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景気について語る人には4種類あり
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9276
2017年4月4日 塚崎公義 (久留米大学商学部教授) WEDGE Infinity
景気が良いか悪いかは、多くの人々にとって、生活や利害に関係する重大関心事項でしょう。従って、景気に関するニュースなどを目にすることも多いでしょう。その際に、気をつけて頂きたいのは、景気について語る人には4種類ある、ということです。それは、経済学者、マーケット・エコノミスト、景気の予想屋(筆者はここに属しています)、止まった時計です。紛らわしいのは、彼らが全員、自分たちのことを「エコノミスト」と呼んでいることです(笑)。今回は、これらの人々について御紹介しましょう。
■理論が現実より優先する経済学者
経済学理論は、実に精緻な理論です。仮定を置き、その仮定から論理的に導かれることを(時として高度な数学なども駆使しながら)紐解いていくわけです。従って、経済学を学ぶことは、学生にとって非常に意味があります。論理的に物を考える訓練になるからです。
しかし、残念なことに、大きな問題があります。仮定が現実離れしているのです。たとえば、「人々は、何でも知っていて、合理的に行動する。取引のコストも不要である」というわけです。
そこで、「世界中のリンゴの値段は同じである。すべての消費者がすべての店のリンゴの値段を知っていて、一番安い店まで買いに行くので、他の店も同じ値段まで値下げせざるを得ないから」という「一物一価の法則」といった物が教科書に載っているわけです。インターネットの時代なので、「人々がすべてのことを知っていて、取引コスト無しに一番安い物が買える」という仮定は、筆者が学生であった頃よりは、だいぶ現実に近くなって来ましたが、それでも無理があります。
また、主流派経済学は、「失業の問題など、気にする必要はない。失業者は、いつまでも失業しているより、時給の低い仕事に就いた方が合理的だと知っているので、遠からず就職するだろう」と考えるわけです。ここで無理があるのは、「人々が合理的に行動する」ということでしょう。人々が合理的に行動するのだったら、ダイエットも貯蓄も簡単にできるはずなのですが(笑)。
筆者が若かったころ、著名な経済学者と話す機会があり、「円高で輸出企業が潰れると、失業者が増えて大変ですね」と申し上げたところ、「気にすることはないよ。失業した人は、輸出企業以外の職場で働けば良いのだから」と言われました。「この方とは、一生、二度と景気の話をしないだろう」と思ったものです(笑)。
ケインズ派経済学は、失業が問題である事を認め、失業対策の公共投資が必要であると説いていますから、現実を見つめようと言う姿勢があるだけ、まだマシです(笑)。それでも、主流派の無理な仮定の多くを共有していることは問題ですし、「何をすれば、いつごろ景気が回復するのか」といったことを研究しているわけでもありません。
■金融政策と米国雇用統計に関心が偏っているマーケット・エコノミスト
マーケット・エコノミストは、株価等(為替、金利なども含む)を予想する目的で景気について語る人々です。彼らの特徴は2つあります。一つは、日米の金融政策と米国雇用統計に(強いて言えば日銀短観を含めて)、関心が偏っていることです。景気の予想屋が広く浅く経済関係の指標等に目配りしているのとは、大きく異なります。それは、彼らの顧客が市場関係者だからです。
市場で利益を稼ぐには、「他の市場参加者が注目している指標をしっかり分析し、予想し、市場の動きを先取りする」ことが必要です。たとえば米国の中央銀行が市場参加者の予想を裏切って利上げをしたら、ドル高になるでしょう。そんな時に、「自分は利上げを予想して、あらかじめドルを買っていたから儲かった。利上げを予想していたマーケット・エコノミストの◯◯さんには感謝している」という投資家がいれば、「次からは自分も◯◯さんの話を聞こう」と思ってもらえるでしょう。従って、マーケット・エコノミストは、必死で金融政策を予想しようとします。
しかし、市場関係者が米国の鉱工業生産や輸出や設備投資などに興味を持っていないため、そうした指標が発表されても株価などが動きません。それならば、マーケット・エコノミストにとって、そうした指標を予想することは無駄なことです。
景気の予想屋から見ると、米国の雇用統計も鉱工業生産も、同じくらい重要な経済指標なのですが、市場関係者が雇用統計しか見ないのは、「他の市場参加者が雇用統計しか見ていないから」なのです。昔、市場関係者に雇用統計が選ばれたのは偶然なのでしょうが、かつて偶然選ばれたために皆が注目するようになり、それゆえに皆が一層注目するようになる、ということで、長い間、注目を集め続けているわけです。
■マーケット・エコノミストは拙速に判断を変える
経済指標は振れるので、景気を見る上では、毎回の発表に一喜一憂しないことが重要です。何カ月分かの経済指標をじっくり眺めて、大きな景気の流れを読み取ることが重要です。そこで、予想屋は、じっくり腰を据えて景気を観察します。
一方で、マーケット・エコノミストは、判断の変更が実に素早いです。これがマーケット・エコノミストの特徴の二つ目です。経済指標が発表されるたびに、言うことが大きく変わったりします。そこで、我々は彼らのことを「雨が降れば洪水を、止めば水不足を心配する人々」と呼んだりします。
これは彼らの顧客が市場関係者だからであって、経済指標が発表されるたびに株価等が大きく変動するのに「一喜一憂せずに」などと言っていては、顧客が離れていってしまうからです。彼らには彼らの事情があるのです。
もっとも、彼らに「予想屋は慎重すぎる。堤防が決壊してから洪水が心配だと言われても間に合わない」と言われると腹が立ちますが(笑)。
我々予想屋が、どのように景気を予想しているのかは、次回記すことにしましょう。4つ目の「止まった時計」については、すでに『破滅シナリオ論者はなぜマスコミに出演しつづけられるのか』を記しましたので、併せて御覧いただければ幸いです。
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