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北朝鮮問題、金融市場の最新判断は「中国が抑えるから大丈夫…」 投資家のリスク回避が一服した理由
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51560
2017.04.24 真壁 昭夫 信州大学経済学部教授 現代ビジネス
北朝鮮問題の緊迫化を受けて、世界の金融市場が大きく動いている。
米国は北朝鮮に核開発をやめるよう強く求め、軍事攻撃の可能性すら示唆している。一方の北朝鮮は核を使った先制攻撃も辞さない姿勢を誇示している。
まさに、世界経済は朝鮮半島で有事の事態が発生するのではないかという“未知のリスク”に晒されている。
そうした中、一部では「北朝鮮問題が鎮静に向かうのではないか」、との憶測も出始めたようだ。金融市場では、リスクを回避しようとする動きが一服しつつあるとの見方もある。
先行きは不透明であり楽観できる状況ではないが、中国が北朝鮮の暴走を抑えにかかるとの見方が、投資家のリスク回避姿勢を後退させていると考えられる。
北朝鮮問題と円高の関係
北朝鮮を巡る緊張が高まる中、世界の金融市場では株安、金利の低下、金の価格上昇といった“リスクオフ”が進んできた。
先進国の通貨では、これまで多くの投資家が買ってきた米国のドルが売られた。新興国通貨の中では、朝鮮半島での有事勃発への懸念などから韓国ウォンの下落が顕著だ。
この中で、「なぜ円が買われるか」との疑問を耳にすることが多い。北朝鮮問題の深刻化は、わが国の安全保障上のリスクを増大させる。円が売られてもおかしくはない。
それでも円が買われているのは、足許の大手投資家の資産配分の偏りに影響された部分が多いと考えられる。
短期的に、為替相場は二国間の金利の差に影響される。そして、大手投資家は円などの低金利の通貨で資金を調達し(借り)、金利の高い通貨に投資する。
昨年11月の米大統領選挙以降、多くの投資家は相対的に金利上昇期待の高いドルを買い、低金利が見込まれる円を売ってきた。この段階で投資家はドル/円の為替リスクを負ってきた。
今、大手投資家は買い進めてきたドルを売り、円を買い戻している。
この取引により、投資家はエクスポージャー(為替相場など金融市場での価格変動リスクを負っている資産の割合)を削減し、資産の価値を安定させようとしている。これがリスク回避の実態だ。
足許、大手投資家は依然として円売りのポジション(持ち高)を維持している。状況次第ではあるが、基調として、大手投資家は円の買い戻しを優先しやすいことは認識しておくべきだ。
今後、北朝鮮問題への不安が高まった場合には、円はドルなどに対して買われる可能性がある。
市場が期待する中国の関与
4月第3週に入り、ドル/円は108円台前半まで下落した(ドル安・円高)。それ以降、円高圧力は一服している。
円はユーロに対しても売られており、リスク回避の動きは落ち着きつつあるように見える。フランス大統領選挙への不安などがある中、一部の投資家は「北朝鮮問題のさらなる緊迫化は避けられるのではないか」と考え始めたようだ。
この背景には、中国への期待がある。
歴史的に韓国と北朝鮮は、米国と中国の意向を反映してきた。この“緩衝国”の存在が、朝鮮半島で米中が直に向き合い、エネルギーを消耗する展開を回避することにつながった。北朝鮮が米国に攻撃されれば、中国は緩衝国を失うだろう。北朝鮮から中国に難民が押し寄せる懸念もある。
内政面に不安を抱える中国は、そうした展開を避けるために、どこかのタイミングで北朝鮮を抑えにかかる可能性がある。米国はそれを見越して北朝鮮に強硬な姿勢を示し、中国の圧力を引き出そうとしている。
米国のトランプ大統領は中国への信頼を表明し、それに呼応して中国も北朝鮮への懸念を示し始めた。北朝鮮への経済制裁が強化されるのは時間の問題との見方もある。
これが、「中国が北朝鮮を抑えにかかる」との見方につながり、リスク回避に起因する円の上昇を一服させているようだ。
今後、米国からの圧力や中国からの制裁強化に北朝鮮が反発する可能性もあり、楽観はできない。中国がどこまで踏み込んだ行動をとり、北朝鮮をコントロールしようとするかが、当面の金融市場を左右するだろう。
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