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年金を65歳よりも早く貰うと、どれほど「損」をするのか?
http://www.mag2.com/p/news/247103
2017.04.21 『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』 まぐまぐニュース
年金支給開始年齢が徐々に引き上げられていることが一部で問題視されていますが、実は60歳になって年金を貰う資格があれば、「年金の繰上げ」ができることはご存知でしょうか。とは言え、繰上げによるデメリットももちろんあります。無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、この「年金の繰上げ」について詳しく説明してくださいました。
私の生年月日では60歳からは年金貰えないって聞いたけど60歳から貰う事もできるのか?→はい
これから年金請求する年齢になる人は、徐々に65歳に引き上げられていきます。特に昭和36年4月2日以後生まれの男性、昭和41年4月2日以後生まれの女性は完全に65歳以降からの支給になります。
● 厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)
● どうして年金支給開始年齢は女性のほうが5年有利なのか?(メルマガ参考記事)
60歳定年を迎えたとしても、65歳までは無年金という人は今後は普通の時代になっていきます。ただ、企業も65歳まで継続して働けたり再雇用したりという事で対応しているので年金生活に入るまでは働くという人も多いです。しかし、誰もが働けるわけではなく、健康状態等人により様々なので雇用が整備されて65歳までは働かせてくれるというだけで解決できるものではありません。
というわけで、65歳よりも早く年金を貰うという方法もあります。60歳になって、既に年金をもらう資格があれば65歳前から年金を貰う事は可能です。ただし、年金受給資格は年金保険料納付済期間+年金保険料免除期間+カラ期間≧25年以上を満たしておく必要がある。今年8月1日からは25年から10年に短縮。
● 諦めるなかれ。年金を25年納めなくても貰える「カラ期間」とは(まぐまぐニュース記事)
ただ、気を付けないといけないのは本来の支給開始年齢より早めに貰うと年金が一生減額されたままというペナルティがあるので慎重に決めなければいけません。
本来の年金支給開始年齢より早めに年金を貰う事を年金の繰上げといいます。
というわけで事例。
1.昭和32年4月20日生まれの男性(今月60歳になる)
今までの年金記録。昭和50年(1975年)4月から平成15年(2003年)2月までの335ヶ月厚生年金加入。この間の平均給与(平均標準報酬月額という)は42万円とする。
※注意
平成15年3月までの年金記録には賞与は年金額に反映しない。
平成15年(2003年)3月から平成21年(2009年)6月までの76ヶ月国民年金保険料納付済。この76ヶ月間は国民年金保険料と合わせて毎月400円の付加保険料も支払ってるものとする(65歳からの付加年金に反映)。
● 付加年金とは?(日本年金機構)
平成21年7月から平成25年6月までの48ヶ月は国民年金保険料全額免除。
※注意
保険料全額免除でも平成21年4月以降は老齢基礎年金の半額に反映する。基礎年金の半分は税金が投入されてるから。今は年に約10兆円程の税金を基礎年金に投入して支払いに充てている(年間の全体の年金給付費は去年であれば57兆円程)。ちなみに平成21年3月までは3分の1に反映。
平成25年7月から平成29年3月(60歳前月)までの45ヶ月厚生年金加入。この間の給与と賞与の合計額の平均(平均標準報酬額という)を35万円とします。
しかしこの男性の生年月日だと63歳にならないと年金が支給されない。男性の希望で60歳から年金を貰う事にした。つまり、老齢厚生年金を3年(36ヶ月)早めに貰うって事。老齢基礎年金については5年(60ヶ月)早く。
どうなるのか。計算はザックリですが…、まず63歳から貰う本来の老齢厚生年金(報酬に比例する部分)を算出。
42万円÷1,000×7.125×335ヶ月+35万円÷1,000×5.481×45ヶ月=100万2,488円+8万6,326円=108万8,814円(月額9万734円)。
65歳になると老齢基礎年金と付加年金の支給も開始。老齢基礎年金はこの男性が20歳になる昭和52(1977)年4月から平成15(2003)年2月までの厚生年金期間311ヶ月。平成15(2003)年3月から平成21(2009)年6月までの国民年金保険料納付済期間76ヶ月。平成21年7月から平成25(2013)年6月までの国民年金全額免除期間48ヶ月。平成25年7月から60歳前月の平成29(2017)年3月までの45ヶ月間を見る。
20歳到達月から60歳前月までは年金保険料納付義務があり、この期間の厚生年金期間や共済組合期間は国民年金にも二重に加入している状態だから65歳からの老齢基礎年金にも反映する。
老齢基礎年金額→77万9,300円÷480ヶ月×(311ヶ月+76ヶ月+48ヶ月÷2+45ヶ月)=77万9,300円÷480ヶ月×456ヶ月=74万335円。
付加年金→200円×76ヶ月=1万5,200円。
