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Photo:首相官邸HPより
報道されなかったスティグリッツ教授「日本への提言」の中身
http://diamond.jp/articles/-/123825
2017.4.6 高橋洋一:嘉悦大学教授 ダイヤモンド・オンライン
ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツ・米コロンビア大学教授は3月14日、経済財政諮問会議に出席した。資料は内閣府のホームページに公表されているが、マスコミはほとんど報道していない。なぜなのか。こういう場合、マスコミに不都合なことが多い。
「政府・日銀」が保有する国債を
「無効化」するという意味は
スティグリッツ教授は、諮問会議での発言のなかで、政府・日銀が保有する国債を「無効化」することを提言した。政府・日銀が保有する国債を「無効化」することで、政府の債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と主張。また、債務を永久債や長期債に組み換えることで、「政府が直面する金利上昇リスクを移転」できるとしている。
この「無効化」についてどう考えたらいいのか。
これはスティグリッツ教授がわざわざ日本で語った重要な指摘であるが、残念ながら、ほとんどのマスコミでとりあげられなかった。というのは、経済財政諮問会議の事務局である内閣府でもしっかりと理解していないふしがある。日本のマスコミは役所が振り付けないと報道できないのだ。
スティグリッツ教授提言の和訳資料は、内閣府が用意したが「無効化」と訳されている。ところが、スティグリッツ教授の書いた英文原資料では「canceling 」である。これは会計用語で「相殺」である。となると、何と何を「相殺」するかが問題になる。
その前に、経済学者の思考法を確認しておこう。経済学者は、財政・金融問題を考えるとき、政府と中央銀行を一体のものとして考えるが、これを「統合政府」という。法的にも中央銀行は政府の子会社であるので、一般企業においてグループ企業は連結決算で考えるのと同じである。もちろん、この考え方は、中央銀行の独立性と矛盾しない。中央銀行の独立性とは、政府の経済政策目標の範囲内でその達成のためにオペレーションを任されているという意味であり、グループ企業が営業の独立性を持っているのと同じ意味である。
「統合政府」で考えると
国債残高と日銀保有国債は“相殺”される
そこで、「統合政府」の連結のバランスシートを考えると、右側の負債をみると国債残高になる。ところが、左側の資産をみると中央銀行の保有する国債がある。
「相殺」とは、右側のグロス国債残高1000兆円から左側の日銀保有国債残高400兆円を差し引くと、国債残高は600兆円と「瞬時に減少」することを言っている。
日銀保有国債残高に対して、政府は利払いをするが、それは最終的には日銀から政府への納付金として戻ってくるので、この部分の国債残高はないものと考えてもいい。
このように、スティグリッツ教授は、国の借金1000兆円という巨額の数字だけに騙されてはいけないという警句を発したのだ。本コラムの読者であれば、筆者が再三に言及していることをご存じだろう。最近では、2月23日「日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている」にある。
上記のコラムでは、この考え方をさらに進めている。つまり、政府の子会社は日銀だけでなく、他にもある。いわゆる天下り役人などを抱える特殊法人である。そこには資産がたっぷり600兆円ほどある。これらも連結してバランスシートにおいて「相殺」してみると、実質的な国債残高はほぼゼロになってしまう。この意味で、日本の財務状況は、財務省が宣伝しマスコミが拡散するほどには悪くない。
そうした意見への反論もあったが、これでどの意見が正しかったがわかるだろう。
スティグリッツ教授は、このほかにも財政再建のために消費税増税を急ぐなとも言っている。これらをあわせ読むと、財政再建も必要ないのだし、消費税増税はやめるべきとなってしまう。スティグリッツ教授の話は財務省にとって悪夢のシナリオだ。
教授の発言は重要な指摘であったが、残念ながら、ほとんどメディアで報道されなかった。経済財政諮問会議の事務局である内閣府が振り付けをしなかったので、メディアが十分にその意味を理解せず報道できなかったのだろう。
中央銀行の論議でもごまかし
目標の独立性は認められていない
こうしたことはこれまでにもあった。やや古い話だが、「統合政府」のところで書いた中央銀行の独立性に関わる話だ。2010年5月26日、当時のバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長が「中央銀行の独立性、透明性と説明責任」と題して日銀本店で講演を行った。
その時の新聞各紙の見出しは、「中銀の独立性強調」だった。この見出しだけを読むとミスリーディングだ。実はバーナンキ議長は、「独立性」の意味を限定的に用いている。講演草稿のはじめには、「金融政策の目標は政治的に設定されるが、目標達成へ金融政策をどう実行するかは、政治的なコントロールから自由であるべきだとの幅広いコンセンサスが世界的にできあがってきた」と書かれている。
さらにその注では「『目標の独立性』(goal independence)と『手段の独立性』(instrument independence)の違いは有用だ。中央銀行が自由に目標を設定できるという目標の独立性を民主主義社会で正当化することは困難だ。しかし、今日これから話すように、中央銀行が干渉を受けずに適切な金融政策を実施できるような手段の独立性は、経済安定のために極めて重要だ」と書かれている。
つまり、バーナンキの独立性とは手段の独立性だけを指している。この点、白川方明・日銀総裁のスピーチでは、単に独立性というだけで、あたかも目標の独立性まで含んでいるかのような話だったことと好対照だ。
ちなみに、日本では中央銀行の独立性については、目標と手段が混在して正しく理解されていない、とバーナンキ氏に説明したこともある。そのため、日銀でわざわざ「独立性」を講演したのだろう。
マスコミの報道では、政府がインフレ目標を日銀に要求することが、あたかも日銀の独立性の面で問題があるかのようであるが、目標の独立性と手段の独立性の違いを知らないか、意図的にごまかしていたのだ。
(嘉悦大学教授 高橋洋一)
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