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5度目となるMRJの初号機引き渡し延期を発表する三菱重工業の宮永俊一社長=1月23日、東京都港区の三菱重工本社(写真:フジサンケイビジネスアイ)
米原発事故めぐり巨額賠償免れた三菱重工 負の連鎖断ち切れるか
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170414-00000012-fsi-bus_all
SankeiBiz 4/15(土) 8:15配信
大型客船の建造遅れ、旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の納入遅延と、暗い話題が続いていた三菱重工業が、一転して「サプライズ」に沸いている。米国で起きた原子力発電所の事故をめぐり巨額の賠償を求められていた件について、同社の主張をほぼ認める裁決が下されたからだ。数千億円の支払いを免れたのを機に反転攻勢へと転じ、負の連鎖を断ち切れるか−。
◆ありがたい裁決
「まだ内容を精査してみないとはっきりしたことはいえない。ただ、ありがたい裁決なのは確か」
米原発事故をめぐる裁決が出された3月14日、三菱重工関係者は慎重な言い回しながら裁決結果を歓迎した。
問題となった事故は、2012年1月に米カリフォルニア州のサンオノフレ原発で起きた。三菱重工は、原子炉から取り出した熱で蒸気を作る「蒸気発生器」を納めたが、配管が破損して放射性物質を含む水が漏れ出したため稼働を停止。住民の反対もあり、2、3号機の廃炉に追い込まれた。
このため、運営する電力会社の南カリフォルニアエジソン(SCE)は、三菱重工に重大な契約違反があったとして当初の段階で75億7000万ドル(約8300億円)の賠償を請求。三菱重工が「契約上の責任上限は1億3700万ドルと定められている」と拒否すると、パリの国際商業会議所(ICC)に仲裁を申し立てた。
ICCが認定した賠償額は141億円。1000億〜4000億円の支払いが避けられないとみられていたことからすると、わずかといっていい。経営陣がほっと胸をなで下ろしていることは想像に難くない。
同社には、数千億円の支払いに耐えるだけの財務余力はある。とはいえ、大型客船2隻の建造遅れで累計2540億円もの損失を出してきたうえ、当初1500億円を見込んでいたMRJの開発費も、5度にわたる納入延期の結果、4000億〜5000億円まで膨らむ見通しだ。17年3月期の連結最終利益(見通し)は1000億円にすぎず、1000億円で決着したとしても赤字に陥る恐れがあった。
もっとも、素直には喜べない面もある。原発ビジネスの難しさが改めて浮き彫りとなったからだ。
東芝の原発子会社、米ウェスチングハウス・エレクトリックは、請け負った原発4基の工期が遅れて巨額の損失を抱え、米連邦破産法11条の申請にまで追い込まれた。損失拡大の背景には世界的な安全規制の強化があり、メーカーをますます不利な立場に追いやっている。
しかも、こうしたリスクは原発に限らない。重工メーカーでは、ライバルの川崎重工業も豪州における液化天然ガス(LNG)タンク建設をめぐるトラブルに直面している。
川崎重工は、国際石油開発帝石の関係会社が豪州北部で進めるLNG事業の一環として、12年5月に約600億円でタンク4基を受注。現地の建設大手ラング・オルークに工事を任せ、昨年6月に完成させる計画だった。
ところが、ラング・オルークが4カ月分の代金が支払われていないとして工事を中断、約800人の作業員を現場から引き揚げた。「契約に基づいた代金は全て支払った」と真っ向から反論する川崎重工は、法的措置も辞さない構えで、既に新たな工事業者を探しているという。
三菱重工と川崎重工のトラブルに共通するのは、海外を舞台としている点だ。
三菱重工は、17年3月期見通しで4兆円の連結売上高を、来期は一挙に5兆円まで増やす目標を掲げる。国内市場が停滞する中、目標達成には海外進出が不可欠とはいえ、「それに付随してリスクも高まらざるを得ない」(外資系証券アナリスト)。
◆MRJ開発など試練
大型客船は撤退を表明済みで、損失がこれ以上膨らむ恐れはほとんどない。だが、MRJについては「開発がどの辺まで来ているとはっきりいえる段階ではない」(三菱航空機の篠原裕一業務執行責任者)。
置かれた立場を見透かしてか、裁決結果が発表された3月14日に前日より22円も高い470円80銭に跳ね上がった株価だが、4月14日は431円60銭まで下落した。今回の裁決が追い風になるのは確かだが、試練は当分続きそうだ。(井田通人)
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