65歳になれば、年金総額は老齢厚生年金(報酬に比例する部分)108万8,814円+老齢基礎年金74万335円+付加年金1万5,200円=184万4,349円(月額15万3,695円)。
ちなみに、年金額は65歳時に経過的加算という年金でもうちょい増える。
経過的加算(差額加算ともいう)→1,625円×全体の厚生年金期間380ヶ月-77万9,300円÷480ヶ月×(昭和36年4月以降で20歳から60歳前月までの厚生年金期間356ヶ月)=61万7,500円-57万7,981円=3万9,519円。
● 経過的加算(日本年金機構)
65歳時の年金総額は184万4,349円+経過的加算3万9,519円=188万3,868円(月額15万6,989円)。
というわけで、63歳から貰う老齢厚生年金(報酬に比例する部分)108万8,814円と経過的加算3万9,519円、65歳から貰う老齢基礎年金74万335円と付加年金1万5,200円を60歳から貰う事にする。
1ヶ月早めに貰うごとに0.5%ずつ年金が減額される。
※注意
年金の繰上げは繰上げの請求をした月から65歳到達月の前月までの月数で計算されます。60歳到達日以後ならどこから繰上げてもいい。
この男性は老齢厚生年金だと3年(36ヶ月)早めに貰うから36ヶ月×0.5%=18%減額。よって108万8,814円×18%=19万5,987円減額。
老齢基礎年金74万335円は65歳より5年(60ヶ月)早く貰うから、60ヶ月×0.5%=30%減額。よって74万335円×30%=22万2,101円減額。付加年金も1万5,200円×30%=4,560円減額。
経過的加算3万9,519円も60ヶ月早めに貰うから3万9,519円×30%=1万1,856円減額とはなるが、減額分は老齢厚生年金(報酬に比例する部分)から差し引いて、経過的加算そのものは全額支給される。
なお、経過的加算は老齢厚生年金の部類に入る。よって、老齢厚生年金{報酬比例部分(108万8,814円-19万5,987円-1万1,856円)+経過的加算3万9,519円}+老齢基礎年金(74万335円-22万2,101円)+付加年金(1万5,200円-4万,560円)=老齢厚生年金(報酬比例部分88万971円+経過的加算3万9,519円)+老齢基礎年金51万8,234円+付加年金1万640円=144万9,364円(月額12万780円)。
年金の繰上げをした事で、本来なら65歳から188万3,868円(月額15万6,989円)の年金が貰えてたのに60歳で繰上げた事により、43万4,504円減額の144万9,364円(月額12万780円)になってしまいました。
この減額された年金が一生続いてしまうので注意が必要。年金の繰上げを請求したら取り消しが不可になる。その他にも注意事項はあり、年金事務所でもデメリットは必ず説明されます。しかし、こういう減額が一生続いても構わないから、繰上げをして早めに年金を貰いたいと希望する人は多いです。
まあ、その人その人の生活状況が異なるので年金の繰上げが一概に悪いとは言えないのですが…(^^;;
ちなみに年金を繰上げした場合と、本来の年金支給開始年齢から貰った場合の損益分岐点は16年8ヶ月です。つまり、この男性は60歳から年金の繰上げをやっているので、例えば老齢基礎年金で言えば65歳から貰い始めた人との年金総額が76歳8ヶ月で同じになり、16年8ヶ月以降は65歳から貰い始めた人の年金総額が逆転します。この16年8ヶ月間というのはどの時点から年金の繰上げをしても同じ。
※追記
この男性は年金の繰上げをした後に年金を増やす方法は無いのか。60歳から65歳までは国民年金に任意で加入して老齢基礎年金を増やす方法はありますが、繰上げすると国民年金任意加入は不可になります。
厚生年金は70歳までは加入できるので、既に繰上げてしまった年金を増やすのであれば厚生年金に加入するしかないです。
また、この男性は厚生年金期間が20年以上あるので65歳になった時点で65歳未満の生計維持している配偶者が居れば年額389,800円の配偶者加給年金が配偶者が65歳になるまで加算される場合があります。
※注意
配偶者に厚生年金期間や共済組合期間が20年以上ある年金を貰えたり、合わせて20年以上ある年金を貰えている場合は配偶者加給年金は停止になってしまう。
● 年金でいうところの生計維持とは?(参考記事)
65歳から配偶者加給年金が加算される場合は、144万9,364円+配偶者加給年金38万9,800円=183万9,164円(月額15万3,263円)となります。
● 加給年金と振替加算(日本年金機構)
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『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』
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年金は国民全員にとってとても身近なものであるにもかかわらず、なかなかわかりづらくてなんだか難しそうなイメージではありますが、老齢年金・遺族年金・障害年金、その他年金に関する知っておくべき周辺知識をご紹介します!
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