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AIが人間を支配する?
AIはどのくらい人間から仕事を奪うのか? 〜『シンギュラリティは怖くない』(中西崇文著)を読む
http://diamond.jp/articles/-/124973
2017.4.15 情報工場 ダイヤモンド・オンライン
特定の領域で人間を凌駕し始めた人工知能
「人工知能(AI)の進化が人間の存在を脅かすのでは?」といった話題を、最近よく耳にするようになった。確かに将棋や囲碁でAIがプロ棋士に勝利するなど、ある特定の領域では、AIの能力が人間に近づき、凌駕するようなケースが出てきている。
また、AIを搭載した自動運転車が普及すれば、タクシー運転手、トラック運転手のような職業は廃れていかざるを得ない。そのように、「将来人間はAIに仕事を奪われてしまうのではないか」と懸念する向きもある。今後10年から20年ほどで、米国の総雇用者の約47%が職を失う可能性を指摘する研究もあるそうだ。
有名な「ムーアの法則」によると、コンピュータのハードウェアの性能は18〜24ヵ月で2倍になる。むろん、人間の脳はそこまで急速に性能を上げられない。だから、いったんある分野で人間の能力を超えるAIが登場すると、その分野で人間は再びAIの上を行くことはできない。さらに技術が進歩すれば、あらゆる面で人間の能力を凌駕するAIが誕生しても、少しも不思議ではない。
発明家で実業家、未来学者でもあるレイ・カーツワイル氏は、現在グーグルでAI開発の総指揮をとっている。2005年に出版した著書でAIが人間を超える時点を「シンギュラリティ(技術的特異点)」と呼び、それを2045年と予測したのは有名だ。
そのシンギュラリティを、AIが人間を支配、あるいは滅ぼしてしまう時ととらえ、本気で心配する人もいるようだ。
しかし本書『シンギュラリティは怖くない』の著者、中西崇文氏は「その恐れはない」と断言している。
『シンギュラリティは怖くない
ちょっと落ち着いて人工知能について考えよう』
中西 崇文 著 草思社 192p 1500円(税別)
中西氏は2006年に筑波大学大学院システム情報工学研究科で博士(工学)の学位を取得。その後、独立行政法人情報通信研究機構でナレッジクラスタシステムの研究開発や、大規模データ分析・可視化手法に関する研究開発等に従事した経験を持つ。ビッグデータ分析システム、統合データベース、感性情報処理、メディアコンテンツ分析などを専門とし、現在は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授/主任研究員、ならびに、デジタルハリウッド大学大学院客員教授を務める人物だ。本書の他に『スマートデータ・イノベーション』(翔泳社)という著書もある。
本書で中西氏は、AIが急速に進化している要因を最近の事例を交えながら分かりやすく説明する。そして、人類はシンギュラリティを怖れる必要はなく、むしろAIを活用し、AIと恊働することで、ともに進化できるはず、といった持論を展開する。
だが、中西氏が言うように、シンギュラリティは本当に怖くないのだろうか。
人工知能は人間から信頼されなければ淘汰される
人類は「道具」を使うことで文明を発達させてきた。道具は肉体の力を増幅したり、人間の作業効率を上げる。
そしてその後、人類は人力以外の動力を用いる「機械」を発明。そのおかげで桁違いに大規模な生産活動を行えるようになった。
機械の導入は、一部の労働者の職を奪った。しかし、その代わりに、機械や工場の生産ラインの設計・構築・運営・管理といった新たな仕事が生まれた。
また、機械の動力に必要なエネルギーを生産・供給する事業や、大規模な設備投資や運営資金を融資する金融業、大量に生産される商品を消費者に届ける流通業や小売業なども発達する。こうした広がりにより、雇用の全体量は減少するどころか、長期的にはむしろ増えている。
さらに現代になると、ロボットなど自律的に動く「自動機械」が登場し、発達。生産ラインの制御や管理など、それまで人間が担っていた知的労働の一部を機械が担うようになる。最近では、ほとんど無人で操業可能な工場も増えてきた。家庭でも全自動洗濯機からお掃除ロボットまで、“勝手に”家事をやってくれる自動機械が揃ってきている。
すると人間の仕事は、新たな商品やサービスや、その利用シーンを企画・デザインするようにシフトしてくる。自動化による省力化が、創造的な領域に雇用を振り分けるようになってきているのだ。
