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東芝が「紙クズ同然の決算書」を公表した本当の狙い やっぱり「粉飾疑惑」は拭えない…(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/200.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 4 月 18 日 10:32:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


東芝が「紙クズ同然の決算書」を公表した本当の狙い やっぱり「粉飾疑惑」は拭えない…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51495
2017.04.17. 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス


「上場維持が狙い」ではないハズ

監査法人のお墨付きがないまま、東芝は先週(4月11日)、会社の独断で2016年度第3四半期(4〜12月累計)決算を公表した。

結果的に、異例の3度目の決算発表延期を回避したことから、メディアではこれ以上の決算発表の遅延が市場の混乱を招いて「上場廃止」処分を招くことを狙ったなどとする解説が目立った。

東芝の綱川智社長が記者会見で「上場維持に向けて最大限努力する」と述べて、そうした見方を半ば肯定したことを受けた報道だったのだろう。

しかし、本当に上場維持が東芝の狙いだったのだろうか。

というのは、会社法や金融商品取引法が定める外部監査人による会計監査で「適正」のお墨付きを得られなかった決算を発表したこと自体が、上場維持に不可欠な経営体制(内部統制)の再構築が未だにできていないことの証左として、上場廃止を現実の問題にしかねない側面を持つからだ。

実際には、上場維持以外に強い動機があったとみた方が自然だろう。筆者の目には、むしろ、東芝が一昨年に続き、再び粉飾決算疑惑が高まりかねない事態に直面しており、強引に幕引きを図ったように映る。

今週は、東芝があえて、紙クズ同然の決算書を公表したことの意味を考えてみよう



「意見不表明」の意味

今、東芝問題で、筆者が最も注目しているのが、問題の決算発表の翌々日(4月13日)に、東芝が関東財務局長に提出した「四半期報告書」に盛り込まれた「独立監査人の四半期レビュー報告書」という文書だ。

会計監査人(監査法人)には医師や弁護士とよく似た守秘義務がある。このため、企業決算が公正で妥当な会計ルールに則って作成され、経営内容を正確に反映しているかを判定する立場にありながら、監査法人自身は監査の内容や下した判断について、マスメディアを含む一般に向けて説明することを禁じられている。

それゆえ、今回の東芝の第3四半期決算では、会社と監査法人の間に大きな見解の相違があったにもかかわらず、マスメディアは東芝の説明に依存して、その内容を報じた。つまり、裏付けのないまま、東芝寄りの報道が氾濫した可能性が否定できない。

そうした中で、唯一、外部から実情を伺う手掛かりになり得るのが、企業の有価証券報告書や四半期報告書の信頼性を保証する形で添付される、監査法人作成の「レビュー報告書」だ。今回もわずか3ページと情報量は決して多くないが、監査法人の本音が垣間見えることもあり得ると注目していた。

話を進める前におさらいすると、今回、東芝の決算を監査したPwCあらた監査法人は、監査意見として「意見不表明」という立場をとった。

「意見不表明」は、4ランクある監査意見のうち下から2番目で、上場企業決算に対する監査意見としては異例の低い評価である。

上場企業の決算では、4ランクのうち最上級の「無限定適正(意見)」が付くのが普通だ。よほどきわどい場合でも、「限定(条件)付き適正(意見)」でとどまり、「意見不表明」は極めて稀である。

このランクは、監査法人として適正な決算処理が行われたと保証できない、つまり粉飾決算があった可能性も否定できないという異常事態を示すランクだからだ。

最下級ランクの「不適正(意見)」は、監査法人も訴訟並みの立証をする必要が出て来るので、まず付くことはない。筆者が良く知る公認会計士たちは「あえて不適正を付けなくても、意見不表明で十分に事態の深刻さを表せて事足りる」と口を揃える。

監査法人が示した「二つの懸念」

東芝の監査を担当したあらた監査法人の今回の四半期レビューは、「当監査法人は、(監査意見の)結論の表明の基礎となる証拠を入手することができなかった」と明かし、真っ向から東芝の決算に疑問を呈した。

具体的に言うと、東芝の米原子力子会社ウエスチングハウスエレクトリックカンパニー(WEC)による建設会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)の買収に関連して二つの懸念を示したのだ。

一つは、「一部経営者による(S&Wへの)不適切なプレッシャー」があり、正確な会計処理が行われなかった可能性が依然として残っていることである。

もう一つは、S&Wの買収が2015年12月末に完了していたにもかかわらず、それから1年が経過した2016年度第3四半期決算期になって、東芝が突然、買収時に「635,763百万円の工事損失引当金」が必要だったことが判明し、これを根拠に「(工事損失引当金の)当四半期末残高は495,859百万円」だと主張し始めた問題だ。

この引当金の確定は、S&Wの取得価格の特定やのれん代の算定に不可欠な要素であるため、あらた監査法人は、「当該損失を認識すべき時期」を問題にした。

「いつであったかを判断するための調査に対する当監査法人の評価も(継続中の評価の対象事項に)含まれている」といい、本来ならばもっと前に会計処理すべきだったのではないかとの疑問を示唆したのだ。

そのうえで、どちらの問題に関しても、現在までの東芝の調査は不十分であり、疑惑が晴れないと結論付けた。

わかり易く言うと、あらた監査法人は、東芝かWECの一部経営者が2015年度第3四半期や2015年度通期に発生した原子力部門の巨額損失を、意図的に隠させた可能性が否定できないとみており、2015年春に露呈したケースに続いて、東芝がまたも粉飾決算を犯した可能性を憂慮している可能性が高いのだ。

