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プロが明かす出世のカラクリ〜あなたはどう生きるか(画像=PIXTA)
お金を増やしたいなら出世するより〇〇の方が効率的?
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170414-00010005-nikkeisty-bus_all
NIKKEI STYLE 4/14(金) 17:12配信
今いる会社の中で昇進していくことが第一の出世です。出世の王道といえばまずこれでしょう。また、自分が生み出せる価値に対して、より高い対価を与えてくれる会社に転職して活躍することが第二の出世としました。とはいえ、転職した後には、第一の出世を目指す必要があります。これらはいずれも会社という組織の中での出世です。
どうせビジネスの世界で働くのなら、出世を目指してほしい。そうすればお金や地位や名誉が手に入りやすくなる。そういう思いから私は会社の中での出世についての仕組みを解き明かしてきました。
しかし出世するとどうしてもプライベートが損なわれます。そして昨今、出世するよりもプライベートを大事にしたいという人が増えているとも言います。では、プライベートを大事にするとなぜ出世ができないのでしょうか?
■お金のために出世したいですか?
たとえば弊社セレクションアンドバリエーションで実施するキャリア研修での質問に、以下のようなものがあります。
あなたの配偶者が3億円の宝くじにあたったとします。
話し合いの結果、2億円は貯金したままで、あと1億円は2人で好きに使うことになりました。さてあなたは……
(1)とりあえず仕事をやめる
(2)仕事は今まで通り続ける
この質問に対して(1)を選んだ人は、お金のために働いている人です。逆に言えば、お金さえあれば働きたくない、という人。あるいは、働くことは嫌ではないけれど、やりたい仕事をしていない人ではないでしょうか。
では(2)を選んだ人は?
(2)を選んだ人だからといって、お金のために働いていないわけではありませんし、好きなことをしているとも限りません。年間500万円ずつ(年収にすれば600万円ほどでしょうか)使ったとしても40年間は使える2億円というお金ですが、安心できるかといえばそうではありません。また、宝くじにあたるとお金遣いが荒くなるといいます。そういうことを冷静に考えると、仕事を辞めない、という選択肢を取る人は安全志向なだけかもしれません。
また宝くじにあたったのは配偶者なので、自分の意志だけで自由に使うことはできない、という考えもできるかもしれません(そういう意味も含めて『配偶者』という問いかけをしています)。
お金を手に入れたら働かない、という選択をしても、お金がなくなればまた働かなくてはいけません。ということは、働く=お金を得るため、なのでしょうか。となれば出世とはよりたくさんのお金を得るためにすることなのでしょうか。
■お金を手に入れることと出世することは厳密には相関しない
お金を稼ぐために働く。
働く目的はそうじゃない、と言い切れる人はどれくらいいるのでしょう。この連載の第1回から第4回にかけて、2010年以降の日本では、業界によって稼げる年収に2倍以上の差が出ている、という分析を示しました。だから、お金を稼ぐために働くのであれば、稼げる業界を選んで、その会社の中で上の役職への出世を目指すことが望ましいわけです。
しかしある調査によれば、出世したくない/しなくてもよいという人の割合はとても高いのです。30才未満の男性で約40%、女性だと60%を超える人たちが出世を望んでいません。その理由の大半は、責任を持ちたくない、とか、プライベートの生活を大切にしたい、というものだそうです(『ワーク・ライフ・バランスに関するアンケート, 2008』連合総合生活開発研究所)。
では、会社の中で出世せずにお金を稼ぐ方法があるのでしょうか。
答えはYES。出世すると給与という名目でのお金は増えますが、お金を増やすための方法は出世だけではありません。
トマ・ピケティは『21世紀の資本』で、資本収益率が常に経済成長率を上回っていたと説きます。それはつまり、働いて手に入れる所得よりも、資産が生み出す収益の方が多いということでもあります。よりわかりやすく言い換えるなら、給与の増え方よりも、利息とか配当とかの方が増えやすいということです。
だとすれば、私たちは給与として受け取った分から一定額を金融資産や不動産資産などに投資していけばよい、ということになります。多くのフィナンシャルプランナーが示すように、自分にもしものことがあっても稼ぎ続けてくれる存在があれば安心感も増します。
ピケティの分析に従うのなら、給与の増やし方を考えて出世競争を頑張るよりも、利回りの良い金融商品を探して投資する方がよい、ということになるのかもしれません。そうして金融資産や不動産資産を増やしてゆければ、お金のために働く必要性がどんどん減ってゆきます。やがて自由に使えるお金を持ちながら、自由な時間も手に入れられるようになるでしょう。
出世しなくてもお金を手に入れることはできますし、その方が効率的です(総額を増やすことはなかなか難しいのですが)。
では、プライベートを大事にしたいから出世したくない、という人たちは、資産を増やす活動に専念した方がよいのでしょうか。そもそも、出世することとプライベートの充実はなぜ相反しているのでしょう。
■まだ根強い「会社にとって使い勝手がよい」という出世条件
内閣府が男女共同参画社会を創造するための様々な改革を提言しています。最新の第四次男女共同参画基本計画を開いてみれば、「あらゆる分野における女性の活躍」「安全・安心な暮らしの実現」「男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備」などの項目で具体的な成果目標があげられています。
この中でも特に問題になるのが、「男性中心型労働慣行」の変革です。これは高度成長期にあたりまえだった働き方を指していますが、私たちの常識としても根付いてしまっています。例えば仕事が忙しければ残業しなくてはいけないし、支店の人手が足りなければ転勤しなければいけない、というようなことです。そういう、会社にとっての使い勝手の良さが重要視されていましたし、今なお出世していく要件として求められることが多いものです。
しかし注意しなくてはいけないのは、これらは決して世界の常識ではない、ということです。欧米だけではなく、アジア諸国でも、「急で悪いんだけれど今日、どうしても仕上げなければいけない資料があるからちょっと残業してほしい」という業務命令にほとんどの人は従ってくれません。転居を伴う転勤命令なんて出そうものなら訴訟問題になるでしょう。
会社側に配転命令権がある、という法律解釈自体が日本独自なものなのですが、これらは「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」がかつての日本で多かったためです。ややこしい書き方をしていますが要は、夫が働いて妻が家庭を守るという世帯のことです。しかし今やそういう夫婦世帯は全体の40%未満。会社にとって使い勝手のよい働き方を選ぼうにも、奥さんも働いていて家事や子育てや介護を夫婦で分担しなければいけないとすれば不可能です。急な残業を命じられたら子どもを迎えに行けないし、転勤したら単身赴任で生活が破たんするかもしれません。
そんな古い労働慣行はすこしずつ改善されようとはしていますが、改善されたらバラ色なのか、というとそうではありません。自分で働く時間を選べるようになる出世、という選択肢が今後増えると思われますが、自由を手に入れると同時に失わなければいけないものがあるのです。詳細は次回に(※下の【関連記事】の「滅私奉公でないと出世できない? 正社員制度のワナ」でお読みいただけます)。
(平康慶浩 人事コンサルタント)
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