このように道具や機械の進化は、単に人間の仕事を奪ってきたわけではない。社会構造や人々の嗜好を変化させ、それに応じて人間側の役割分担を変えてきたということだ。
中西氏は、今まさに進化の途上にある、高度なAIにより自律的に動く自動機械を「インテリジェント機械」と名づけている。それには、人間には処理不可能な膨大なデータをもとに、知的な判断や創造まで行う機械も含まれる。
現在でもAmazonなどのECサイトには、過去の購買履歴を分析し、ユーザーが次に何を必要としそうかを予測してリコメンドする機能がある。また、バッハの楽曲データを大量に学習してバッハ風の作曲をする、あるいは必要なデータを与えると記事の文章を書いてくれるなど、人間の知的創造力を代替するAIもすでに存在する。
インテリジェント機械がさらに進化すると、人間を介さずにAI同士が直接「協力」するようになるかもしれない。
たとえばECサイトのAIが過去の大量の購買履歴データをもとに、来年売れそうな商品のデザイン案を作成するケース。その時に、工場の生産管理を行うAIと、インターネット経由で原価や納期などを相談したりする。
もしくは、為替変動などから原料の価格高騰を予測した工場のAIが、商品の生産規制をかけるような場合。ECサイトのAIに、その原料を使わない類似商品を優先して売ってほしいと依頼することも考えられる。
その際に、人間がAIやインテリジェント機械を「信頼」できるかが重要と、中西氏は指摘する。人間は、信頼できないAIやインテリジェント機械は使わないし、信頼できるように改良するだろう。つまり、自然に淘汰されて信頼して仕事を任せられるものだけが残る。そうすると、信頼に足るAIやインテリジェント機械だけが、共和制民主主義のように互いに話し合い協働する未来が想定できるのだという。
そうなった時の人間の役割は何だろうか。AI同士の最適な組み合わせを考え、社会に実装していくことではないだろうか。
人間も、AIやインテリジェント機械とコミュニケーションをとり、協働していくことになるのだ。そうすれば、人間だけでは考えつかないような、とてつもないイノベーションも期待できる。
悪意を持った利用を妨ぐ社会的な仕組みの構築が急務
それでもまだ懸念は残るかもしれない。知性と判断力を備えたAIが意図的に人間に悪事をはたらこうとしたり、危害を加えることがないと言い切れるのか。
中西氏は言い切っている。そうした事態は「人間自身が悪さをしようとしない限り」起こらない、と。それを信じるとするならば、悪意のある人間にAIを悪用されない社会的な仕組みをできるだけ早い段階で整備する必要はあるだろう。
2016年12月、国連の特定通常兵器使用禁止制限条約締約国123ヵ国は、人間が介在しない完全自律型兵器の禁止に向けた公式な取り組みを進めることで合意した。
ロボットが人を殺しにくるというのは、現時点ではあくまで「ターミネーター」シリーズのようなSF映画の中だけのもの。完全自律型殺人兵器はまだ実用化されたわけではないが、技術的には近い将来実用化は可能だろう。いったん実用化されてしまえば必ず使われるに違いない。そうなる以前に開発自体を止める協議がまずは人間同士で必要だ。
カーツワイル氏は、技術開発が2005年時点より加速したため、シンギュラリティが2029年に早まるとの見方を示している。今後、さらに早まる可能性もある。実は、あまり時間は残されていない。
本書を読めば、人間が理性を捨てさえしなければ、シンギュラリティは決して怖いものではないことは理解できるだろう。問題は、画期的な新しい技術の平和利用を確保するために、社会面で何を整備すべきかを考え、国家間などの利害を超え、理性をもって話しあえるかだ。
その際には、本当に怖いのはシンギュラリティではなく、いつまでたっても戦争を止めたがらない人間の方だということを肝に銘じておいた方がいいだろう。
(文/情報工場シニアエディター 浅羽登志也)
情報工場 2005年創業。厳選した書籍のハイライトを3000字にまとめて配信する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP(セレンディップ)」を提供。国内の書籍だけではなく、まだ日本で出版されていない、欧米・アジアなど海外で話題の書籍も、週に1回、日本語のダイジェストにして配信。上場企業の経営層・管理職を中心に約8万人のビジネスパーソンが利用中。 http://www.serendip.site
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