やダイエー(現イオン)、セブン(旧イトーヨーカ堂)といった企業だった。



コンビニは政治の歪みから生まれた?

当時、こうした試みは「流通革命」と呼ばれていたが、理想通りの展開はできなかった。日本では大規模小売店舗法(いわゆる大店法)の規制があり、安値販売のカギとなる大型店舗の出店が難しかったからである。

大店法の規制がある中でチェーンストア理論を実現するため、一種の抜け道として編み出されたのがコンビニだった。

コンビニは店舗面積が小さいので大型スーパーと比較すると事業効率が悪い。こうした悪条件をカバーするためには、来客数を確保するとともに、安値販売を行わずに商品を高く売る必要がある。

このためコンビニは当初、定価販売を大原則としていた。今でもコンビニの単位面積あたりの売上高は大型スーパーと比較するとかなり大きい。セブンは約176万円だが、同じグループ内の大型スーパーであるイトーヨーカ堂は約59万円となっている。

確かにコンビニはいつでも開いていて便利であり、今となっては生活に欠かせない基本インフラに成長した。コンビニは日本が生み出した革命的システムとして手放しで賞賛する声もあり、その認識の一部は正しいといってよいだろう。

だが、もともとコンビニは政治の歪みが生み出した隙間業態であり、値引きなしの定価販売によって、日本の消費者が割高な買い物を強いられてきたというのも事実である。つまり、コンビニがこれだけのインフラに成長する原資は我々の懐から出されていたわけである。

それはともかく、こうした経緯からコンビニは高い価格で販売することを原則としており、これまで安値販売はPBのみというのが業界の暗黙のルールであった。もちろんこうした措置には、値崩れを防ぎたいメーカーに対して恩を売ることで取引を有利にしようという思惑もあった。

ところが今回の値下げはPBのみならずNB(ナショナル・ブランド)までがその対象となった。業界最大手のセブンがこれだけの規模の値下げを行えば、当然、ファミリーマートやローソンなどライバル各社も追随することになる。

ローソンはセブンの値下げが明らかになると日用品29品目の5%値下げを決定、同様にファミリーマートも5%の値下げを実施した。

高値販売の原則がひとたび崩れてしまうと、コンビニの世界においても際限のない安値販売合戦に突入する可能性が出てくる。もしそうなればコンビニというビジネス・モデルそのものの大転換といってよいだろう。



ロイヤリティ減額の意味

もうひとつ大きなインパクトをもたらしそうなのがロイヤリティの減額である。セブンは4月6日、加盟店から徴収するロイヤリティを1%減額すると発表した。

加盟店とセブンの契約条件は、店舗の開設に必要な土地や建物をどちらの負担で用意するのかによって変わってくる。

多くをオーナー側が用意するタイプの契約では、売上総利益(粗利益)の43%をセブンに支払う必要がある。もともと酒屋などを経営していた小売店が加盟するのはこのタイプが多いが、脱サラなど資金力がないオーナーの場合にはさらにロイヤリティの比率が上昇する。

セブンの場合、他のコンビニと比較して集客力が高く、1店舗あたりの平均的な年間売上高は2億4000万円ほどになる(これに対してローソンは1億6500万円)。商品の仕入原価は約70%なので、店舗には年間7200万円ほどの粗利益が残る。ロイヤリティは平均すると50%程度なので、3600万円がそのままセブン側の利益となる計算だ。

一方、加盟店は3600万円の中から従業員の給料などコストを支払う必要があるため、売上高が伸びない店舗の場合、苦しい経営を余儀なくされる(セブンの場合光熱費の一定割合を本部が負担する制度がある)。

加盟店からのロイヤリティは本部にとって利益の源泉であり、ここを減額するということはセブン本体の収益を直撃する。セブンはこれまで鈴木敏文元会長によるワンマン経営が続いてきたが、鈴木氏はセブンの収益低下につながるロイヤリティ減額を絶対に認めなかったともいわれる。

ここに来て、その決断ができたのは鈴木氏の退任でタブーが消滅したことも大きいが、それ以上に、現経営陣が今後の市場拡大は困難と認識しているからにほかならない。

売上高の増大が見込めない以上、ロイヤリティを減額しなければ、人件費の高騰などコスト負担に加盟店が耐えられなくなったことは明白だ。

日本経済の変化の予兆

その証拠にセブンはロイヤリティ減額と同じタイミングで米国のコンビニ買収を発表している。同社は米国の中堅コンビニである「スノコLP」を約33億ドル(約3650億円)で買収する。

同社の買収案件としては過去最大規模だが、同社の自己資本は約42%と比較的厚く、2016年2月末時点で約1兆2200億円の現預金を保有している。今回の買収で同社の財務体質が極端に悪化するわけではないが、思い切った買い物であることは間違いない。

つまり財務体質を多少犠牲にしても、今後の成長を買ったわけであり、それは国内市場が限界に達していることの裏返しでもある。

現在、日本経済は深刻な人手不足や輸入品の価格上昇などによって供給制限を起こしつつあり、インフレの足音が忍び寄っている。一方で消費の低迷は続いているため、企業は値下げしてでも販売数量を確保したいと考えている。

コンビニ各社は消費者が自分で会計するセルフレジを2025年までに国内全店舗に導入する方針を明らかにしているが、こうした施策を積極的に進めても、十分な労働力を確保できるかどうかは分からない。



今回、発生するかもしれないインフレは需要増に伴うインフレ(ディマンドプル・インフレ)ではなく、供給制限によるインフレ(コストプッシュ・インフレ)なので、低成長と物価高が併存するスタグフレーションの発生を警戒する必要がある。つまり日本経済はこれまで誰も経験したことのないゾーンに突入しつつあるのだ。

高値販売とフランチャイズ制度による店舗網の拡大というコンビニの基本的なビジネス・モデルは、需要が継続して拡大するという従来型経済システムを大前提としていた。その前提条件のすべてが、今、静かに崩れ去ろうとしている。

これを象徴する出来事が、ロイヤリティの減額であり、日用品の大規模な値下げであり、そして米コンビニの買収である。

消費に直結しているコンビニは、日本経済の変化を少しだけ早く認識することができたともいえる。10年後の消費社会は、今からはまったく想像もできない姿に変わっているかもしれない。


 

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