さらに、あらた監査法人は「その他の事項」というタイトルを付けて、粉飾の可能性が残る2015年度第3四半期や2015年度通期の決算を監査したのが、いずれも「前任監査人」(筆者注、新日本監査法人のこと。1昨年春に露呈した粉飾決算を見抜けなかったとして、東芝に解任された経緯がある。)であり、それらの決算に「無限定適正意見」のお墨付きをあたえていたとも指摘した。

あらた監査法人は、就任前のこうした監査に責任を持てないことを明確にしたのである。


 東芝・綱川社社長 Photo by GettyImages

東芝の綱川社長は4月11日の記者会見で、「当社としては独立監査人の理解を得るべく最善を尽くした」とか「調査は完了している」などと繰り返した。

社外取締役の佐藤良二監査委員会委員長(公認会計士、元監査法人トーマツCEO)も、「損失認識時期が問題となる証拠は発見されておりません」とか「(一部経営者による)不適切なプレッシャーと見なされ得る言動は認められたものの、当社及びWECの内部統制は有効に機能しており、財務諸表に影響を与えなかった」と釈明した。

換言すれば、2人は、決算のお墨付きを得られなかった原因が、あらた監査法人の判断の遅さにあるかのような印象を与える説明に終始したのである。

しかし、意見不表明とした理由について、前述のように、あらた監査法人は明確に「結論の表明の基礎となる証拠を入手することができなかった」と断じている。これは、東芝が非協力的だったことを示唆したとみなしてもいい文言だ。決して、あらた監査法人は自らの単純な手続きや判断の遅さに問題があったとはしていない。

不自然な動き

そこで改めて検証が求められるのが、なぜ一昨年暮れのS&W買収時に、同社をゼロ円という安値で買収できるのか、会計上できちんと認識しなかったことの不自然さである。

当時、東芝は原子力分野を成長産業と広言しており、S&Wの買収はWECを含む東芝グループの成長に役立つとしていた。そんな会社がゼロ円で取得できるという、旨過ぎる話が不可解でなかったはずがない。

まともな企業経営者ならば、S&Wの実態が傷物で、巨額の含み損があるから安く買えることに気付くはずである。仮に取得価額をゼロ円とする会計上で処理するならば、S&W社の債務を肩代わりするために巨額の損失引当金の計上を行うというような会計処理が必要なことに気付くべきなのだ。

ところが、昨年暮れの内部通報によって「不適切なプレッシャー」の存在が露呈するまで、東芝はこの問題を自ら補正しようとしなかった。これほど不可解なことはないだろう。

さらに、S&Wを買収した期の四半期報告書や通期の有価証券報告書に、東芝はS&Wの取得価額について注書きしている。

そこには、「当報告書提出日現在では、取得価額の配分は完了していません」「当期間においてS&W社取得時の正確な財務数値の取得が困難である」ため「会計処理は最善の見積もりに基づき行っています」などとも述べている。

百歩譲って、S&Wなどとの訴訟の影響が残り、2015年度第3四半期末に本当に必要なデータを入手できかったのだとしても、速やかに財務数値を把握したうえで、それが2015年度末に間に合わなかったのならば、2016年度に自ら遡って当該決算の訂正報告を提出する必要があったはずである。

決算への影響の大きさを「重要性の原則」に照らせば、そうした検証や訂正を怠ったこと自体が、東芝という企業の経営姿勢に対する疑念を生みかねない。

「合理的な疑いを持つ」ことは、会計監査に従事する者の使命だ。あらた監査法人が、東芝には何か隠したいことがあって、最近まで意図的に放置したのではないかとの疑念を抱き、前述した「当該損失を認識すべき時期」を問題にしているのだとすれば、まさに理に適った対応に映る。

そもそも、東芝は同社やWECの決算にS&Wの問題を波及させるなというプレッシャーをかける行為があったことを認めているが、その行為はS&Wの巨額損失の実態を把握していたからこそとられたはずである。

何も知らなければ、プレッシャーをかけることなどなかっただろう。この場合、問題はプレッシャーの行為後だけでなく、行為前の調査も重要だ。調査が買収時以前に遡るのも当たり前のことである。

ここは、前回の粉飾決算劇でも刑事処分を求めたとされる証券取引等監視委員会や、当時は証拠不十分として事件化を拒んだとされる検察当局の出番である。もはや、強制的な調査や捜査をできない監査法人の手に負える話ではない。

東芝に粉飾決算隠しがあり、それを許すようなことになれば、日本の経済・企業社会全体にモラルハザードが蔓延しかねない。しっかりとした真相の究明とけじめが求められている。

今回公表した決算で、東芝は前年同期を上回る巨額の赤字を計上し、事実上の経営破たんである債務超過状態に転落した。この決算書には、初めて、会社自らが期中の経営破たんの可能性を認める「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記」も記載された。東芝の経営危機は深刻である。

その一方で、生き残りに必要な半導体メモリー会社の売却などの対応策は、どれも手探りの段階で、迷走の感が強い。

次回は、東芝の決算が示した深刻な経営・収益・財務状況と、その原因、そして隘路のような打開策について考えてみたい。


 

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