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武蔵小山駅(「Wikipedia」より/Nyao148)
1.5倍も価格割高なタワーマンションに殺到する日本人の異常さ…住居として「醜悪」
http://biz-journal.jp/2017/04/post_18778.html
2017.04.20 文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト Business Journal
「日本一、感じのいいタワマンへ。」
これは、東急目黒線「武蔵小山」駅徒歩1分の場所にできる、総戸数628戸のタワーマンションの広告で謳われているキャッチコピーである。売主は三井不動産レジデンシャルと旭化成不動産レジデンス。地権者住戸が137戸あるというから、再開発事業だろう。それはいい。
私が注目したのは「日本一、感じのいい」というキャッチコピーを採用したココロである。なぜ、わざわざ「感じのいい」と言わなければいけないのか。
日本人はタワーマンションが大好きである。否、日本人も韓国人も、中国人もタワーマンションが好きである。香港やシンガポール、あるいはドバイといったところでは、土地に限りがある。限りがある土地を有効に活用するために、タワーマンションを建設することは十分に意味がある。
しかし、日本は島国とはいえ活用されていない土地も多い。中国も人口が約13億とはいえ、大陸である。必ずしもタワーマンションを建設する必要はない。特に日本では住宅自体が約800万戸も余っているので、理論的にはタワーマンションも含めて新築住宅を1戸もつくる必要がないほどだ。なのに、毎年100万戸弱の新築住宅をつくっている。
実のところ、ヨーロッパには日本のタワーマンションに類する住宅はほとんどない。みなさんはパリやベルリンやローマを旅して、タワーマンションのような住宅を見かけたことがあるだろうか。イギリスのロンドンには少しだけある。私が知る限り、ここ10年で数棟のタワーマンションが建設された。
ところが、イギリスの皇位継承権筆頭であるチャールズ皇太子は、超高層ビルがとりわけお嫌いらしい。機会あるごとに超高層ビルについて「醜悪だ」という言辞をのたまう。そのことはイギリス国民には広く知れ渡っているらしい。
■建築造形的に醜悪な存在
では、ヨーロッパ人はなぜタワーマンションの類を建設しないのか。
まず何よりも、見た目が醜悪だからだろう。この感覚が日本人にはない。私は、タワーマンションのことを「醜悪だ」と評する日本人をほとんど知らない。私は建築造形的に醜悪な存在だと考えている。そういうことをさまざまな機会に主張している。
ただし、日本も香港やシンガポールほどではないにしろ、土地には限りがある。便利な場所に多くの住宅をつくるためには、タワーマンションのような住宅形式は必要である。だから「必要悪」だと考えている。当然、郊外にはタワーマンションなどは必要ない。
ところが、この国では山形県の田んぼに囲まれた場所にも、都心から電車で50分くらいかかる千葉県や埼玉県の郊外にも、タワーマンションが建設され、分譲されている。地方都市でも、駅前エリアにタワーマンションが開発分譲されることが多い。
そして、私から見るとかなり不可思議なことに、まわりの住宅よりも面積割合にして1.5倍以上は高い値段にもかかわらず、それらのタワーマンションが売れているのだ。「ホワイ・ジャパニーズ・ピープル!」と、大きな声で叫びたい。しかし、そんな私は日本人の中で圧倒的に少数派だ――、と今までは考えていた。
ところが今回、「武蔵小山」駅前のタワーマンションで「日本一、感じのいいタワマンへ。」というキャッチコピーが登場した。私は正直、少しほっとした。「感じのいいタワマン」を主張しているということは、その背景には「感じの悪い」タワマンが多数あって、自分たちのタワマンが独自性のある「感じのいい」で価値があると言いたいのだと解釈できる。少なくとも、このキャッチコピーを考案したコピーライターにはそういう発想があったのだろうし、提案した広告代理店やこの案を採用したデベロッパーの担当者にもそういう感覚が理解でき、受け入れる土壌があったと解釈できる。
すなわち、タワーマンションを「醜悪だ」と考えていた私は、日本の中のたったひとりのチャールズ皇太子ではなかったということだ。
■マンションは日本人を幸せにするか
「バカと煙は高いところにのぼりたがる」
かつて、日本人は高いところにのぼりたがる人を、そういうふうに揶揄した。今はそんな風潮は微塵もない。東京にスカイツリーができたと言ってはのぼってみる。大阪にあべのハルカスが完成したといってはいそいそと出かける。
ほとんどの日本人は、ほんの60年ほど前まで紙と木と土でつくられた家に住んでいた。ところが、今の日本人は半分とまではいかないまでも、約数千万人がマンションと呼ばれる鉄筋コンクリート造の住宅形式に住んでいる。マンションは日本人の暮らしを変えてしまった。さらにいえば、人生に対する価値観までをも変えてしまった。
マンションは、日本人を都会に住ませた。
マンションは、日本人にマイホームを持たせた。
マンションは、日本人の核家族化を進めた。
マンションは、日本人を少子化に導いた。
マンションは、日本人の資産となり、負債となった。
マンションは、日本人に区分所有という概念を植え付けた。
マンションは、日本人に管理組合という強制加入組織を作らせた。
マンションは、日本人に高気密・高断熱な住まいを提供した。
マンションは、日本人にエアコン使用を定着させた。
マンションは、日本人に高層生活を定着させた。
以上は、最近刊行された拙著『マンションは日本人を幸せにするか』(集英社新書)のなかで語った、マンションが日本人にもたらした変化の列挙である。日本人はマンションに住むことで大きく変わった。しかし、ほとんどの人がそのことに気づいていない。さらに言えば、タワーマンションに住むことがステイタスであると無邪気に考えている人が多数派である。
そういった日本人とマンションの関係について、私なりの「そもそも論」から論考を進めたのが拙著である。ご興味を持たれたら、ぜひご一読いただきたい。
(文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト)
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