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第二次シェール革命の行方
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9385
2017年4月17日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
英キングス・カレッジ・ロンドン政策研究所のNick Butler客員教授が、3月13日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説で、技術進歩で米国のシェール産業の生産コストは劇的に減少し、そのうえさらに多くの埋蔵量が確認されたため、油価は長期にわたり低迷するだろう、と述べています。要旨、以下の通り。
米国の油価が再び1バレル50ドルを切ったが、その背景には目覚ましい技術進歩がある。
米国のシェールオイル増産に対抗するため、サウジは市場に石油を大量に供給し、油価を引き下げたが、意図した効果は上がらなかった。サウジの政策の結果、米国のシェール産業で劇的なコスト削減と技術進歩がもたらされた。その結果、産業全体として油価がバレル50ドル、あるいは場合によってはそれ以下でも、採算割れにならなくなった。第二次シェール革命が進行中である。
一層重要なことに、さらに多くの埋蔵量が確認された。世界市場は深刻な影響を受けるだろう。
シェールオイルの生産量は、昨年底をついた後、本年の増加量は40万〜80万バレル/日(B/D)と予測されている。新しい生産拠点であるテキサス州のPermian Basinの埋蔵量は、これまでの世界最大のサウジのGhawarやアラスカのPrudhoe Bayより多い。
その結果、米国のシェールオイルの生産量は、2020年まで毎年80万B/Dの増加が見込まれ、2020年の米国の石油生産量は現在の900万B/Dから1100万B/Dに増えているだろう。OPEC、特にサウジは、現在の油価を維持するためにさらなる減産を余儀なくされるだろう。
シェールオイルとともにシェールガスも増産され、米国の天然ガスの価格は大幅に下落している。この価格水準ではガスがより多くの石炭にとって代わり、石炭産業を再建するとのトランプの選挙公約を実現することは極めて難しいだろう。
石油とガスの供給増で、米国は自給自足に近づき、輸入依存度が減るだろう。
シェール革命は循環的な価格の下落で潰されるだろうとの予測は誤りであった。今や供給の増加が需要を上回るという構造的変化が起きている。高い輸出価格に依存している諸国への影響は深刻である。結果として富が生産者から消費者に再配分される。我々は長期にわたる不安定を迎えている。ただし、今回は不足が原因ではなく豊富さが原因である。
出典:Nick Butler,‘The second shale revolution’(Financial Times, March 13, 2017)
https://www.ft.com/content/d918e0f8-5646-35ea-93dd-588e5c5b0e0d
第二次シェール革命とは、技術進歩や経営の合理化により米国のシェール産業のコスト削減が劇的に削減され、油価がバレル50ドル、あるいは場合によってはそれ以下でも、採算割れにならなくなったことを意味します。その上米国ではさらに多くの埋蔵量が確認され、今や世界の石油の供給が需要を上回る構造的変化が起きたと言います。これまでは一般にシェールオイル・ガスの最盛期は20年ほどと言われてきましたが、大規模埋蔵量の確認は、その予測をくつがえすものです。新しい予測が正しいとすれば、今後長期にわたり油価は頭が抑えられるでしょう。
■地政学的影響は大きい
また、その地政学的影響は大きいものがあります。米、中、露の三大国に関しては、このような状況は米、中には有利に、露には不利に働くことになります。
まず、米国は、石油とガスでほぼ自給体制を確立し、中東への依存度、したがって中東への関与はさらに減るでしょう。比較的安価なエネルギー源の確保は、米国経済の追い風となるでしょう。
中国は石油の供給の多くを輸入に頼っているので、油価の低迷は中国経済にプラスとなります。石油の輸出に頼るロシアは、油価の低迷により財政的窮状が続けば、国内経済情勢がさらに悪化し、対外的介入により慎重にならざるを得ないかもしれません。
その他の産油国も軒並み深刻な影響を受けます。サウジアラビアは、「ビジョン2030」として示された、石油依存軽減策を中心とする経済、社会改革に、より真剣に取り組む必要があります。
他方、石油の消費国にとっては油価の低迷は朗報であり、日欧のみならず、産油国でない新興国、途上国の経済発展にプラスとなるでしょう。
論説は、これから長期にわたり、不安定な状況が続くと言っています。これは特に産油国に当てはまるでしょう。産油国にとって、長期にわたる油価の低迷は深刻であり、その対応は容易ではありません。経済的困難にとどまらず、政治的混乱を招きかねません。
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